検査項目

血圧
血圧とは 血圧は、心臓のポンプ力・血管の状態・血管内の成分量によって決まります。これらを調節するのは、自律神経のはたらきや、血管を収縮或いは拡張させる体内成分の作用によります。
また血圧は、運動や食事によって影響を受け、測定する時間によっても変動します。
さらに血圧は年齢差や男女差を認めます。
そのため測定時間や、食事、運動、年齢や性別等の影響を考慮して判断する必要があります。
高血圧となる原因 血圧は常に変動しますが、病気としての高血圧は、原因別に本態性高血圧(原因不明の高血圧・白衣高血圧含む)と二次性高血圧(腎臓病や甲状腺疾患等、何かの病気が原因で起こる高血圧)に区別されます。
ほとんどの高血圧は本態性高血圧、つまり原因不明の高血圧です。血圧値を良好に保つことで心臓や脳、腎臓等の障害を予防することができます。従って治療は薬あるいは軽度の高血圧であれば生活習慣の改善等で、血圧の値を良好にコントロールすることが必要です。
一方高血圧の原因となる病気がある場合を二次性高血圧といいます。治療は原因となる病気の治療が必要です。原因となり得る病気はいくつかあり、その病気について下記に記載します。
<二次性高血圧の原因となり得る病気>
腎性高血圧、薬剤性高血圧、糖尿病性腎症、慢性腎盂腎炎、甲状腺機能亢進症 等
高血圧が身体に及ぼす影響 高血圧は動脈硬化の原因になります。動脈硬化は全身に起こり得ます。特に腎臓、脳、心臓等、身体にとって重要な働きをする内臓の血管に動脈硬化が起こると、血流が滞り酸素不足になったり、血管が破裂あるいは詰まったりして、大きな病気や障害を引き起こします。
高度高血圧 180/110 mmHg以上  (注)変動要因の影響が大きいため高めに設定
低血圧となる原因 低血圧は、本態性低血圧(原因不明)と二次性低血圧(原因となる病気が明らか)に区別されます。
二次性の場合は原因となる病気の治療が基本になります。
例えば起立性低血圧とは、起き上がる等、身体の位置を急に変えた場合、立ちくらみ症状が現われます。これは原因により自律神経障害によるものと、心臓のポンプ力が低下して心臓から送り出す血液量が少なくなる場合に分けられます。 <起立性低血圧の原因となり得る病気>
1.神経系の病気
脳梗塞・パーキンソン病 等
2.心血管疾患
3.糖尿病性神経障害
4.薬の作用によるもの
血圧を下げる薬(α遮断薬、中枢作動薬、利尿剤)向精神薬、抗うつ薬、
狭心症の薬(亜硝酸薬)、睡眠薬、気管支喘息や胃潰瘍の薬(抗コリン薬)等
低血圧が身体へ及ぼす影響 症状がないあるいは軽い場合は、測定結果が低血圧(上の血圧が100以下)であっても特に治療の必要はないと考えられています。心理的な影響も大きく、まずは食事、運動、睡眠、便秘、二日酔いや暑さによる脱水等を考えてそれらを調整します。
ただし、意識がもうろうとする、意識を失う等、症状の重いものは、すぐに病院へ運び救急対応が必要になります。
高度低血圧 70/- mmHg以下
心電図
心電図とは 心電図は、心臓の動きによって生じる電気的変動を、体表面にとりつけた電流計で記録したものです。心臓の活動リズムや活動の大きさのほか、心臓の働きの程度や心筋の状態がわかります。
異常となる原因 生まれつき心臓の壁に穴があいていたり、心臓の弁に異常のある場合があります。その他冠状動脈(心臓自体に栄養を送る血管)が狭くなったり詰まって、心臓の働きが低下したり、心臓の動きを調節する「刺激伝達系」の障害によって心臓の活動リズムが乱れる事があります。
これらの異常を見つけ出し、その原因や程度を判断するために必須の検査です。
発見される疾患 房室中隔欠損症、房室弁閉鎖不全症、心筋梗塞、狭心症、心房細動 等
尿検査
尿検査とは

尿の中に含まれる物質をしらべて腎臓や身体の状態の判断に利用します。一般的には試験紙を用いて検査します。

異常となる原因 <糖>
正常では尿に糖が含まれる事はありません。しかし、血糖値が高くなり一定のレベルを超えると尿に糖が出てきます。なお、血糖値が高くなくても尿に糖の出る事があります。
<タンパク>
正常な場合、ごく微量のタンパクを除いて尿に出ることはありません。一定以上のタンパクが尿中に含まれる場合は腎臓やその他に異常のある可能性があります。なお、立位だけで、また、激しい運動後や発熱時に陽性になる場合があります。
発見される疾患 <糖>糖尿病、腎性尿糖等
<タンパク>腎炎、多発性骨髄腫、起立性タンパク尿 等
赤血球数
赤血球数とは 赤血球は骨髄で作られてから血液中に送り出されて全身を循環し、体のすみずみへ酸素を運搬しています。
赤血球数は血液1㎟あたり、男性は500±60万、女性が460±50万です。
高値が身体に及ぼす影響 赤血球数が多い場合を赤血球増多症(多血症)といい、血液の粘調度が増加し、狭心症・脳梗塞・血栓症等の危険性を生じます。
中等度増加 700万以上
低値が身体に及ぼす影響 赤血球数が少ないとき、貧血といいます。貧血になると動悸・息切れ・脈が早くなる・顔面が青白い・立っているとめまいを起こす・まぶたの裏側の粘膜が白っぽい・疲労感・爪が割れやすい等の症状がみられます。
貧血の起こる原因としては、骨髄の生産が悪い・赤血球の破壊が速い・出血等があります。
中等度低下 300万以下
血色素(ヘモグロビン)濃度
ヘモグロビン濃度とは ヘモグロビンは、赤血球に含まれ呼吸によって得た酸素と結合し、酸素を全身に運ぶ役割をしています。
ヘモグロビン濃度は血液100ml(1dl)に含まれるヘモグロビンの重さです。 【基準値】男性は13.5~17.5(g/dl)女性は11.5~15.(g/dl)です。
高値が身体に及ぼす影響 血液中のヘモグロビンが多い場合を赤血球増多症(多血症)といい、頭痛・めまい・ふらつき・倦怠感という症状が現れるだけでなく、血液の粘調度が増加し、ネバネバした血液になり、狭心症・脳梗塞・血栓症の危険も高くなります。
中等度増加 18.0 g/dl以上
低値が身体に及ぼす影響 血液中のヘモグロビンが減少することを貧血といいます。
酸素を運ぶヘモグロビン量が減少する結果、血液の酸素運搬効率が低下し、組織の酸素欠乏状態が生じます。症状としては、疲れやすい・めまい・頭痛・動悸・頻脈・息切れ等です。
数値的にみると、一般に男性では13.5g/dl未満 女性では11.5g/dl未満で貧血と考えられます。
中等度低下 8.0 g/dl以下
ヘマトクリット値
ヘマトクリット値とは ヘマトクリット値は、血液における赤血球の占める体積を指します。
【基準値】男性は39.8~51.8% 女性は33.4~44.9% です。
高値が身体に及ぼす影響 赤血球増多症(多血症)でヘマトクリットが高くなります。頭痛・めまい・ふらつき・倦怠感という症状が現れるだけでなく、血液の粘調度が増加し、ネバネバした血液になり、狭心症・脳梗塞・血栓症の危険も高くなります。   
中等度増加 (男性)55.0%以上 (女性)50.0%以上   
低値が身体に及ぼす影響 貧血でヘマトクリットが低くなります。
中等度低下 30.0%以下
血小板
血小板とは 血小板は骨髄で造られ、血液中に流出して、止血に大きな役割を果たします。また血小板は毛細血管の補強作用にも働きます。
低値が身体に及ぼす影響 血小板が少ないと、出血しやすい状態(出血傾向)に陥ります。
血小板が減る病気としては
急性白血病、再生不良性貧血、特発性血小板減少性紫斑病等の血液疾患のほか、肝硬変や膠原病等があります。
軽・中等度低下 5~15万
高度低下 2万以下
高値が身体に及ぼす影響 血小板が多くなりすぎると、血栓症になりやすくなります。
血小板増加は、慢性骨髄性白血病等の血液疾患のほか、慢性疾患等でみられます。
軽・中等度増加 40~80万
高度増加 80万以上
AST(エーエスティ)
ASTとは AST(GOTとも表現する)は、主に肝臓や筋肉に存在します。
これら臓器を作っている細胞が傷ついて壊れると、ASTが血液中に流れ出してその量が増えます。
ASTは、心臓、腎臓にも多く存在します。
高値となる原因 ASTが増加する場合、肝臓、筋肉あるいは赤血球が傷ついて壊れていることが推測されます。血液中に流れ出る量が多ければ多いほど壊れ方がひどいということになります。
原因と考えられる病気は、肝炎(ウィルスや薬剤、アルコール等による)、心筋梗塞、筋ジストロフィー、溶血性貧血等です。
肝臓に問題がある場合、
ASTの数値>ALTの数値となる場合はアルコールが原因の場合が多く、
ASTとALTの数値が上記と逆の場合は、脂肪肝が原因の場合が多いです。
注)採血時の血液の取扱い方により、赤血球が壊れると、中にあるASTが血液中に流れ出し、検査数値が上がる場合があります。
中等度増加 500 単位以上
ALT(エーエルティ)
ALTとは ALT(GPTとも表現する)は、主に肝臓に存在し、肝細胞が障害を受けて壊れたとき、血液中に流れ出る物質です。
高値となる原因 肝細胞の傷(障害)の程度を反映します。
中等度増加 500 単位以上
γ-GTP(ガンマ-ジーティーピー)
γ-GTPとは γ-GTPは、肝臓で作られて胆のうへ流れる物質で、肝臓や胆のう等の病気が原因で血液中の量が増加します。
肝臓以外には膵臓や小腸にも存在します。
高値となる原因 数値が上昇する原因は、お酒の飲みすぎ、お薬の影響、その他何らかの影響により胆汁の流れが滞っている或いは胆汁の流れが止まっている等が考えられます。
注)お酒を飲みすぎてもγ-GTPが上昇しない場合があります。
注)女性や子どもさんは基準の値が低めになります。
基準値(健康な人の平均的なγ-GTP値):男性10~50 単位 女性9~32 単位
高度増加 500単位以上
総コレステロール
総コレステロールとは 血液中にある脂質の総称で、コレステロール、中性脂肪、遊離脂肪酸、リン脂質が含まれます。コレステロールは、細胞膜、胆汁酸、ステロイドホルモンの材料となり、中性脂肪・遊離脂肪酸はエネルギー源に、リン脂質は細胞膜を構成する成分になります。このように、総コレステロールは体にとってなくてはならないもので、多すぎず少なすぎず程よい値を保つことが重要です。
異常となる原因 値が高い場合は、その原因や治療を考えるために総コレステロールの内訳(中性脂肪、HDLコレステロール、LDLコレステロール等)をしらべることが必要です。遺伝的なものか、あるいは何らかの病気や肥満等が原因となっているのかを明らかにして、治療の方法を選びます。
中等度増加 300~400㎎/dl
高度増加 400㎎/dl以上
中等度低下 40~80㎎/dl
高度低下 40㎎/dl以下
中性脂肪
中性脂肪とは 食事から肝臓に取り込まれ、肝臓から血液中に放出されて全身に運ばれ、エネルギーとして使用されます。血液中のほか皮下脂肪や内臓脂肪に存在し、エネルギーを効率よく蓄える働きをしています。食物の糖分はすべて肝臓でブドウ糖に変えられ、エネルギー源として利用されますが、余ったブドウ糖は中性脂肪として蓄えられます。
高値となる原因 脂質や糖質の多い食事やアルコールをとると、中性脂肪が増加します。また、肥満度と比例して値が高くなる傾向があります。
高値が身体に及ぼす影響 中性脂肪が高くなると、これを分解するためにリパーゼ(消化酵素)が大量に分泌されます。この結果、リパーゼによって膵炎を起こす可能性があります。特に、中性脂肪が1,000㎎/dlを越える場合急性膵炎の危険性が高くなります。また、中性脂肪が多い場合、HDL(善玉)コレステロールが減ってLDL(悪玉)コレステロールが増えやすくなり、動脈硬化の原因となります。
高度増加 1,000㎎/dl以上
HDLコレステロール(エイチ・ディー・エル・コレステロール)
HDLコレステロールとは HDLというリポ蛋白の粒子に含まれているコレステロールです。全身組織の細胞膜から余ったコレステロールを抜き取る働きをしています。動脈硬化を防止する働きがありますので、善玉コレステロールとも呼ばれています。
低値となる原因 中性脂肪の高い人に見られることが多く、原因としては肝硬変等の病気の他に肥満、運動不足、喫煙等があります。治療としては、HDLコレステロールを増加させる薬剤は今のところ存在しないため、HDLコレステロールを低下させる原因を取り除くことが重要です。
高度低下 20㎎/dl以下
LDLコレステロール(エル・ディー・エル・コレステロール)
LDLコレステロールとは LDLというリポ蛋白粒子に含まれているコレステロールです。おもな役割は肝臓や腸管から全身へコレステロールを運ぶことです。
高値が身体に及ぼす影響 余分なLDLコレステロールは血管壁にたまり、活性酸素(酸素が変化してできたもので細胞を酸化させる原因の一つ)によって酸化LDLコレステロールになります。これを排除するために白血球の一種であるマクロファージが集まり、その働きを終えると死骸となって血管壁に付着します。これがきっかけとなって、動脈硬化を引き起こし、更に血管が詰まり、血液の流れを悪くしてしまいます。予防するためには、脂質や糖質の多い食事やアルコールを控える、食物繊維を多く摂る、肥満を予防する等が必要です。
中等度増加 190~300㎎/dl
高度増加 300㎎/dl以上
HbA1c(ヘモグロビン・エー・ワン・シー)
HbA1c とは 血糖値を知る方法として、その時々の血糖値を測る以外に過去1~2ヵ月間の平均血糖値を表すのがHbA1cです。
ブドウ糖は、ヘモグロビン(Hb)に結合し、一度結合するとしばらく持続します。この性質を利用して、ブドウ糖と結びついたヘモグロビン(HbA1c)を測定すると検査前1~2ヵ月間の血糖値を知ることができます。
高値となる原因 HbA1cが高くなる原因は、血管内のブドウ糖が多いことです。健康な人の場合、食事として体に入った糖は血糖値を下げるインスリンというホルモンの作用により、肝臓、筋肉等へブドウ糖を入れ、一定の範囲に保たれます。
インスリンの分泌量が低下したり、分泌されるタイミングが遅くなったり、あるいはインスリンの働き方が悪くなると血糖値が異常に高くなり糖尿病になります。糖尿病は、HbA1cの高くなる代表的な病気です。
高値が身体に及ぼす影響 HbA1cが高いのは、血糖の高値が持続していること、そして血糖の平均値が高いことを示します。この結果、血管を傷害し、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経症、動脈硬化等を引き起こします。
尿酸
尿酸とは 私たちの体をつくる細胞の核の主成分のひとつに核酸という物質があります。最終的に、核酸は尿酸となって主に腎臓から排泄されます。
尿酸は、水に溶けにくいのが特徴です。
1日に産生される尿酸の量と排泄される尿酸の量は、ほぼ同量で、体内の尿酸は一定に保たれています。
高値となる原因 血中の尿酸が高くなる原因は、体内で尿酸をつくりすぎるか、腎臓からの排泄が不十分か、あるいは両方が混在するかです。
つくりすぎる原因としては、病気で細胞が次々に壊されていることや過激な運動や高プリン食のとり過ぎ等が考えられます。排泄が不十分になる原因としては、腎臓が十分に働かない腎不全等が考えられます。
高値が身体に及ぼす影響 尿酸値が高い状態が続くと (1)痛風発作が起こる (2)腎臓の働きが低下する (3)動脈硬化の原因になる 等と言われています。
中等度増加 7~9㎎/dl
高度増加 9㎎/dl以上
クレアチニン
クレアチニンとは クレアチニンは、古くなった筋肉が壊れた時にできる不要な物質で、腎臓から排泄されます。腎臓は、血液を濾過し、クレアチニン等体に不必要なものを尿に排泄します。
高値となる原因 クレアチニン値が高くなる原因は、腎臓の働きが悪いことです。腎臓の働きが悪くなると、クレアチニンは濾過されずに体内にたまってしまいます。クレアチニン値が高い状態で持続していることは、つまり、腎臓が十分に働かない腎不全の状態です。腎不全になると、老廃物が血液から排泄できなくなり、体内に蓄積します。すると、尿毒症といって、全身倦怠感や食欲不振、重症になると錯乱、痙攣、昏睡、最悪の場合には死にいたることもあります。尿毒症の治療には、人工透析が必要になります。
腎臓の濾過機能が本来の50%まで落ちるとクレアチニン値は上昇し始めます。クレアチニン値が正常上限の1.0から1.5~2.0 に上がっている時には、至急に受診することが必要です。
中等度増加 2.0㎎/dl以上
眼底検査
眼底検査とは 瞳孔(黒目の中央部分)を通して目の奥にある網膜(カメラでいうフィルムの役割を果たしている部分)をみる検査です。網膜上にある血管の状態をみたり、網膜自体の異常をしらべます。からだの血管で、直接その状態を確認できるのは網膜上の血管だけです。
異常となる原因 動脈硬化が進行すると、血管が細くまた硬くなり、網膜に出血する場合もあります。
高度の近視や外傷によって眼球に高い圧力がかかる場合、網膜に異常のおこる事があります。この結果、視力に障害がおこります。これらは、眼底検査で確認することができます。
また、緑内障は、視神経と視野に特有の変化を認める病気で、眼圧を下げる事により障害の進行をおさえる事ができます。
発見される疾患 網膜出血、網膜はく離、緑内障、糖尿病性網膜症 等

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