安藤会長あいさつ(要旨)

日本経済は、内需主導で穏やかに回復しているとの見方があるものの、いぜんとしてデフレから脱却していない。また、経済成長戦略の具体的実施が一進一退の状況にある。加えて、不安定な政治状況が先行きの不安感を増幅させており、さまざまな経済活動の足を引っ張っている感さえある。いま一番求められていることは、安定した政治と経済社会の活性化である。
社会保障と税の一体改革関連8法案は、6月26日に衆議院特別委員会で可決された後、本会議に緊急上程され、賛成多数で可決された。現在、参議院での審議が始まっているが、政権与党のなかからさえ反対者が続出するというゴタゴタで、法案の中身や審議より政局の行方に多くの関心が集まるという残念な状況になっている。 
法案成立後まさに正念場
この関連法案のなかで、必要な社会保障給付を賄う当面の財源を確保すること、また、社会保障制度改革国民会議を設置して参議院での可決後1年以内に議論されることについては、大いに期待をし、一定の評価をすべきと考えている。
しかし、法案自体の内容をみると、将来の社会保障のあり方や現行制度の問題点の解決策、さらには社会保障費用の抑制策など重要な点が示されていない。医療保険制度の将来にわたる維持・発展を図るために「国民会議」で大いに議論して、早急に結論を導いていただきたい。われわれが長年強く主張している医療保険制度の将来にわたる持続可能なグランドデザインを、国民会議でしっかりと描ききってもらいたいと考えている。
とくに、高齢者医療制度については、「国民会議において検討し結論を得ること」と、法案に明記されている。したがって、その行方が将来の医療保険制度の生死を分けるといっても過言ではない。議論の行方を注視して、そのときどきにおいて適切な行動をとっていく必要がある。
先日の健保連本部総会で、健保連の平井克彦会長が「まさにこの8月以降の1年間が正念場」と強調されているが、まったく同感である。議論をみて、時宜を逸せずに、国や政界にわれわれの主張実現を要求していく。また、健保組合員、経済界への協力要請、さらに、国民にわれわれの主張をアピールしていくことが重要である。
こうした活動を通じて、本来の健保組合の存在価値である「人々の健康と命を守る」ということを、加入者の皆様に肌で感じていただき、安心感をもっていただけることが大切である。このようなことにより、健保組合の運営に携わっているわれわれの仕事がかけがえのないものである、という充実感に結びつけていってもらいたいと思う。
厳しい環境にあるが、力を合わせて健保組合の事業運営の充実発展に努力していきたい。 
組合財政悪化の打開に公費負担拡充が急務
身近な問題として、平成23年度の大阪連合会の178組合の決算見込みをみると、経常収支で769億円という巨額の赤字であった。赤字組合は144組合で全体の81%となっている。
また、この数年でほとんどすべての組合が保険料率を引き上げ、24年度予算では86組合にものぼった。
保険料収入は、保険料率の引き上げ等により、何とか一定水準を確保しているが、法定給付費の増加と拠出金の大幅な増加が健保財政を圧迫し続けており、限界に達している。
こうした状況を打開するためには、公費負担の拡充が待ったなしの状況にある。健保連としては、国や政党に強く要請しているところである。あらためて皆様のご理解ご協力をお願いしたい。 |