令和3年度 健康保険組合全国大会
未来のため、皆保険を守るため、全世代で支え合う制度の構築へ

全国大会次第
- 開会あいさつ
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(大会議長)
安田日本興亜健康保険組合
米川孝理事長
- 会長基調演説
- 健保連 宮永俊一会長
- 決議
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(大会企画委員長)
日立健康保険組合
内田好宣常務理事
- 厚生労働大臣への決議の手交
- 厚生労働大臣あいさつ
- 閉会あいさつ
令和3年度健康保険組合全国大会が10月19日(火)14時から、東京・丸の内の東京国際フォーラム・ホールAで開催された。
なお、今年度は、新型コロナウイルスの感染拡大防止を考慮し、会場参加とWEB参加によるハイブリッド形式によるものとなった。
「未来のため、皆保険を守るため、全世代で支え合う制度の構築へ」をテーマに掲げた全国大会は、来場者170人、Zoomによる参加20端末、YouTubeライブ配信視聴1990回(10月20日11時30分現在)。大会議長である安田日本興亜健康保険組合の米川孝理事長による開会あいさつのあと、健保連の宮永俊一会長が基調演説を行った。
基調演説が終わると、大会のスローガン
①国民が安心できる安全で効率的な医療の実現
②現役世代の負担軽減と世代間の公平性確保
③健康寿命の延伸に向けた保健事業のさらなる推進
―を基にした大会決議案を、日立健康保険組合の内田好宣常務理事が力強く朗読。決議を出席者全員の賛同で採択し、その場で濵谷浩樹厚生労働省保険局長に要請。
そして、後藤茂之厚生労働大臣からのビデオメッセージが流された後、大会議長による閉会のあいさつで今年度の全国大会は幕を閉じた。

宮永健保連会長
宮永健保連会長基調演説
今般のコロナ禍により、健保組合の事業執行や運営に大きな影響を受けた。昨年度、2020年度の健保組合全体の財政状況は、新型コロナによる受診控え等により保険給付費が減少し、小康状態にみえるが一時的なものである。また、売上・収益の大幅な減少に見舞われた業種もあり、保険料の納付猶予も含めた大幅な収入減など、非常に深刻な状況が続いている。
昨年末、後期高齢者の窓口負担割合2割の一部導入を含む「全世代型社会保障改革案」が決定され、先の通常国会で関連法が成立した。我々が主張してきた改革が一歩前進したものであるが、今後の拠出金負担の増加を考えると十分ではない。次なる改革は不可欠であり、早急に検討を開始し、実現していくことが求められる。
我々健保組合は、今後も事業主との連携、加入者との距離の近さを生かし、社会の変革にも対応したさらなる取り組みに努め、健康づくりの推進・充実を図ることで、加入者はもとより国民全体の健康寿命の延伸に貢献したいと考える。
少子高齢化による生産年齢人口の減少と、後期高齢者の急増という構造的な課題は容易には解決できない。しかし、大切な国民皆保険制度を持続可能なものとするためには、制度を支える現役世代の過度な負担の軽減等、改革の歩みを止めることは許されない。国民の安心の確保に向けて、皆保険制度の崩壊は何としても避けなければならない。
コロナ禍はまだ続いている。我々の行動も、これまでにない工夫が求められる。知恵を出し合い、我々の主張実現に向けて、健保組合関係者の皆様からの絶大なご支援、ご協力を賜ることをお願いしたい。
決議
我が国は少子高齢化が急速に進展し、生産年齢人口が減少する中、2025年には団塊の世代全員が後期高齢者に達し、医療需要がさらに膨らむ見通しである。加えて、今般の新型コロナウイルスの感染拡大により、非常時における病床逼迫など医療提供体制の脆弱さが露呈され、医療に対する国民の不安がかつてなく高まっている。誰もが安心して医療を受けられる国民皆保険制度を維持することは最優先の課題であり、そのためには、今後も続く現役世代の減少と高齢者の増加、疾病構造や社会情勢の変化などに対応した医療・医療保険制度を構築しなければならない。
こうした中、医療提供体制においては、入院医療の強化をはじめとする地域医療構想の着実な実現はもとより、国民誰もが身近で信頼できる「かかりつけ医」を持つことで外来医療の機能分化・連携を推進し、安全・安心で効率的・効果的な医療を実現すべきである。
一方で、医療保険財政は、高齢者医療への拠出金負担の急増が見込まれる中、コロナ禍の影響も加わり、さらに悪化することが確実である。健康保険組合の義務的経費に占める拠出金割合は令和2年度で平均48%に上り、すでに負担の限界を超えている。このまま拠出金が際限なく増え続け、負担に耐え切れず解散に追い込まれる健康保険組合が相次げば、国民皆保険制度の根幹が揺らぐことになる。
現役世代の負担増に一定の歯止めをかけるためにも、拠出金の負担割合に上限を設けるとともに、後期高齢者のうち、現役並み所得者の給付費にも公費を投入すべきである。また、世代間の給付と負担のアンバランスを是正し、全世代で負担を分かち合う制度へ早急に転換しなければならない。
我々健康保険組合は、国民皆保険制度の中核として、その維持発展に寄与し、また自主自立の保険者として、労使と連携しながら加入者の特性やニーズを踏まえた健康づくり・疾病予防などの保健事業に取り組んできた。今後も、特定健診・保健指導やデータヘルス、コラボヘルスなどを一層強力に展開するとともに、加入者の自発的な予防・健康づくりを促すヘルスリテラシーの向上や、働き方の多様化などに対応した取り組みにも力を入れ、国民の「健康寿命」の延伸に貢献していきたい。
健康保険組合が国民の安心の基盤である国民皆保険制度を支え続けるために、我々は組織の総意をもってここに決意を表明する。
一.国民が安心できる安全で効率的な医療の実現
一.現役世代の負担軽減と世代間の公平性確保
一.健康寿命の延伸に向けた保健事業のさらなる推進
令和3年10月19日
令和3年度健康保険組合全国大会
未来のため、皆保険を守るため、全世代で支え合う制度の構築へ


後藤茂之厚生労働大臣からビデオメッセージ
来年は、健康保険法公布から100周年を迎える記念すべき年となる。長きにわたって世界に誇る我が国の公的医療保険制度が維持・発展してきたのは、その中核を担う健康保険組合および健保連による格別の尽力の賜物である。
健保組合においては、新型コロナウイルスの感染拡大が続くなかでも、保険者機能を発揮し、事業主と連携して加入者の特性やニーズに応じた健康づくりなど、保健事業に取り組んでいただいた。特に、新型コロナワクチンの職域接種については、積極的に実施していただいたこと、大変感謝している。
人生100年時代の安心の基盤は「健康」であると考える。国民一人ひとりが、より長く健康に過ごすためには、社会全体で予防・健康づくりを強化する必要がある。このため、本大会の決議やスローガンに掲げられた健康寿命の延伸といった、健保組合の先駆的な取り組みについて、大いに期待している。
また、「支える側」「支えられる側」のバランスを着実に是正し、社会保障制度の持続可能性を高めることも重要である。先般の通常国会において、一定所得以上の75歳以上の高齢者について、窓口負担割合を2割としたほか、傷病手当金の支給期間の見直しを行った。
さらに、10月20日から、オンライン資格確認が本格運用開始となる。データヘルス改革の基盤となり、その導入にあたり、健保組合の皆様の努力に対して敬意を表する。引き続き、対象となる医療機関等の拡大を着実に進めてまいりたい。
最後に、健保組合および健保連の今後益々のご発展と、皆様のご健勝をお祈り申し上げ、あいさつとしたい。
スローガン
○国民が安心できる安全で効率的な医療の実現
今般の新型コロナウイルスの感染拡大により、急性期病床の機能と人的資源の散在が顕在化した。今後の人口動態や高齢化による疾病構造の変化、そして新興感染症にも対応していくためには、将来の医療需要を見据えた入院医療体制を整備すべきである。また、国民が身近で信頼できる「かかりつけ医」を持ち、外来医療の機能分化・連携を推進することで、安全・安心で効率的・効果的な医療を実現する必要がある。
○現役世代の負担軽減と世代間の公平性確保
現役世代の負担はもはや限界に達しており、高齢者医療への拠出金の割合に上限を設けるなど、その負担に歯止めをかける必要がある。今年6月に成立した「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」において、一定所得以上の後期高齢者の窓口負担を2割とする内容が含まれているが、現役世代の負担軽減策としてはいまだ不十分である。
後期高齢者のうち、現役並み所得者の給付費にも、ほかの後期高齢者と同様に公費を投入すべきである。また、現役並み所得者の対象を拡大するとともに、後期高齢者が負担する保険料の割合を見直し、世代間の給付と負担のアンバランスを是正すべきである。
○健康寿命の延伸に向けた保健事業のさらなる推進
国の目標である「健康寿命」の延伸に向け、我々健康保険組合は特定健診・保健指導やデータヘルス、コラボヘルスなど、これまで果たしてきた価値・役割を再確認し、こうした保健事業を一層推進するとともに、働き方の多様化や加入者のヘルスリテラシーの向上などに対応した取り組みにも力を入れる。また、こうした価値を支える健康保険組合の特性(自主自立、民主的な運営など)を生かし、従来のデータ活用の取り組みを深化させ、事業主と連携しながら健康づくり・疾病予防や医療費の適正化に向けて先駆的に取り組む。
国会議員へ大会決議の実現を強く要請
梅村 聡 参・維新(比例)
大阪連合会 川隅 専務理事
大阪連合会 長井 参与
矢田 わか子 参・国民民主(比例)
大阪連合会 川隅 専務理事
大阪連合会 長井 参与