被扶養者の認定基準とは?
被保険者の収入によって生活している家族は被扶養者として健康保険の給付を受けることができます。 ただし健康保険の被扶養者になるには、家族なら誰でもなれるというものではなく、 家族の範囲、収入等の一定条件を満たし被扶養者として資格があると認定されることが必要です。
健康保険の扶養家族の定義は会社の扶養手当や税法上の扶養家族とは基準が全く異なります。 また認定基準にかかわらず、75歳以上の方は、後期高齢者医療制度の適用対象者となりますので、 被扶養者になることができません。
認定基準
被扶養者として認められる範囲
被扶養者になれる家族の範囲は、三親等内の親族と決められています。また、同一世帯か否かにより条件が異なります。
■同一世帯でなくてもよい人
配偶者(内縁を含む)・子・孫・兄姉弟妹・父母等直系尊属
■同一世帯であることが条件の人
上記以外の三親等内の親族(義父母等)、被保険者の内縁の配偶者の父母・連れ子
「同一世帯」とは単なる同居ではありません。
「同一世帯」とは被保険者と住居および生計(家計)を共同にすることであり、
同じ住所に住んでいても生計を分けている場合は、「別世帯」となります。
生計維持関係
主として、被保険者の収入によって家族(被扶養者)が生活していることが条件で、かつ年間収入が認定基準額未満であることが必要です。扶養認定にあたっては、生活状況、他の扶養義務者の有無等を申請書類等で確認したうえで、被保険者により生計を維持されているか否かの判断を行います。
【認定基準額】(年間)
同一世帯の場合 (同居) |
・(収入基準の)限度額未満であること ・被保険者の収入の1/2未満であること |
---|---|
同一世帯に属していない場合 (別居) |
・(収入基準の)限度額未満であること ・被保険者の収入の1/2未満であること ・被保険者からの仕送り額よりも少ないこと |
- ●同一世帯とは、住居と家計がともに同じことをいいます。
- ●仕送りの証明は、金融機関の通帳や振込依頼書となります。また被扶養者の検認で提出を求めることがありますので、必ず保管しておいてください。書類審査のため、手渡しによる金銭援助の場合は認定できません。
被扶養者の収入基準
対象者に収入がある場合は、次に揚げる【収入限度額】と【収入範囲】を参考に、収入要件を満たしているか判断します。
【収入限度額】
対象者 の年齢 |
収入限度額 | 給与収入がある場合 (参考目安として) |
各種給付金等を受給の場合 (参考目安として) |
---|---|---|---|
60歳未満 | 年額130万円 未満 |
月額108,334円未満 (年額130万円÷12ヵ月) |
日額3,612円未満 (年額130万円÷12ヵ月÷30日) |
60歳以上 および 障害年金 受給要件 該当者 |
年額180万円 未満 |
月額150,000円未満 (年額180万円÷12ヵ月) |
日額5,000円未満 (年額180万円÷12ヵ月÷30日) |
【収入の範囲】
- ●収入とは、原則、“継続的”に得られる恒常的なものすべてを言います。
- ●所得税法上とは異なります。次の表を参考にしてください。
- ●掲載している収入の種類はその一部です。これ以外にも収入に含めるものがあります。ご自身で判断せずに健保組合にご確認ください。
収入範囲 | 認否 | |||
---|---|---|---|---|
給与収入等 | パート・アルバイト等の収入 | 〇 | ||
年 金 ・ 恩 給 |
公的 | 老齢年金(国民・厚生)、遺族年金(国民・厚生)、障害年金(国民・厚生)、 年金基金(国民・厚生・企業)、農業者年金、共済年金、恩給 | 継続受給 | 〇 |
一時金 | × | |||
私的(※1) | 個人年金・互助年金・積立年金・確定拠出年金(DC) | 継続受給 | 〇 | |
一括受給 | × | |||
事業収入等(※2) | 自営業所得 | 〇 | ||
農業等 | 〇 | |||
不動産(賃貸に対する賃貸料等) | 〇 | |||
雇用保険 | 基本手当(失業保険) | 〇 | ||
高年齢求職者給付金 | 〇 | |||
特例一時金(短期雇用特例被保険者) | 〇 | |||
再就職手当 | × | |||
健康保険 | 傷病手当金 | 〇 | ||
出産手当金 | 〇 | |||
その他 | 株式 | (配当金) 継続受給 |
〇 | |
(売却金) 一括受給 |
× | |||
退職金 | × | |||
退職手当(雇用保険上の基本手当に相当するもの) | 〇 | |||
不動産譲渡収入 | × | |||
生命保険等の満期保険金 | × |
(※1)(受取額)-(払込額)で算出した金額で判断します。
(※2)(売上金額-直接的必要経費)で算出した金額で判断します。
【年収の壁 130万円への対応】
健康保険においては、一定の収入に満たない家族は被扶養者として健康保険に加入することで保険料の負担が発生しませんが、収入が増加した場合、扶養から外れて勤務先で健康保険に加入するか、国民健康保険に加入するかにより、社会保険料の負担が発生することとなります。
このため、保険料負担に伴う手取り収入の減少を意識して、一定の収入を超えないように就業調整を行うことが、いわゆる「年収の壁」です。これに当たって、社会全体で労働力を確保するとともに、労働者自身も希望どおり働くことのできる、環境づくりが重要です。こうした環境づくりを後押しするため、一時的な対応策として「年収の壁・支援強化パッケージ」が国より示されました(令和5年9月29日厚労省通知保保発0929第7号)。
健康保険組合における取扱いをご案内します。
パート・アルバイトで働く方が社会保険適用とならない場合で、人手不足による労働時間延長等に伴う一時的な収入変動により収入限度額を超過した場合でも、事業主がその旨を証明することで引き続き扶養に入り続けることが可能です。
- ●「一時的な収入変動」と認められる額に、新たな上限の設定はありません。
- ●通常の収入限度額:60歳未満の方は年間130万円未満、60歳以上または障害年金受給の方は年間180万円未満。
- ●一時的な施策であり、扶養認定基準が変更になったわけではありません。
- ●令和5年10月20日付以降の扶養追加、および令和6年度の「被扶養者資格調査」より適用を開始します。
- ●同一の対象者につき、連続2回(連続2年)までを上限に適用可能です。
- ●今回の特例措置は令和7年の年金制度改正までの措置となります。
●人手不足による労働時間延長等に伴う一時的な収入変動により、収入限度額を超過した方
フリーランスや自営業者等で、特定の事業主との雇用関係にない場合は対象外です。
●雇用契約上では、収入見込みが扶養基準額内に収まる方
基本給が上がった場合など、恒久的に収入限度額を超過する場合は特例措置の対象外です。
必要により 事業主の証明書 の提出を求めますが、原則として、下記に該当する際に証明を求めることとなります。
(1) | 扶養追加時に、収入証明書の直近3か月の実績が基準額超過している、または所得証明書の年収額が収入限度額を超過しているとき(現在の職場と同じ場合) |
(2) | 令和6年度、令和7年度「被扶養者資格調査」時に、前年の年間収入が限度額を超過している場合 ※雇用契約内容が分かる、雇用契約書のコピー等の提出も必要です。 |
- ●事業主の証明書を提出すれば、必ず扶養が継続されるというものではありませんのでご注意ください。
雇用契約内容や、その他の扶養認定基準を満たしていない場合は扶養削除となります。 - ●特例措置の対象外となる方は、従来通り事象発生時に速やかに、被扶養者資格削除の申し出が必要です。
優先扶養義務
被保険者以外の優先扶養義務者が他にいないこと、 もしくは被保険者以外の優先扶養義務者がいる場合は、優先扶養義務者に扶養能力がなく被保険者が扶養せざるを得ない理由が必要です。
優先扶養義者の例
- 母の場合は、その配偶者である「父」
- 兄弟姉妹の場合は、親である「両親」
- 祖父母の場合は、子である「両親」
夫婦共働きの場合
1) | 年間収入(過去、現時点、将来の収入等から今後1年間の収入を見込んだもの)が多いほうの被扶養者とします。 |
2) | 夫婦双方の年間収入の差額が年間収入の多い方の1割以内である場合、主として生計を維持する者の被扶養者とします。 |
複数の子どもがいる場合、父母で分けて扶養することは健康保険法で認められていないため、年間収入の多い方の親が子ども全員を扶養することになります。
被扶養者の国内居住要件
-
●日本国内に住所を有する者
原則として住民票の有無(住民基本台帳に住民登録されているか)によって判断されます。 -
●日本国内に住所を有しないが日本国内に生活の基礎があると認められる者
これまで日本で生活しており、渡航目的に照らし、今後も再び日本で生活する可能性が高いと認められ、かつ渡航目的が就労ではない者の場合、日本に住所(住民票)がなくても例外として国内居住要件を満たしていると判断されます。
例外として認められる事由 | 確認書類の例 |
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①外国において留学をする学生 | ビザ、学生証、在学証明書、入学証明書等の写し |
②外国に赴任する被保険者に同行する者 (原則、配偶者・子のみ) |
ビザ、海外赴任辞令、海外の公的機関が発行する居住証明書等の写し |
③就労以外の目的で一時的に海外に渡航する者 (観光、保養またはボランティア活動等) |
ビザ、ボランティア派遣機関の証明、ボランティアの参加同意書等の写し |
④被保険者の海外赴任中に出産・婚姻等で身分関係が生じた者であって②と同等と認められる者 | 出生や婚姻等を証明する書類等の写し |
⑤ ①から④までに掲げるもののほか、渡航目的その他の事情を考慮して日本国内に生活の基礎があると認められる者 | ※個別に判断 |
国内居住要件に関するQ&A 厚生労働省R5.6.19通知資料(別紙)≫
被扶養者認定の手続きおよび認定時期
届出は事情が発生してから5日以内となっていますので、早めに提出してください。やむを得ない理由で遅れた場合でも1ヵ月以内に提出してください。それ以降の提出の場合は、原則として健康保険組合が受付した日で認定となります。
被扶養者認定における決定通知書について
被扶養者認定後の検認
被扶養者認定後も定期的に被扶養者資格調査を実施しています。
生活状況の変化によって被扶養者としての認定基準を満たさなくなることがありますので 定期的な被扶養者資格調査にご協力お願いいたします。
また虚偽の申請により不正に被扶養者資格が認められ保険給付等を受けた場合は、 資格を取得した日まで遡り被保険者に全額返金の請求をすることになります。