令和7年度 健康保険組合全国大会を開催
皆保険存続の危機!持続可能な制度のために今こそ抜本改革を
―現役世代を守れ、2025年問題は終わっていない―

全国大会次第
- 開会の辞
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(大会議長)
静岡県東部機械工業健康保険組合
原田幸男常務理事
- 会長基調演説
- 健保連 宮永俊一会長
- 決議
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(企画委員会委員)
山形銀行健康保険組合
保科敦子常務理事
- 厚生労働大臣への決議の手交
- 厚生労働大臣あいさつ
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上野賢一郎厚生労働大臣
(代読:巽慎一厚生労働省大臣官房審議官)
- 特別企画
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株式会社日本総合研究所
シニアフェロー 翁 百合氏
健保連 宮永俊一会長
日本経済新聞社
編集委員兼論説委員 柳瀬和央氏
- 閉会の辞
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(企画委員会委員長)
日本製鉄健康保険組合
栗坂禎一常務理事
令和7年度健康保険組合全国大会が10月22日(水)12時15分から、東京・丸の内の東京国際フォーラム・ホールAで開催された。
「皆保険存続の危機!持続可能な制度のために今こそ抜本改革を―現役世代を守れ、2025年問題は終わっていない―」をテーマに掲げた今年の大会は、全国から約3000人の方にご出席いただき、WEBでも2000人以上の方にご視聴いただいた。大会議長である静岡連合会会長である静岡県東部機械工業健康保険組合の原田幸男常務理事による開会あいさつのあと、健保連の宮永俊一会長が基調演説を行った。
基調演説が終わると、大会のスローガン
①現役世代の負担軽減と全世代で支える持続可能な制度の実現
②保険給付の適正化・重点化と負担の公平性確保
③安全・安心で効果的・効率的な医療提供体制の構築と医療DX推進
④加入者の健康を支える健保組合の保健事業の充実・拡充
―基にした大会決議案を、本大会の所管委員会である企画委員会委員の山形銀行健康保険組合 保科敦子常務理事が力強く朗読。決議を出席者全員の賛同で採択し、その場で本日の出席がかなわなかった上野賢一郎厚生労働大臣に代わり出席いただいた巽慎一厚生労働省大臣官房審議官に決議文を手交した。
そして、上野厚生労働大臣のあいさつ文を巽大臣官房審議官が代読した。
大会の後半では特別企画として、「全世代型社会保障制度への改革と保険者への期待」をテーマに、まず、株式会社日本総合研究所シニアフェローの翁 百合氏による講演が行われた。その後、日本経済新聞社編集委員兼論説委員の柳瀬和央氏をモデレーターとして、翁氏と宮永会長との対談が行われた。
特別企画終了後、企画委員会委員長の日本製鉄健康保険組合 栗坂禎一常務理事の閉会あいさつにより、本大会は幕を閉じた。

宮永俊一
健保連会長
宮永俊一健保連会長基調演説
本大会は、健保組合関係者が一堂に会し、団結を強め、国民皆保険制度の維持に向けた主張を国政に訴える重要な場である。
令和6年度の健保組合決算見込みは、賃上げや保険料率の引き上げで、かろうじて黒字を確保したが、依然として約半数の組合が経常赤字に苦しむ厳しい財政状況となっている。企業の賃上げに基づき保険料収入が伸びたにもかかわらず、高齢者医療への拠出金がその伸びを上回って過去最高額となり、保険料率の引き上げがなければ赤字に転落するという構造的な問題は残されたままといえる。
今年2025年は、団塊の世代全員が75歳以上となる節目の年で、今後、医療の高度化や高額化などに伴い、医療費が増加していくことは確実である。一方で、高齢者を支える現役世代の人口は急速に減少している。昨年の出生数は約69万人となり、統計を取り始めて以降、初めて70万人を下回った。さらに、今年上半期の出生数も過去最少を更新するペースで少子化が進行し続けている。2025年問題は終わりではなく、少子化による現役世代の減少と高齢者医療費の増加により、むしろ深刻化している。このままでは国民皆保険制度が限界を迎えるという強い危機感を持っている。現行制度のままでは現役世代の負担がさらに重くなり、制度への不信感につながりかねず、手遅れになる前に抜本的な改革を断行する必要がある。
現役世代の負担軽減と、全世代で支え合う持続可能な制度にするため、現行の過重な負担を抜本的に見直し、全世代で支える改革を実現しなければならない。危機打開のため、健保連では、加入者、国民の皆様をはじめ、すべてのステークホルダーに対し、今まで以上に国民皆保険制度を維持する取り組みをお願いするとともに、支援いただきたい事項をまとめた新提言「ポスト2025 健康保険組合の提言」を策定。加入者・事業主と危機感を共有し、健保組合の価値を再認識したい。

こうした強い決意のもと、本日の全国大会では4つのスローガンを掲げている
1つ目は「現役世代の負担軽減と全世代で支える持続可能な制度の実現」。高齢化や医療の高度化により医療費は増加するが、支え手である現役世代は減少し、国民皆保険制度は存続の危機に直面している。この制度を持続可能にしていくためにも、現役世代の過重な負担を是正し、全世代が支える改革の実現を訴える。
2つ目は「保険給付の適正化・重点化と負担の公平性確保」。現行の現役世代に過度に依存した負担構造のままでは、給付と負担のアンバランスがますます拡大する。医療費の財源は有限であるとの認識のもと、セルフメディケーションの推進、保険給付範囲の見直し、薬剤使用の最適化など、給付と負担の見直しを果断に取り組む必要がある。
3つ目は「安全・安心で効果的・効率的な医療提供体制の構築と医療DXの推進」。かかりつけ医機能の浸透、医療機能の分化・集約化を図り、医療提供体制を構築する。また、医療DXは国民が良質かつ効率的なサービスを受けることができる体制を構築するために不可欠な施策である。国は「全国医療情報プラットフォーム」の構築を目指しており、その基盤となる重要なツールであるマイナ保険証の完全移行と医療DXの推進は不可欠である。
4つ目は「加入者の健康を支える健保組合の保健事業の充実・拡充」。加入者のために保険者機能を発揮し、健康づくり・疾病予防等の取り組みを継続・拡充する。
国民皆保険制度の持続可能性が問われている今こそ、健保組合の英知を結集し、発信力を高め、現役世代への理解促進の取り組みに努めていかなければならない。
我々の主張を浸透させ、改革の実現につなげるために、国政に様々な要請を行う必要があり、私も先頭に立って取り組んでいく。引き続き、皆様の絶大なご支援・ご協力を賜りますことをお願い申し上げる。

上野賢一郎厚生労働大臣あいさつ
(代読:巽慎一厚生労働省大臣官房審議官)
本日お集まりの健康保険組合および健康保険組合連合会の皆さんにおかれては、平素より健康保険事業の円滑な運営を通じて、医療保険制度の健全な発展に格別のご尽力をいただき、厚くお礼申し上げる。
本年度は、健康保険法の施行から100年を迎える記念すべき年である。健康保険制度は、戦後の混乱、高度経済成長やバブル崩壊、新型コロナウイルス感染症を乗り越え、今日まで綿々と引き継がれてきた。これからは令和の時代を生き抜く我々の世代が、次の100年へと引き継いでいかなければならない。
本日の大会テーマは、「皆保険存続の危機! 持続可能な制度のために今こそ抜本改革を―現役世代を守れ、2025年問題は終わっていない―」であり、スローガンにも盛り込まれているが、現役世代の負担軽減と全世代で支える持続可能な制度の実現、安全・安心で効果的・効率的な医療提供体制の構築と医療DXの推進という視点は、全世代型社会保障制度の構築という観点からも、極めて重要であると考えている。現在、社会保障審議会医療保険部会において、医療保険制度をめぐる諸課題についての議論が行われている。健康保険組合の皆様の意見も丁寧に伺いながら、検討を深めていきたいと考えている。

司会を行った
大阪連合会の
北吉舞
また、限りある資源を有効に活用しながら質の高い医療を実現していくためには、医療DXを通じたサービスの効率化、質の向上が不可欠である。昨年12月からマイナ保険証を基本とする仕組みが施行された。健康保険組合の皆様におかれては、加入者が切れ目なく適切な保険診療を受診できるよう、多大なるご協力をいただいており、この場を借りて改めて感謝申し上げる。
最後になるが、健保組合および健保連の今後の益々のご発展と、本日ご臨席の皆様のご健勝を祈念申し上げ、私のあいさつとする。
決議
全ての団塊の世代が75歳以上となる2025年を迎えた。我々がこの数年来、組織の総力を挙げて求めてきた全世代型社会保障制度改革は、高齢者の一定以上所得者の自己負担引き上げや保険料算定の見直しなどの法改正が行われたものの、高齢者医療への拠出金は依然として過重な負担が続き、厳しい健保組合財政を好転させるには至っていない。現役世代の人口減少と、高齢化に伴う高齢者医療費の増加が重なる「2025年問題」は終わっておらず、より大きな壁として立ちはだかっている。
加えて、高齢化のピークを迎える2040年頃にかけて、医療の高度化等も相まって医療費はさらに増加することが確実であり、医療保険財政の一層の悪化は避けられない。現役世代に過度に依存した負担構造のままでは、給付と負担のアンバランスが拡大し、国民の安心の礎である「国民皆保険制度」そのものが危機的状況に陥ることになる。今こそ制度を抜本的に見直し、全世代で支える改革を実現しなければならない。
そのためには、加入者や国民の理解と協力が不可欠であり、医療費の財源は有限であるとの認識のもと、自身の健康を守ることから始めるセルフメディケーションの取り組み推進を図るほか、保険給付範囲の見直しや経済性も考慮した薬剤使用の最適化などの「保険給付の適正化・重点化」を進めるとともに、世代内・世代間の「負担の公平性」を確保すべきである。
また、今後の医療ニーズの変化や医療・介護従事者の急減を想定すれば、医療機能の分化・連携の強化やかかりつけ医機能の浸透により、国民にとって安全・安心で効果的・効率的な医療・介護体制を構築しなければならない。医療DXについても、限られた医療資源を有効活用し、持続可能な社会保障制度を築くために不可欠なツールとなる。まずは12月に迫ったマイナ保険証への完全移行を成し遂げ、国民がメリットを実感でき、より良質かつ効率的なサービスを受けられる体制を整備すべきである。
健保組合はこれまでも事業主とともに、加入者の特性に応じたきめ細やかな保健事業を効果的・効率的に展開し、健康づくり・疾病予防等に取り組むことで健康を創出し、健康寿命の延伸にも貢献してきた。
今後も加入者の多様化など社会の変化に対応し、医療DXを活用しながら、これまで以上に現役世代への理解促進のための取り組みも強化しつつ、加入者のために先駆的な役割を果たしていくことを宣言し、組織の総意をもってここに決議する。
一.現役世代の負担軽減と全世代で支える持続可能な制度の実現
一.保険給付の適正化・重点化と負担の公平性確保
一.安全・安心で効果的・効率的な医療提供体制の構築と医療DXの推進
一.加入者の健康を支える健保組合の保健事業の充実・拡充
令和7年10月22日
令和7年度健康保険組合全国大会
皆保険存続の危機!持続可能な制度のために今こそ抜本改革を
― 現役世代を守れ、2025年問題は終わっていない ―
国会議員へ大会決議の実現を強く要請
梅村 聡 衆・維新(大阪5区)
大阪連合会 川隅 専務理事
大阪連合会 西本 事務局長
池下 卓 衆・維新(大阪10区)
関西電力 吉川 常務理事
日本生命 井上 常務理事
大阪連合会 長井 参与
松川 るい 参・自民(大阪府)
大阪連合会 川隅 専務理事
大阪連合会 長井 参与


