時評
歳月不待
9月25日、健康保険組合連合会より令和6年度健康保険組合全体の「決算(見込み)集計結果(概要)」が公表されたが、そのポイントは次のとおりである。
○経常収支は、145億円の黒字となって収支は改善したが、依然約半数の660組合が赤字の状況。
○保険料収入は、三十数年ぶりの高い賃金上昇(2277億円増)や、保険料率の引き上げ(1069億円増)などもあり、前年度比で4.9%(4261億円)の増加。
○高齢者等拠出金は、前年度比で5.7%(2065億円)の増加。
まず、経常収支については令和5年度決算の1365億円の赤字から、令和6年度には1510億円の改善となった。主な収入増の要因としては、被保険者数や平均標準報酬月額、平均標準賞与額などが伸びたうえ、平均保険料率が上昇したことが挙げられる。その結果、保険給付費や高齢者等拠出金の支出増を保険料収入の増加がカバーした格好となった。
個人的な見方ではあるが、健保組合全体として、令和6年度の経常支出の9兆2531億円は経常収入の99.8%、また、令和5年度決算の経常支出の8兆9680億円は、同年度経常収入の101.5%であることから、収支バランスは十分に保たれているというようにも思う…。
とはいえ、令和7年度には団塊の世代が全員75歳以上となることから、後期高齢者支援金が中長期的に高い負担額のまま推移し、令和9年度以降には全国の前期高齢者数の割合が上昇に転じて、前期高齢者納付金も増加することが見込まれる。一方で、現役世代の減少が続くため拠出金のさらなる負担増が懸念される。また、令和8年度からは新たに「子ども・子育て支援金制度」(納付金2000億円超)が開始される予定である。
我が国の健保組合は、企業に勤める現役世代を中心に構成されるが、医療費の支払いと高齢者医療制度への拠出を担う重要な役割も果たしている。しかし近年、各健保組合ともその財政状況が急速に悪化し、制度の持続可能性に対する懸念が高まっている。
今後、制度の持続性を確保するためには可及的速やかな構造改革とともに、現役世代の負担軽減策や高齢者医療制度の抜本的な見直しなども不可欠で、その対応が急がれる。
まさに、「時間は待ってはくれない」状況にある。
(M・O)


