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広報誌「かけはし」

健康セミナー(オンデマンド配信)

7月25日~9月25日、健康セミナーについてオンデマンドにて講演動画を配信。順天堂大学大学院 医学研究科 先端予防医学・健康情報学講座 特任教授 福田ふくだ ひろし 氏が「ヘルスリテラシー×ナッジで予防する働き盛りの生活習慣病」をテーマに講演されました。(以下に講演要旨)

ヘルスリテラシー×ナッジで予防する働き盛りの生活習慣病

福田 洋 氏

①産業保健の世界の動向

4月28日~5月3日に第34回国際産業衛生学会(マラケシュ)に参加しました。1906年にイタリアで発足した産業衛生分野最大の国際学会で、ナイトマーケットで有名なモロッコ第2の都市で開催されました。開幕基調講演はIARC(国際がん研究機関)のエリザベート博士による「職業性暴露による国際的がん負担」で、毎年2000万人の新規がん患者がおり今後も増加すること、がん種により予防可能性が大きく異なること、発がん性物質の中でもアスベストが職業性暴露が原因のがん死亡の63%を占めており、職業性暴露の予防が喫緊の課題と語られました。日本の健康経営についての準基調講演もあり、高齢化世界トップの日本における健康経営の生活習慣病予防への有効性が示されました。

②人のこころを動かす極意

メタボ健診も開始から15年、「わかっちゃいるけど変わらない」という現状がある中、どうやって人のこころを動かすか、様々な議論を行ってきました。その極意は行動変容理論として蓄積されており、人は「やる気があり、自分を知っていて、自信があり、助けがある状態」で自己決定できると言われています。しかし人間の行動の大部分は直感的な無意識の行動(システム1)に支配されており、行動変容理論では不十分なこともあります。そこで近年注目されているナッジ(つい反応したくなる小さなきっかけ)を用いた働きかけが有効で、行動の定着にはヘルスリテラシーによるブーストが有効とされており、ナッジとヘルスリテラシーを車の両輪として人の行動に働きかけることが重要です。

③ヘルスリテラシーとは

「基本的な健康情報やサービスを調べ、得て、理解して、効果的に利用できる個人の能力」と定義されるヘルスリテラシーは健康格差への処方箋として注目されており、近年はスマホやSNSの活用などのデジタルヘルスリテラシーも注目されています。ヘルスリテラシーは良好な生活習慣、労災の少なさ、生産性の高さとも関連します。日本医師会が監修している健康マスター検定等でヘルスリテラシーを学び、高めることもできます。

④ヘルスリテラシー×ナッジで健康経営

健康経営がスタートしてから10年、「健康経営のゴールは組織のヘルスリテラシー向上」(森晃爾教授、産業医科大学)と言われており、ヘルスリテラシーは健康な組織・企業・国の基盤になりうるとされています(ナットビーム教授、シドニー大学)。演者の産業医先にも種々の職域ヘルスプロモーションを実施し、従業員のヘルスリテラシー、女性の健康、生活習慣の改善等に良好なインパクトを残しています。現代はAIが加速度的に普及し、情報は一方向でなく、患者さんや従業員が中心にいて網の目のように共有されるデジタルヘルスの時代となっています。メタボ・メンタル・がんリテラシーなどの種々のトピックについて、産業医や保健師も動画等での発信を求められる時代です。デジタルヘルスリテラシー×ナッジで健康経営を推進し、働き盛りの生活習慣病予防を進めましょう。