令和3年度 第2回 大阪連合会総会・書面審議
令和4年度事業計画・予算を了承
健保連大阪連合会は、新型コロナウイルスの拡散リスクを回避するため、3月23日の開催を中止した第2回定時総会について、書面による審議を行い、同23日付で、令和4年度の事業計画・収支予算の議案を議決、了承した。
Ⅰ健康保険組合をめぐる諸情勢
(1)医療・介護保険制度を取り巻く諸情勢
2021(令和3)年度も新型コロナウイルス感染症に翻弄された1年であった。このことにより、健保組合においても、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた企業の業績・賃金水準の低迷などで財政が厳しさを増した。緊急事態宣言解除後は新規感染者数が低位で推移し、新型コロナウイルスワクチンの接種、無料のPCR検査の拡大、医療供給体制の強化などにより、医療逼迫を回避できる可能性が高まっていた。しかし、2022(令和4)年1月から変異株の急速な感染拡大により、先行きが見えない不確実な状況が続いている。
このような中、医療・介護保険制度においては、2021(令和3)年6月4日参議院本会議で「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案」が可決、成立した。改正の柱は、
①後期高齢者の窓口2割負担の導入
②傷病手当金の支給期間の通算化
③任意継続被保険者制度の見直し
④育児休業中の社会保険料免除要件の見直し
⑤効果的な予防・健康づくりに向けた保健事業における健診情報等の活用促進などとなる。
特に①後期高齢者の2割負担については、現役世代の支援金負担増の抑制を目的に、所得上位約30%に該当する課税所得28万円以上かつ年収200万円以上(複数世帯320万円以上)の方を対象に導入。2割負担導入の時期は、2022(令和4)年10月1日から2023(令和5)年3月1日までの間とし、政令で施行日を決定するとした。2021(令和3)年12月22日鈴木財務大臣と後藤厚生労働大臣が、令和4年度政府予算について折衝し、一定所得以上の後期高齢者の2割負担の導入時期について、2022(令和4)年10月1日から施行することで合意し、2021(令和3)年12月24日に閣議決定された令和4年度政府予算案において明記された。
一方、2021(令和3)年6月18日には、「経済財政運営と改革の基本方針2021日本の未来を拓く4つの原動力~グリーン、デジタル、活力ある地方創り、少子化対策~」(骨太方針2021)が経済財政諮問会議での答申を経て、閣議決定された。ここでは、令和4年度から6年度までの3年間は、社会保障関係費の伸びを高齢化による増加相当分におさめる「歳出目安」に沿った予算編成を継続する方針が示された。また、社会保障改革については、感染症を機に進める新たな仕組みを構築するため、かかりつけ医機能の強化・普及や、医療提供体制改革につながる診療報酬の見直しが盛り込まれた。
2022(令和4)年1月17日に開会された通常国会に提出した令和4年度政府予算案での社会保障関係費は、36兆2735億円と昨年度より4393億円増加となり過去最大となった。高齢化に伴う社会保障費の増加幅、いわゆる自然増は、6600億円程度と見込んだうえで、薬価・医療材料価格改定などで2200億円を削減し、この伸びを4400億円程度に抑えた。健保組合関係助成費は、令和3年度補正予算とあわせて896.8億円と決定された。このうち、令和4年度政府予算案では高齢者医療支援金等負担金助成事業など拠出金負担増を軽減するための財政支援が820.4億円、短時間労働者適用拡大に係る財政支援で4.9億円計上された。なお、令和3年度補正予算では新型コロナウイルス感染症の影響を受けた健康保険組合に対する財政支援(新型コロナウイルス感染症保険者機能強化支援事業)として、9.8億円が計上されたが、新型コロナウイルス感染症の影響を受けている健保組合財政の窮状を踏まえると金額的には少ないと言わざるを得ない。
2021(令和3)年4月からの介護報酬の改定は、0.70%のプラス改定となった。このうち、0.05%は新型コロナウイルス感染症に対応するための特例的な評価(令和3年9月末までの間)となったが、今後、団塊の世代の全てが75歳以上となる2025年に向けて、「地域包括ケアシステムの推進」、「自立支援・重度化防止の取組の推進」、「介護人材の確保・介護現場の革新」、「制度の安定性・持続可能性の確保」が求められる。
2022(令和4)年4月からの診療報酬改定は、2021(令和3)年12月22日の大臣折衝において、診療報酬の本体が0.43%引き上げられ、薬価改定はマイナス1.35%、医療材料価格改定はマイナス0.02%となり、全体で差し引き0.94%程度のマイナス改定となった。健保連が求めた薬価等のマイナス部分を診療報酬に充当せず、国民への還元という主張は今回も実施されなかった。
(2)健保組合(大阪)の財政状況
健保組合の財政状況は、2020(令和2)年度決算では、新型コロナウイルス感染症などの影響で、保険料収入が約54億円減少したが、受診控えなどにより保険給付費が約239億円減少したことから、経常収支で7年連続の黒字となった。しかし、保険料収入に対する拠出金の割合は42.42%と、前年度より1.29ポイント上昇し、30%の組合が経常収支赤字となっている。一方、保険料率の平均は92.57‰と、前年度より0.19ポイント下降し、協会けんぽの平均である100‰以上の組合は、前年度から3組合減少して45組合となり、全体の27%となった。
2023(令和5)年度以降は、高齢者医療への拠出金負担の急増が見込まれる中で、現役世代の過重な負担を軽減し、財政健全化を図るためには、世代間の給付と負担の不均衡の是正による公平性の確保について広く国民に示しながら、増大する医療費の適正化対策として、事業所とのコラボヘルスの実施による第2期データヘルス計画の推進、レセプト点検の強化、療養費の適正化、後発医薬品の使用促進など、きめ細かく取り組んでいく必要がある。
(3)大阪連合会の事業等
大阪連合会では、各地区会をはじめ、理事会・各委員会において、常に議論を重ねて、当面する課題に取り組んでいる。
本年度は、新型コロナウイルス感染症の影響を配慮しつつ、引き続き各関係団体と連携しながら、皆保険制度を守り抜くため広く国民に理解していただくよう、昨年の10月に取りまとめられた健保組合、健保連の提言「安全・安心な医療と国民皆保険制度の維持に向けて」を柱として、積極的に活動を展開していくこととし、主張の実現に向けた活動も含め、次の事業計画に基づき、所期の目的を達成すべく、事業活動を実施する。
事業計画
〔基本方針・活動〕
(1)重点事業活動
次なる改革に向けた健保組合・健保連の主張実現および保険者機能の強化に向け、会員組合の協力を得ながら健保連本部との連携を密にして、下記事項について取り組む。
①理事会・委員会・地区会活動を積極的に推進する。
②健保組合・健保連の主張実現に向け、政党・国会議員への効果的な要請活動を展開する。
③広報誌「かけはし」やホームページなどを通じての広報活動により、健保組合・健保連の主張や活動の周知を図り、理解度を高める。
④第2期データヘルス計画・コラボヘルスの推進に向けて、保険者機能強化への支援を行うとともに、健康経営・健康宣言の普及促進を図る。
⑤健保組合のICT化推進に向けて支援を行う。
⑥健保組合全国大会への積極的な参加を推進する。
⑦健保組合の円滑な運営のため、行政機関と密接な連携を保つ。
⑧関経連、連合大阪、協会けんぽ大阪支部との連携を図る。
⑨医師会等医療関係団体とは意見交換を通じて相互理解を深める。
⑩大阪府保険者協議会では、医療費の適正化・有効な保健事業・地域医療構想の取り組みについて、健保組合・健保連の意向を反映させる。
⑪国保運営協議会へは、被用者保険サイドの意向を反映させるよう積極的に参加する。
⑫近畿地区各連合会と密接な連携を図る。
⑬他府県の健保組合も加えた保健事業等に取り組み、連帯感を醸成する。
⑭組合運営サポート事業など、時宜に応じた諸対策を実施する。
(2)組織活動
組織活動の強化を図り、下記事項を実施する。
①理事会および総会を開催する。
②地区会長会議、各種委員会等を開催する。
③地区会を中心とした諸活動を支援する。
④主張実現に向けたシンポジウム等を開催する。
(3)組合運営に対する支援活動
会員組合の円滑な業務推進に資するため、下記事項を実施する。
①会員組合専用サイトを活用し、円滑な情報提供・充実を図る。
②組合予算編成等事務説明会を開催する等、行政機関および健保連本部と連携を密にして支援する。
③永年勤続者の表彰を行う。
④会員組合の保健事業、医療費適正化対策の推進を支援する。
⑤会員組合に有効な健保事務、法律、レセプト・保険給付、特定健診・特定保健指導等の相談事業を充実する。
⑥事業活動における研修会等の開催にあたっては、集合形式のみならず、集合形式とオンライン形式の組み合わせや動画配信などにより、一層の積極的な参加を促す。
〔事業活動〕
1.広報活動の推進
広報活動の充実を図るため、次の事業を実施する。
(1)機関誌「かけはし」の発行
①月1回発行する。
②次の項目を重点的に掲載する。
- 医療保険制度改革関連(国民皆保険制度の持続性確保、安全で効率的な医療と現役世代の負担軽減等)。
- 医療費適正化関連と健康づくり関連。
- 大阪連合会の事業活動。
- 会員組合の財政状況と地区会の事業活動。
- 政党、国会議員への要請活動。
- 主張実現に向けたシンポジウム等。
(2)広報活動の強化
①会員組合の事業活動の推進に役立つようホームページの充実を図る。
②会員組合が行う広報活動に役立つ研修会を開催する。
③会員組合の広報活動に具体的に役立つ広報資料を提供する。
(3)関係団体等に対する対外広報の強化
次の関係団体等への広報誌配布を通じ、健保組合・健保連の主張と事業活動への理解の浸透を図る。
- 国会議員(大阪府選出および社会保障関係)。
- 経営者団体、労働団体および医療関係団体。
- その他必要な関係者。
2.会員組合役職員の資質向上と組合業務の改善・効率化の推進
会員組合の円滑な事業運営を支援するため、次の事業を実施する。
(1)会員組合役職員の資質向上
①事務長・中堅職員等研修会を開催する。
②組合業務別実務講習会を開催する。
③個人情報保護研修会を開催する。
④後発医薬品に関する講習会を開催する。
⑤健保事務相談を実施する。
(2)組合業務の改善・効率化の推進
①情報セキュリティ講習会を開催する。
②パソコン研修会を開催する。
(3)保険者機能の強化
データヘルス・コラボヘルスに関する研修会等を開催する。
3.医療費適正化対策の推進
医療費の適正化対策を推進するため、次の事業を実施する。
(1)行政機関・医療関係諸団体との連携強化
①近畿厚生局・医療関係団体との連携を図る。
②大阪府保険者協議会医療費調査部会との連携を図る。
③国保運営協議会委員の活動強化を図る。
(2)審査支払機関との連絡・調整の緊密化
事務連絡協議会を開催し、審査結果事例等について審査委員との意見交換を行い、結果資料を提供する。
(3)医療費適正化に関する情報の収集と活用
①関係各方面からの情報収集および情報提供の促進を図る。
②柔道整復等療養費に関する情報の収集を行い、適正化の促進を図る。
③後発医薬品の使用促進を図る。
(4)レセプト点検等に関する研修会の実施
①改定診療報酬説明会を開催する。
②レセプト点検事務に関する研修会を開催する。
③柔道整復等療養費に関する研修会を開催する。
④求償事務に関する研修会を開催する。
(5)医療対策室の活動強化
レセプト・保険給付相談および法律相談を実施する。
4.保健共同事業の推進
会員組合における健康寿命の延伸を目指した保健事業の実施を支援する。
(1)健康教育の実施
生活習慣病対策に加えて、がん予防・メンタルヘルス等をテーマに研修会を開催する。
(2)保健師活動の実施
①保健師による特定健診・特定保健指導の円滑な実施を支援する等、相談事業を実施する。
②保健師の資質向上を図るため、研修会等への参加を支援する。
③保健師連絡協議会活動を支援する。
(3)大阪府保険者協議会との連携
保健活動部会との連携を図る。
(4)感染症対策
新型コロナウイルス感染症やノロウイルス感染性胃腸炎など、感染症対策の普及啓発に努める。
(5)共同利用施設の契約
- 保養施設の共同利用の契約。
- プール、アイススケート施設等利用券の斡旋。
(6)健康づくり活動の推進
①生活習慣や生活環境が健康に及ぼす影響などの啓発活動に努める。
②健康経営・健康宣言の普及促進を図る。
③健康ウオーキング等、各種健康づくり活動を後援する。
5.総合組合の運営推進
総合組合の運営に資するため、次の調査・研究事業を実施する。
①総合組合の実態に関する調査資料を作成するとともに、財政状況を分析し検討する。
②第2期データヘルス計画の効果的な実施について検討する。
③医療費適正化対策について検討する。
④協会けんぽと財政状況等について比較し検討する。
