けんぽれん大阪連合会

けんぽれん大阪連合会 会員組合員専用サイト 要認証
近畿地区連合会 専用サイト 要認証

広報誌「かけはし」

心の健康講座

12月2日、心の健康講座を開催。関西福祉科学大学 心理科学部 准教授津田つだ恭充ひさみつ氏が「ストレスと付き合う~自分との向き合い方、ストレスを抱えた人との向き合い方~」をテーマに講演されました。」をテーマに講演されました。(以下に講演要旨)

ストレスと付き合う
~自分との向き合い方、ストレスを抱えた人との向き合い方~

津田 恭充 氏

日々の生活の中で、私たちは多くのストレスや心理的な問題に直面します。本講演では、そうした問題に対して、日常生活で活用できる具体的な方法について解説しました。

日本を含む先進諸国では、年齢的には40代後半に幸福感の底があることが知られています。いわゆる「中年の危機」ともいえる現象ですが、これには、若い頃に描いていた理想と現在の姿とのギャップ、健康面での不安や仕事上の責任の増大などが関わっていると考えられています。そこで、こうした課題を乗り越えるための心理的なアプローチをいくつか紹介しました。一例として、「理想を高めすぎず、現在の自分を受容する」ことがあります。こう書くと、「偉業は高い理想と人並外れた努力によってこそ成しえるのだ」と反論されるかもしれません。たしかにそうなのですが、高い理想は終わりのない未達成感をもたらし、慢性的なストレスの元になることもまた事実です。そんなときは、今までの人生の中で頑張ってきた部分や達成してきたことを振り返り、自分を認めてみることをおすすめします。

そのほかに、目標達成に向けた現実的な行動計画を立てる方法や、否定的な思考を柔軟にする認知療法の技法、ストレスコーピングを紹介しました。これらは普段の生活の中で実践できるもので、多忙な生活の中でも取り入れやすいという利点があります。日々のちょっとした時間を使って継続的に取り組むことで効果が期待できます。

最後に、自殺念慮や精神疾患をもつ人に対する接し方についても取り上げました。例えば、「死にたいと言う人は実際には本気で自殺しない」という偏見がありますが、これは誤解で、統計的にはこのような人の自殺率は高いことが知られています。周囲の反応を試すつもりで自殺をほのめかすケースも中にはありますが、そうでないケースも多いため、基本的には自殺に関する発言は軽視せずに受け止めることが重要です。また、休職中のうつ病の人が一時的に楽しそうにしている様子を見て、「もう治ったのではないか」「怠けているのではないか」と感じることがありますが、これも誤りです。うつ病は波があり、一時的に楽しそうに見える瞬間があったとしても、それは完全な回復を意味するわけではありません。多くのうつ病の人は、休むことに対して罪悪感を抱えがちです。そのため、少しでもリラックスし休むことを受け入れられるようになったのは、回復への重要な一歩であるといえます。家族や友人としては、堂々と休んでいるのを見てもどかしい思いを抱くかもしれませんが、休息が回復に欠かせないプロセスであることを理解し、堂々と休むことができていることをむしろ喜ばしく思うことが必要です。