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広報誌「かけはし」

時評

大きな自分を活かす

8月6日に開催された社会保障審議会医療保険部会・柔道整復療養費検討専門委員会で、柔道整復療養費の適正化策が議論された。厚生労働省から、明細書の発行義務化、不適切な患者の償還払い、療養費を施術管理者に確実に支払うための仕組みの3点について対応方針が示された。

あはき療養費については、令和3年7月から長期・頻回患者に対する受領委任払いを償還払いに変更できる仕組みが始まっている。今回、柔道整復療養費についても、ルールに従わない不適切な患者を償還払いに変更できる仕組みについて議論されている。

不適切な患者の償還払いについては、不正が「明らか」な患者に加えて、不正の「疑い」が強い患者も対象とする。真に不適切な患者に対象を絞る観点から、「償還払いとする範囲」「償還払いとするプロセス」についてさらに検討が進められ、年明けからの実施を目指すこととなった。不正が「疑われる」患者の例として、

①自家施術の患者

②複数の施術所において同部位の施術を重複して受けている患者

③保険者が繰り返し患者照会しても回答しない患者  

④施術が非常に長期にわたりかつ頻度が高い患者  

――が例示されている。

この制度変更が適正な保険請求の一助になることを期待する。一方で、健康保険加入者のほとんどが節度をもってルールを守っているなか、一部で前述の例示のような不適切な行為が改められず、ルールで縛られないと適切な行動が取れないことを非常に残念に思う。

今後の検討のなかで、オンライン請求やオンライン資格確認も活用して、この仕組みを保険者、被保険者、接骨院・整骨院など関係者にとってプラクティカル(現実的)でサステナブル(継続的)なものに整えていただきたい。そして、保険給付に有効で効率的な仕組みが構築されることを期待する。保険者としては、改善された仕組みを最大限に活用して、不適正な運用の機会をなくしていくことで制度改善に応えていきたい。

一方、適正化を制度だけで達成するには限界がある。その土台となる意識、すなわち関係者が自律して制度を守る意識が大切だ。また、保険者は事業主ともコラボして、そのような意識の啓発を続けることも大切だ。最終的には、たとえ新ルールがなくとも適切に運用されるような、成熟した社会になることを願う。健康保険組合は「共助」の精神を持つ。「共助」を維持するにはからかさ連判状のごとく、一致団結して平等に責任を負うという精神的な土台が大切だと思う。小さな自分を殺すことによって、大きな自分を活かすことを考える人々が集まる集団であることがとても大切である。

私は学生の頃にクラブ活動で負傷することもあったが、接骨院に助けられて早期に復帰でき、無事に続けることができた。健康保険の適用範囲に限度はあるが、柔道整復療養には医療とは異なる専門性がある。国民皆保険も達成から60年を迎え、社会情勢の変化から未来の国民皆保険のあり方が問われる時代になっている。柔道整復もその専門性を活かして、社会保障・働き方改革の主なテーマのひとつである「健康寿命の延伸」に不可分な存在として、大きな役割を担われることを願う。

(D・K)