令和6年度 第2回 大阪連合会総会
7年度事業計画・予算を決定

久保俊裕
大阪連合会会長
健保連大阪連合会は3月26日、大阪市北区のホテルモントレ大阪で、令和6年度第2回総会を開催した。総会には大阪連合会の全173組合が参加(当日出席:132組合、委任出席:41組合)。大阪連合会の令和7年度事業計画、同予算などを審議、承認した。
総会では、はじめに大阪連合会の久保俊裕会長があいさつに立った。久保会長は、これからの健保組合を取り巻く厳しい状況を「今年はすべての団塊の世代が後期高齢者となり、高齢者医療への拠出金負担がさらに重くなることが想定される。国民皆保険制度を守るため、世代間の給付と負担のアンバランスを是正して公平性を確保し、全世代で負担を分かち合う制度へ転換しなければならない。しかし、少数与党による国会運営は思うように進まず、夏の参議院選挙が控えることなどもあり、政策決定に向けて緊迫した状況も見込まれる」と述べた。
そのうえで、「健保連として国民に医療保険を取り巻く厳しい環境や健保組合の取り組みについて理解していただくため、「ポスト2025」健保組合の提言の策定に向けて、検討や議論を重ねてきた」と報告。そして「健保組合と健保連がより一層連帯を強め、全力を挙げてこの難局に立ち向かっていく」とまとめた。

田川努
保険課長
続いて、来賓として出席された近畿厚生局の田川努保険課長があいさつした。
田川課長はそのなかで、「高額療養費制度の見直しは、高齢化や高額薬剤の普及等により、その総額は年々増加し、結果として現役世代を中心に保険料が増加している。そのため、現役世代をはじめとする社会保険料負担の軽減を図るとともに、セーフティネットとしての役割を今後も維持していく観点から、制度の見直しが本年8月から行われる予定だった。しかし、今国会での議論により、8月からの引き上げを見送り、秋までに結論を出すこととなった」と説明。また、実地指導監査については、7年度も今年度と同様に実施する。1点お願いとして、事前提出資料は今まで紙媒体で提出いただいていたが、可能な限り電子媒体での提出を依頼したいため、ご理解とご協力を求める。諸事情により紙媒体での提出を希望の場合は、ご照会をお願いしたいなどの報告があった。
この後、議事に入り久保会長が議長となって、大阪港湾健保組合、U-NEXTHOLDINGS健保組合の2組合を議事録署名者に指名した後、議案の審議を行った。
鷹野英樹
健保連総務理事
総会終了後には、来賓として出席された健保連本部の鷹野英樹総務理事から、中央情勢報告があった。鷹野総務理事は、まず医療保険制度改革について説明。高額療養費制度の見直しについては見送りが決まり、秋までに見直し方針が示される見通し。被用者保険の適用拡大や年収の壁についても触れ、施行に伴う特例措置への対応として、「実施するのであれば事業主の事務負担等を考慮し、医療保険等と同様の取り扱いとすべき。また、その財源は国が手当てすべき」とした。その他に、マイナンバーカードと保険証の一体化については、7年度の取り組みスケジュールや、利用促進等にかかる働きかけなどについても説明があった。また、「ポスト2025」健康保険組合の提言についても、その概要が報告され、加入者へのお願い・健保組合の4つの約束・健保組合が取り組む5つのチャレンジ・国に対して実行、整備を求めることなどが報告された。
○総会の経過
議案第1号
令和7年度事業計画(案)
議案第2号
令和7年度収入支出予算(案)
議案第3号
令和7年度支出予算の款内各項間の流用を理事会に委任すること
以上の3議案を一括上程し、いずれも原案どおり承認された。
議案第4号
令和6年度被用者保険運営円滑化推進事業会計収入支出予算および同説明(案)
以上、原案どおり承認された。
Ⅰ健康保険組合をめぐる諸情勢
(1)医療・介護保険制度を取り巻く諸情勢
令和6年5月8日、健保連は「令和7年度政府予算概算要求に向けた個別要望事項」をまとめ、厚生労働省の保険局長あてに提出した。高齢者医療への拠出金の負担増で健保組合はさらに厳しい財政運営を強いられるとし、財政支援・負担軽減措置を要望。重点要望事項として、後期高齢者・現役並み所得者の給付費への公費投入、高額医療交付金交付事業に対する財政支援の拡充、出産・子育て対策・DX推進など国の施策推進に貢献する健保組合の取り組みへの財政支援を要望した。
同年6月5日、「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律」が成立し、財源の一部に、社会保険制度を通じて拠出する「子ども・子育て支援金制度」が創設された。歳出改革と賃上げによって社会保険負担軽減の効果を生じさせ、その範囲内で支援金制度を構築することで、実質的な負担が生じない財政構造が示された。健康保険法上で、一般保険料率と区分して子ども・子育て支援金率を規定し、実務上、国が一律の支援金率を示す扱いとなり、施行日は令和8年4月1日とした。
同年6月21日、政府は「経済財政運営と改革の基本方針2024(骨太の方針2024)」と「新しい資本主義のグランドデザインおよび実行計画2024年改訂版」を閣議決定した。骨太の方針2024では、予算編成について、2025年度から2027年度までの3年間、これまでの歳出改革努力を継続する」と明記し、具体的な内容は経済・物価動向等に配慮しながら、各年度の予算編成過程で検討する方針が盛り込まれた。社会保障関連の内容では、全世代型社会保障の構築に向けて、医療・介護等の不断の改革により保険料負担の上昇を抑制することが極めて重要と明記された。医療保険制度改革は、給付と負担のバランスや現役世代の負担上昇の抑制を図りつつ、関連法案の提出を含め、各種制度における総合的な検討を進める方針が示された。併せて、医師偏在対策、地域医療構想の推進をはじめとする医療提供体制改革、医療DX推進等に尽力する方針も示された。
同年12月25日、厚生労働大臣と財務大臣との令和7年度予算編成に向けた大臣折衝が行われ、社会保障関係費について、令和6年度から5600億円程度の増加を認める方針で合意した。医師偏在対策の具体的な内容は、令和8年度予算編成過程で検討することとされた。その際、重点医師偏在対策支援区域における医師への手当増額の支援は、全ての被保険者に広く協力いただくよう保険者からの負担を求めるとされた。また、医師への手当増額の支援については、診療報酬を代替するものであることを踏まえ、給付費の中で一体的に捉える観点から、当該事業の財源について、給付費や保険料が増えない形で、診療報酬改定において確保するとしている。また、全世代型社会保障構築や保険料負担の軽減を図るため、高額療養費制度の自己負担限度額を所得区分に応じて見直し、所得区分を細分化するほか、70歳以上に設けられている外来特例も見直し、令和7年8月から令和9年8月にかけて段階的に実施するとしている。
同年12月27日、政府は医療保険制度改革を含む政府予算案を閣議決定した。社会保障関係については、自然増のうち1300億円を圧縮した結果、38兆2778億円と昨年度より5585億円増となり、健保組合関係助成費は、一般会計分が1314.5億円と決定された。このうち、健保連が行う高額医療交付金事業に対する財政支援が100億円、高齢者医療支援金等負担金助成事業など拠出金負担増を軽減するための財政支援が950.4億円、短時間労働者適用拡大に係る財政支援で2.5億円計上された。なお、こども未来戦略に基づく実質的な社会保険負担軽減効果は、薬価改定で1200億円、高額療養費制度の見直しで600億円合計1800億円程度を見込み、令和5年からの3年度分の合計は4900億円程度を見込んだ。
(2)健保組合(大阪)の財政状況
令和5年度決算では、経常収支が209億円の赤字を計上し、前年度の黒字から反転して大幅に収支が悪化した。赤字組合は全体の5割を超える96組合となった。収支の悪化は、法定給付費が前年度より211億円(4.34%)増加に加えて、高齢者拠出金が前年度の一時的な減少の反動で前年度より219億円(6.02%)増加し、保険料収入の伸びを上回ったことが要因である。また、平均保険料率は、前年度より0.1ポイント上昇し92.69‰となり、協会けんぽの平均である100‰以上の組合は、45組合、全体の27%であった。
昨今の健保組合を取り巻く情勢は効果的、効率的な医療提供体制の構築・医療DXの推進・少子化対策など極めて流動的で、変化の波が大きくなってきている。高齢者医療への拠出金負担の急増が見込まれるなかで、現役世代の過重な負担を軽減し、財政健全化を図るためには世代間の給付と負担の不均衡の是正による公平性の確保がますます必要となる。また、増大する医療費の適正化対策として、事業所とのコラボヘルスの実施による第3期データヘルス計画の推進、レセプト点検の強化、療養費の適正化、後発医薬品等の使用促進、マイナ保険証の利用促進など、きめ細かく取り組んでいくことが求められている。
(3)大阪連合会の事業等
大阪連合会では、各地区会をはじめ、理事会・各委員会において、議論を重ねて、当面する課題に取り組んでいる。
本年度は、引き続き各関係団体と連携しながら、国民皆保険制度を守り抜くため広く国民に理解していただくよう積極的に活動を展開していくこととし、主張の実現に向けた活動も含め、次の事業計画に基づき、所期の目的を達成すべく、事業活動を実施する。
事業計画
〔基本方針・活動〕
(1)重点事業活動
次なる改革に向けた健保組合・健保連の主張実現および保険者機能の強化に向け、会員組合の協力を得ながら健保連本部との連携を密にして、下記事項について取り組む。
①理事会・委員会・地区会活動を積極的に推進する。
②健保組合・健保連の主張実現に向け、政党・国会議員への効果的な要請活動を展開する。
③広報誌「かけはし」やホームページなどを通じての広報活動により、健保組合・健保連の主張や活動の周知を図り、理解度を高める。
④第3期データヘルス計画・コラボヘルスの推進に向けて、保険者機能強化への支援を行うとともに、健康経営・健康宣言の普及促進を図る。
⑤医療DXの基盤となるマイナ保険証の利用率向上を図る。
⑥健保組合全国大会への積極的な参加を推進する。
⑦健保組合の円滑な運営のため、行政機関と密接な連携を保つ。
⑧関経連、連合大阪、協会けんぽ大阪支部との連携を図る。
⑨医師会等医療関係団体とは意見交換を通じて相互理解を深める。
⑩大阪府保険者協議会では、医療費の適正化・有効な保健事業・地域医療構想の取り組みについて、健保組合・健保連の意向を反映させる。
⑪国保運営協議会では被用者保険サイドの意向を反映させるよう、積極的に参加する。
⑫近畿地区各連合会等と連携強化を図り、地区共同事業を推進する。
⑬他府県の健保組合も加えた研修事業等に取り組み、連帯感を醸成する。
⑭組合運営サポート事業など、時宜に応じた諸対策を実施する。
(2)組織活動
組織活動の強化を図り、下記事項を実施する。
①理事会および総会を開催する。
②地区会長会議、各種委員会等を開催する。
③地区会を中心とした諸活動を支援する。
④主張の実現に向けたシンポジウム等を開催する。
(3)組合運営に対する支援活動
会員組合の円滑な業務推進に資するため、下記事項を実施する。
①会員組合専用サイトを通して、効率的に情報の提供や共有を図る。
②組合予算編成や実地指導監査等の事務説明会を開催し、行政機関および健保連本部と連携を密にして会員組合を支援する。
③永年勤続者の表彰を行う。
④会員組合の保健事業、医療費適正化対策の推進を支援する。
⑤会員組合の法律、レセプト・保険給付、特定健診・特定保健指導等の相談事業を充実する。
⑥研修会等の開催にあたっては、集合形式のみならずオンライン形式との組み合わせや、動画配信等により実施し、参加しやすい環境を構築する。
〔事業活動〕
1.広報活動の推進
広報活動の充実を図るため、次の事業を実施する。
(1)広報誌「かけはし」の発行
①月1回発行する。
②次の項目を重点的に掲載する。
- 医療保険制度改革関連(全世代型社会保障構築に向けた改革、健保組合方式の維持・発展等)
- 医療費適正化関連と健康づくり関連
- 大阪連合会の事業活動
- 会員組合の財政状況と地区会の事業活動
- 政党、国会議員への要請活動
- 主張実現に向けたシンポジウム等
(2)広報活動の強化
会員組合の事業推進に役立つよう、次の活動を強化する。
- ホームページの充実
- 広報資料の提供
(3)関係団体等に対する広報の強化
次の関係団体等への広報誌の配布を通じて、健保組合・健保連の主張と事業活動への理解の浸透を図る。
- 国会議員(大阪府選出および社会保障関係)
- 経営者団体、労働団体および医療関係団体
- その他必要な関係者
2.会員組合役職員のスキル向上と組合業務の改善・効率化の推進
会員組合の円滑な事業運営を支援するため、次の事業を実施する。
(1)会員組合役職員のスキル向上
①事務長・中堅職員等の研修会を開催する。
②組合業務別の実務講習会を開催する。
③個人情報保護研修会を開催する。
④健保事務相談を実施する。
(2)組合業務の改善・効率化の推進
①情報セキュリティ講習会を開催する。
②パソコン研修会を開催する。
(3)保険者機能の強化推進
①データヘルス・コラボヘルスに関する研修会等を開催する。
②後発医薬品等に関する講習会を開催する。
3.医療費適正化対策の推進
医療費の適正化対策を推進するため、次の事業を実施する。
(1)行政機関・医療関係団体等との連携強化
①近畿厚生局・医療関係団体等との連携を図る。
②大阪府保険者協議会医療費調査部会との連携を図る。
③国保運営協議会委員への活動強化を図る。
(2)審査支払機関との連絡・調整の緊密化
事務連絡協議会を開催し、審査支払機関の事業全般や審査結果事例等について意見交換を行う。
(3)医療費適正化に関する情報の収集と活用
①関係各方面からの情報収集および情報提供の促進を図る。
②柔道整復等療養費に関する情報の収集を行い、適正化の促進を図る。
③後発医薬品等の使用促進を図る。
(4)レセプト点検等に関する研修会の実施
①求償事務に関する研修会を開催する。
②レセプト点検事務に関する研修会を開催する。
③柔道整復等療養費に関する研修会を開催する。
(5)医療対策室の活動強化
レセプト・保険給付相談および法律相談を実施する。
4.保健共同事業の推進
会員組合における保健事業の実施を支援する。
(1)健康教育の実施
生活習慣病予防対策に加えて、がん予防・メンタルヘルス等をテーマに研修会を開催する。
(2)保健師活動の実施
①保健師による特定保健指導の円滑な実施の支援や相談事業を実施する。
②保健師のスキル向上に資する研修会等への参加を支援する。
③保健師連絡協議会の活動を支援する。
(3)行政機関等との連携強化
①大阪府健康医療部健康推進室健康づくり課との連携を図る。
②大阪府保険者協議会保健活動部会との連携を図る。
(4)感染症対策
新型コロナウイルス感染症やインフルエンザ、ノロウイルスによる感染性胃腸炎など、感染症対策の普及啓発に努める。
(5)運動施設等との契約
健康増進に寄与する運動施設(プール、アイススケート、スポーツクラブ等)の利用券や法人契約の斡旋を行う。
(6)健康づくり活動の推進
①生活習慣や生活環境が健康に及ぼす影響などの啓発活動に努める。
②健康経営・健康宣言の普及促進を図る。
③健康ウオーキング等、各種健康づくり活動を後援する。
5.総合組合の運営推進
総合組合の運営に資するため、次の調査・研究事業を実施する。
①総合組合の実態に関する調査資料を作成するとともに、財政状況を分析し検討する。
②第3期データヘルス計画の効果的な実施について検討する。
③医療費適正化対策について検討する。
④協会けんぽと財政状況等について比較・検討する。
