安心安全な医療へ 「健康みらいトーク」開催 ―市民ら190人が参加―
健保連近畿地区連合会(滋賀県・京都府・大阪府・兵庫県・奈良県・和歌山県)は11月15日、大阪市北区のホテルエルセラーン大阪で、「健康みらいトーク」を開催した。この催しは、安心安全な医療を守るため、患者一人ひとりができることを考えるフォーラムを、近畿地区共同事業として開催したもの。この日は、市民ら190人が参加。認定NPO法人 ささえあい医療人権センターCOML(コムル)理事長 山口育子氏の講演や、国会議員を交えた対談が行われた。会場を訪れた参加者に、患者として主体的に医療に参画するために、どのように行動し自立するのかを考えるヒントを提供することを目指した。

「健康みらいトーク」は、医療費、医療保険、健康など、身近で切実な問題を、広く一般の方がたにあらためて考えてもらおうというもの。今回のテーマは「安心安全な医療へ」である。
このようなイベントは、これまで健保連大阪連合会主催の一般向けイベントとして計4回開催してきたが、近畿地区連合会としては初めての試みとなる。この日は、健保組合関係者はもとより、近畿各府県から市民ら190人が参加した。
当日は、健保連大阪連合会の久保俊裕会長のあいさつで開会した。
イベント前半は、認定NPO法人 ささえあい医療人権センターCOMLの山口育子理事長による講演「賢い患者になろう」が行われ、後半では、コーディネーターに梅村聡氏(衆議院議員 日本維新の会・元厚生労働政務官・医師)を迎え、山口育子氏、とかしきなおみ氏(元衆議院議員 自由民主党・元厚生労働副大臣・薬剤師)による対談が行われた。
そして、健保連本部の米川孝副会長のあいさつにより、今回のイベントは幕を閉じた。
久保俊裕大阪連合会会長あいさつ

久保俊裕
大阪連合会会長
我が国は少子高齢化が進み、あらゆる面において、大変厳しい時代を迎えようとしている。そのような中、健康保険制度も例外ではない。高齢者人口がピークとなる2040年には、医療費が73兆円に達すると言われている。
少子化が進み、支え手である現役世代が減少している今、健康保険制度は危機的状況で、信号で例えると「きいろ」の状態である。健保連では、この信号を安全な「みどり」に変えることにより、万人に公平な国民皆保険制度を将来にわたって持続させていくため、国民の皆様に3つのお願いをした。
どうぞ皆様ご自身、そして皆様の周りの方々に、健康の大切さ、元気の輪を広げていただき、今の国民皆保険制度を守っていくことへの理解を少しでも深めていただければ幸いである。
(注:「3つのお願い」については、9ページをご参照ください)
山口育子理事長講演「賢い患者になろう」

山口育子氏
本日お越しの皆様は、おそらく患者・家族のお立場で来られた方が大半かと思う。私もそういう立場でこれまで活動してきた。特に「賢い患者になりましょう」ということが私たちの合言葉でもある。なぜ、賢い患者にならないといけないのか、それはどういうことなのか、といったことを、皆様と一緒に考えたいと思う。
私たちは1990年から、患者と医療者の良好なコミュニケーションを促進する活動を行ってきたので、今年で35周年を迎えた。35年前といえば、医薬分業が1割程度であり、医療機関から直接薬が出される時代であり、患者に対して処方した薬について詳しい説明がないままだったことも多々あった。専門性の高さから、すべて医師にまかせるしかないという受け身に甘んじていた患者が大半を占めていた。当時は患者にとって情報が閉ざされた時代であったが、現在は、患者参加型の医療へ変化している。
「賢い患者」の定義として、
①自分の病気は自分のものという自覚を持つこと
②医療の説明を理解する努力をすること
③自分の選択を言語化して伝えること
④医療者とコミュニケーションを取りながら、自分の役割を果たすこと
⑤一人で悩まないこと
――の5つが考えられる。
また、「医者にかかる10箇条」として、
①伝えたいことはメモして準備する
②対話はあいさつから
③良い関係づくりは患者にも責任がある
④自覚症状と病歴は重要な情報
⑤これからの見通しを聞く
⑥その後の変化も伝える
⑦大事なことはメモを取り確認する
⑧納得できないときは質問する
⑨医療の不確実性と限界を理解する
⑩治療方法を決めるのは患者自身であること
――が挙げられる。
我が国の高額療養費制度は、私も身をもって実感しているが、非常にありがたいものである。しかし、現在は上限額を引き上げるという議論が起こっている。患者自身は自分の負担が増えることに危機感を抱いているが、このままでは制度を支える財源が持たないことも事実である。このありがたい制度を今後も維持していくため、患者が自身の医療費の実態を自覚するためにも、賢い患者になる勉強をしていただければありがたい。
対談 「自分で健康を守るためには! 3つのお願い」
コーディネーター 梅村聡氏
対談者 山口育子氏、とかしきなおみ氏

梅村聡氏
梅村氏
健康を守る意識をもって、ご自身の病気の予防や健診の受診など、普段から心掛けていることは。
とかしき氏
日本人は健診への意識が低い傾向がある。過去、自分も健診を疎かにしていた時期があったが、成り行きで受診した健診で病気が発覚した。それからは真面目に受診し、健康管理も頑張っている。体のダメージを考えると早めのフォローアップは非常に重要。
山口氏
私も健診で早期に病気を発見できた。入院を経験したが、早期の治療だったため体への負担も少なく、術後の経過も短期間で元の生活に戻ることができた。早期発見・早期治療は、医療費も低く抑えることができるし、体の負担も少なく済むことを実感した。

とかしきなおみ氏
梅村氏
やはり早期発見・早期治療が保険財政の面からみても、国民全員に健診を受けていただくことが大事だとわかる。そこで、現在の医療費の仕組みや国民皆保険制度の厳しい状況について、今後どのような対応が必要になってくるのか。
とかしき氏
制度自体は、すでに皆様からの保険料では賄えない状況にある。そんななか、保険料を下げるという議論が起きているが、保険料を下げても足りないところは税金で賄うことになるため、結局は皆様の負担は変わらない。いかに負担と給付のバランスを考え、患者の意向を反映できる制度設計を行うかが重要である。
山口氏
高齢者のなかでも働く意欲のある方は大勢いる。そのような方には働いてもらい、保険料をお支払いいただく。また、保険適用に該当する高額薬剤が増加していることも想定外だったため、その適用をどうするのかを含めて、時代の変化に対応した制度を考えていかなければならない。

山口育子氏
梅村氏
保険でカバーする範囲の議論は重要である。また、高齢者の定義をどうするのかも今後のテーマだと思う。さて最近、セルフメディケーションやOTC医薬品という言葉を耳にするが、どのようなものなのか説明していただけるか。
とかしき氏
薬局で購入できる薬をOTC医薬品という。セルフメディケーションとは自分で判断して自分でケアすることだが、すべてを自分だけで決めないでほしい。大切なのは、かかりつけ医などからのアドバイスを受けながら取り組むことである。
梅村氏
これからもしっかりと健診を受けて、国民皆保険制度を守れるよう、一人ひとりが頑張っていきたいということを私もお誓い申し上げ、本日の対談を終わらせていただく。長時間にわたり、どうもありがとうございました。
米川孝健保連副会長 あいさつ

米川孝健保連副会長
本日のテーマに挙がった「3つのお願い」に加えて、健保連では「4つの約束・5つのチャレンジ」を作成している。これは、個々の健保組合が加入者に対し、より健康になっていただけるサービスを提供していく、また、医療DXの新しい時代に向けて、さらに前を向いた対応ができるかを考えていくという宣言でもある。
国民全体で、現在の社会保障制度をより良くしていこうという形の活動として、近畿地区において本日の健康みらいトークを開催した。今後も全国でこのようなイベントを開催し、ご参加いただいた皆様には、将来に向けて、日本の国民皆保険制度をどのような形で未来へバトンタッチしていくのかを話題にしていただければと思う。


