令和2年度 指導・監査等の実施状況
保険医療機関等取り消し19件
― 対前年度比2件の減少 ―
厚労省は、令和2年度の「保険医療機関等の指導・監査等の実施状況」をまとめた。2年度に保険医療機関、保険薬局の指定取り消し処分を受けたのは、取り消し相当を含めて全国で19件、対前年度比2件減。保険医等の登録取り消しは全国で18人、対前年度比3人増。指導・監査等の実施による返還金額は59億5925万円にのぼった。
日本の医療は、そのほとんどが保険診療である。医療機関や薬局は、厚労省の地方厚生(支)局長に保険医療機関等の申請をして、指定を受ける。医師、歯科医師、薬剤師も、登録の手続きにより、保険医等として保険診療に従事できる。
行政当局は、保険診療が常時適正に実施されているか指導・監査等を行う。極端で悪質な不正の場合には、保険医療機関等や保険医等を取り消す。処分を受けた医療機関等、医師等は処分期間中、保険診療ができない。処分前すでに廃止、登録抹消をしていても、「取り消し相当」として同様の取り扱いを受ける。
令和2年度の保険医療機関等の指導・監査等の実施状況をみると、保険医療機関等と保険医等、合わせて次のとおりとなっている。▽個別指導1797件 ▽新規個別指導2915件 ▽適時調査5件 ▽監査46件。新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止の観点から、指導等の実施の見合わせ等を行っていたため、実施件数が前年度比で大幅に減少している。
監査の結果、取り消し・取り消し相当の処分を受けたのは、全国で保険医療機関等が19件、保険医等が18人だった。監査拒否による保険医療機関等指定取り消し処分(取り消し相当含む)の件数が増加している。また、保険医療機関等取り消し19件のうち、不正発覚のきっかけとなったのは、保険者等からの情報提供によるものが12件で半数以上を占めた。保険者、医療機関従事者や、医療費通知を受けた被保険者からの訴えによる。
診療報酬・調剤報酬請求のうち、詐欺や不法行為にあたるのが不正請求。不正のおもな形態は次のとおり。
▽架空請求=実際に診療していない者に対し、診療したように請求
▽付け増し請求=診療行為の回数・日数、数量、内容等を実際に行ったものより多く請求
▽振替請求=実際に行った診療内容を、保険点数の高い他の診療内容に振り替えて請求
▽二重請求=自費診療を行って患者から費用を受領しているにもかかわらず、保険でも診療報酬を請求
▽その他の請求=医師数、看護師数等が医療法の標準数を満たしていないにもかかわらず、入院基本料を減額せずに請求―など。
指導・監査の結果、不正または不当請求が確認され、返還された金額は、59億5925万円にのぼった。内訳は、指導で28億6594万円、適時調査で26億872万円、監査で4億8459万円となっている。
保険医療機関等の指導・監査の状況
(単位:件)
28年度 | 29年度 | 30年度 | 元年度 | 2年度 | |
---|---|---|---|---|---|
個別指導 | 4,523 | 4,617 | 4,724 | 4,715 | 1,797 |
新規 個別指導 |
6,173 | 6,145 | 5,962 | 5,711 | 2,915 |
適時調査 | 3,363 | 3,643 | 3,636 | 3,544 | 5 |
監査 | 74 | 66 | 52 | 55 | 46 |
取り消し (取り消し 相当) |
27 | 28 | 24 | 21 | 19 |
指導・監査による返還金額
(単位:万円)
指導 | 適時調査 | 監査 | 合計 | 対前年度比 | |
---|---|---|---|---|---|
28年度 | 408,898 | 435,931 | 44,705 | 889,535 | ― |
29年度 | 312,641 | 367,539 | 39,709 | 719,888 | ▲169,647 |
30年度 | 327,869 | 493,272 | 52,699 | 873,840 | 153,952 |
元年度 | 342,498 | 504,652 | 240,205 | 1,087,355 | 213,515 |
2年度 | 286,594 | 260,872 | 48,459 | 595,925 | ▲491,430 |