ワクチンとは、ウイルスや細菌等、病原菌を処理して作った薬剤のことです。
ワクチン接種は、免疫の働きによって、体に侵入した病原菌の増殖を抑えます。その結果、病原菌に感染しても感染症の発病を抑えたり、症状を軽くする効果があります。
免疫とは、病原菌の毒性や増殖を抑える一連のシステムをいいます。病原菌が体に侵入した時に、血液中の白血球や抗体が、病原菌の増殖を抑えるよう働きます。
初めて病原菌に感染した時は、白血球や抗体の産生が間に合わず、従って症状が強くでてしまうことが多いのですが、2回目に同じ病原菌に感染したときに は、その病原菌に対する以前の記憶(メモリー)が残っていて、素早く免疫反応が起こります。そのため、体内で菌が増殖して症状が強く出る前に、病原菌の増 殖をすみやかに抑えることにより症状が出ることなく、軽快することになります。
「ワクチン」には大きくわけて3種類あります。それぞれの特徴をまとめると以下のようになります。
種類 | 特徴 |
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生ワクチン |
ウイルスや細菌等、病原菌の毒性や発病力を弱めてつくったワクチン製剤です。病原菌は弱ってはいますが生きているので、菌が体内で増殖します。その結果、接種後しばらくしてから発熱や発疹等、病気の症状が軽く出ることがあります。 生ワクチンによる免疫は、不活化ワクチンに比べて長い期間有効です。 次に違う種類のワクチンを接種する場合は、27日以上の間隔をあける必要があります。 <主な生ワクチン>はしか・風疹混合(MR)、はしか、風疹、おたふくかぜ、ポリオ、結核、水痘 等 |
不活化ワクチン |
ウイルスや細菌等、病原菌の毒性や発病力を無くして作ったワクチン製剤です。病原菌が体内で増殖することがありませんので、その病気の症状は出ません。 しかし1回の接種だけでは必要な免疫が得られないことが多く、複数回の接種が必要です。 また、不活化ワクチンによる免疫の持続時間は、生ワクチンよりも短いです。 次に違う種類のワクチンを接種する場合は、6日以上間隔をあける必要があります。 <主なワクチン>日本脳炎、ジフテリア・百日咳・破傷風の三種混合、インフルエンザ等 |
トキソイド |
細菌のもつ毒素を取り出し、毒性をなくして作ったワクチン製剤で、不活化ワクチンの一種です。 次に違う種類のワクチンを接種する場合、6日以上間隔をあける必要があります。 <主なワクチン>ジフテリア、破傷風 等 |
a.インフルエンザウイルスの種類
インフルエンザウイルスには、A型、B型、C型の3種類があります。A型インフルエンザウイルスは、さらに144種類に分類できると言われています(亜型といいます)。B型は2種類、C型は1種類です。
特徴は、ウイルスが次々に変化することです。
A型インフルエンザウイルスには144種類もの亜型がありますが、現代のヒトの間では、Aソ連型(A/H1N1亜型)、A香港型(A/H3N2亜型)の たった2種類しか流行していません。しかし、ウイルス表面の構造が毎年のように少しずつ次々と変化します。このわずかな変化は常に見られます。車のマイ ナーモデルチェンジのようなものです。
B型インフルエンザウイルスはあまり変異しません。初めて感染した時には強い症状が現われますが、2度目の感染からはそれほど悪化しません。
A型やB型に比べて症状・感染力ともに弱く、軽いかぜのような症状で済みます。
b.インフルエンザワクチンに含まれているもの
インフルエンザワクチンには、A型2種類およびB型1種類が含まれており、Aソ連型(A/H1N1亜型)、A香港型(A/H3N2亜型)、B型のいずれの型にも効果があるように作られています。
c.予防接種を受けてもインフルエンザにかかる理由
A型インフルエンザウイルスは常に変化しているため、インフルエンザワクチンの予想後に変化した場合、ワクチン接種を受けて獲得した免疫が十分にその効果 を発揮せず流行を起こすことになります。また、ワクチンの効果は、年齢、本人の体調等によって変わります。これらのことから予防接種を受けてもインフル エンザを発症する場合があり、100%予防できるわけではありません。
d.インフルエンザ株の予測方法
インフルエンザワクチン株は、世界保健機関(WHO)が、世界中からデータ集め、世界中のインフルエンザの専門家の意見を元に各シーズン毎の推奨株を決定 しています。日本ではそれらをもとに昨シーズンおよび世界各国でのインフルエンザの流行状況と、国民がもっている抗体の状況を考慮して毎年専門家で会議を します。その結果を元に厚生労働省によって決定されています。
e.毎年、予防接種が必要な理由
インフルエンザウイルスは部分的な変化を繰返しており、毎年流行する型が変わります。流行する型にあったワクチンを打たないと発症予防の効果はありません。また、インフルエンザワクチンの効果持続期間が約5ヵ月と短いため、毎年必要となります。
現在、使われているインフルエンザワクチンは不活化HAワクチンといって、インフルエンザウイルスとしての働きをなくし、ウイルスの粒子に含まれている一 部の成分(HA)を取り出して、免疫(インフルエンザウイルスに対する抵抗性)を高め、発熱等の副反応を出来るだけ低く抑えたワクチンです。
日本でのインフルエンザワクチンは、昭和23年に公布された予防接種法により、皮下注射で実施することが定められています。
表皮と真皮の間に薬液を注入します。ツベルクリン反応等の検査で用いられます。投与量は0.1~0.2mlと少量です。
皮膚の皮下組織に薬液を注入します。数mlまで投与出来ます。有効成分は比較的緩徐に吸収されます。インフルエンザ予防接種や糖尿病の治療に用いられるインスリン注射もこの方法です。
肩やお尻の筋肉に注射します。一般的に皮下注射より有効成分の吸収は早いといわれています。結核の抗生物質治療時等に使われます。注意点として筋肉の未 発達な小児への筋肉注射は大腿四頭筋拘縮症の原因のひとつといわれています。また筋肉内には神経や動脈が走っているので、投与の際には損傷を避ける必要が あります。一般的に注射したあとに揉んだほうがいいのは筋肉注射だけです。
薬液を直接、静脈内に投与します。容量の制限がなく効果の発現も一番早いです。100ml以上で水分・栄養素の投与等を目的とするものを一般に「輸液」と呼ばれています。