2023年度 健保組合(全国)予算早期集計
高齢者医療拠出金3兆7067億円
対前年度比7.30%増、前年度の一時的な減少からの反動
健保連はこのほど、2023年度予算(早期集計)概要をまとめた。全国に1380ある健保組合のうち、予算データの報告があった1367組合の数値をもとに推計した。経常収支は前年度に比べて2倍以上となる5623億円の赤字。赤字を計上した組合は約8割。高齢者医療への拠出金合計は、対前年度比2523億円(7.30%)の増加となり、新型コロナウイルスの感染拡大の影響による前年度の一時的な減少からの反動や、高齢化の進展などが要因と思われる。
経常赤字5623億円 1093組合が赤字
2023年度予算(早期集計)概要は、今年4月1日現在、全国にある1380健保組合のうち、23年度予算データの報告があった1367組合の数値をもとに、全組合の数値を推計した。それによると、23年度予算は経常収入8兆6161億円、経常支出9兆1784億円で、差し引き5623億円の赤字となっている。
前年度予算との比較では、経常収入は2295億円(2.74%)増加したが、経常支出が5113億円(5.90%)の大幅な増加となった。このため、赤字組合は前年度から130組合増加し、全組合の79.20%にあたる1093組合が赤字を計上している。赤字を計上した組合における赤字総額は、対前年度比2315億円増の6028億円となる見通し。
一方、黒字組合は前年度から137組合減少し、全組合の20.80%にあたる287組合となり、黒字総額は対前年度比503億円減の405億円。
被保険者数が9万2643人(0.56%)増加して1668万人、保険料収入が2317億円(2.80%)増加して8兆5038億円となるなど、収入の増加を見込んだ。
法定給付費は2446億円(5.51%)増の4兆6816億円、高齢者医療への拠出金合計は2523億円(7.30%)増の3兆7067億円となった。
このほか、おもな適用状況では、被扶養者数は約23万人(1.90%)減の1183万1552人。平均標準報酬月額は6111円増の38万4018円。同賞与額は4万3295円増の116万3361円となっている。前年度に比べて回復基調にあるが、新型コロナ感染拡大前の2019年度と比べると、平均標準報酬月額は1.5%増、平均標準賞与額1.4%減と、依然として低調を続けている。
高齢者医療への拠出金、7.30%の増加
拠出金の内訳は、後期高齢者支援金等が2兆1930億円(対前年度比1967億円、9.86%増)となった。前期高齢者納付金は1兆5136億円(同557億円、3.82%増)。保険料収入に対する拠出金の割合は44.2%となった。
高齢者医療拠出金が増加した主な原因は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響に伴う、前年度の一時的な減少の反動や、団塊の世代が75歳に到達し始めたことなどにより、後期高齢者支援金が増加したことで、今回の大幅な増加につながったと推測される。
なお、保険給付費は対前年度比2475億円(5.46%)増の4兆7820億円を見込み、保健事業費は同91億円(2.03%)増の4580億円を計上した。
平均保険料率9.272%
調整保険料率を含んだ平均保険料率は、前年度より0.016ポイント上昇して9.272%となった。また、保険料率を引き上げたのは135組合。この結果、協会けんぽの平均保険料率(10.00%)以上の組合は309組合となった。なお、収支均衡に必要な財源を賄うための実質保険料率は、平均保険料率を0.83ポイント上回る10.10%となる見通し。
介護保険関係
介護保険分の予算概要をみると、回答があった1367組合ベースで、平均保険料率は前年度とほぼ同率の1.78%。1人あたり保険料負担額(年額)は、同1421円(1.2%)増の11万6006円となった。
また、集計対象の1367組合のうち、保険料率を引き上げたのは130組合であり、全体の9.5%を占め、設定保険料率が1.9%以上(告示による概算負担率)の組合は293組合で、全体の21.4%となっている。
医療費の動向等
2022年4月~2023年1月の健保組合における医療費は、対前年同期比で医科7.3%増(入院外13.0%増、入院2.4%減)、調剤5.0%増であり、依然として高い水準で推移している。2023年度以降も、新型コロナウイルス感染症拡大等の影響が不透明であり、変動が著しい医療費の動向を引き続き注視する必要がある。
また、高齢者医療への拠出金が2024年度以降、毎年増加するなか、賃金引き上げによる保険料収入への効果が予測しづらく、今後の財政影響が懸念される。
※前述の数字は、単位未満を四捨五入しているため、合計等が一致しない場合がある。
