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広報誌「かけはし」

健康セミナー(オンデマンド配信)

5月13日~8月13日、健康セミナーについてオンデマンドにて講演動画を配信。筑波大学 人間系 教授 山田やまだ みのる 氏が「今日から始める転倒予防~敵(転倒)を知ることが対策の第一歩~」をテーマに講演されました。

今日から始める転倒予防
~敵(転倒)を知ることが対策の第一歩~

山田 実 氏

意外と知られていない転倒の実態

転倒予防は、高齢者に関わる仕事をされている方にとって馴染みのあるテーマだと思います。転倒予防に関する研究は盛んに行われており、1960年代頃から数多くの研究成果が報告されてきました。しかし、驚くことに、高齢者の転倒発生割合は1960年代と現在とで大きく変わっていません。なぜでしょうか。その理由を紐解く鍵の一つは、転倒の実態にあります。これまで多くの研究が行われてきた一方で、高齢者が「いつ、どこで、どのように転倒したのか」といった転倒発生状況を詳細に分析した研究は決して多くありません。言い換えれば、私たちは転倒という現象を十分に理解しないまま、その予防策を講じてきた可能性があります。ここでは、5W1Hの視点から転倒を再考し、効果的な転倒予防について考えていきます。

転倒の5W1H

では、高齢者は一体いつ、どこで、どのように転倒しているのでしょうか。まず、「いつ転倒しているのか」です。1年の中では5月、10月、冬季に多く、1日の中では午前10時から正午にかけて転倒が多く発生しています。次に、「どこで転倒しているのか」です。転倒の約半数は自宅内で発生しており、中でも居間での転倒が最も多くなっています。では、「どのように転倒しているのか」はどうでしょうか。転倒のきっかけとして最も多いのはつまづきであり、続いてバランスの崩れ、滑りが挙げられます。また、転倒方向では前方への転倒が最も多く、後方と側方への転倒はほぼ同程度となっています。最後に、「転倒の結果どうなるのか」です。転倒の約10%で骨折が発生しており、この割合は欧米諸国で報告されている約5%よりも高い値となっています。

似て非なる「つまづき」と「すべり」

「つまづいたり、すべったりして転倒する」という表現はよく使われます。しかし、両者の発生メカニズムは大きく異なります。歩行中には、進行方向に対して前方に位置する足と後方に位置する足があります。つまづきは主として後方の足に、滑りは主として前方の足に原因があります。また、これらの転倒のきっかけは歩行速度とも関連しており、歩行速度が速い人ほど滑りによる転倒が発生しやすいことが報告されています。履物との関連も重要です。スリッパのように踵を固定しない履物は、つまづきを誘発しやす特徴があります。このように、「転倒を予防する」という視点だけではなく、「どのような転倒を予防するのか」という視点を持つことが大切です。

どうする転倒対策

転倒予防を進める上では、具体的な対策を講じる前に、まず本人に「転倒予防に取り組む必要がある」という認識を持ってもらうことが重要です。Geri10-FCT(Geriatric 10-Second Functional Capacity Test)は、自宅で一人でも短時間に実施できる簡便な機能評価法です。立ち上がりテストと片脚立位テストを組み合わせた検査であり、自身の身体機能の状態を把握する上で有用です。このような評価を通じて現在の身体機能を客観的に知ることは、転倒予防への関心や行動変容を促すきっかけとなります。転倒予防のための運動としては、筋力トレーニングのみならず、バランス運動、敏捷性トレーニング、さらには二重課題運動などを組み合わせた包括的なプログラムが効果的です。