広報誌「かけはし」

■2009年8月 No.455
加藤会長あいさつ(要旨)

 まず申し上げたい第一点は、健保が深刻な財政危機にあることです。これはご承知のように、高齢者医療制度の支援金・納付金が増えたことと、景気の悪化による保険料収入の減少によるものです。ただし、この背景には、年々1兆円ずつ増えている医療費の高騰があることはいうまでもありません。
 平成21年度の予算でみても全体で6152億円の赤字で、92%の健保組合が赤字となっており、大阪でも805億円の赤字で、89%の健保組合が赤字となっています。
 平成10年以降、大阪で解散した組合は21、支部を廃止した組合は48、新たにできた組合は3組合となっており、組合数は平成7年の236をピークにいまでは182組合に減っています。
 どうすればこの財政危機を打開できるのでしょうか。
 そのためには、これまでも繰り返し我々が主張してきたように、前期高齢者医療制度に公費を投入することによって、負担を軽減してもらうことです。そのためにはその財源を確保する税制改正が不可欠です。
 高齢者医療制度をめぐっては各方面で検討が進められていますが、与党のプロジェクトチームが「高齢者医療制度の支援金・納付金の負担増によって、健保組合の財政は悪化しており緊急支援が必要だ」と指摘したことは評価できます。これも我々の窮状を訴えてきた要請活動の成果といえます。
 この指摘のように、制度改正には時間がかかりますので、その間の緊急支援策を強く要求することが必要ですが、我々仲間でお互いに助け合うことはできないでしょうか。
 ご承知のように、健保連には交付金交付事業があって、財政窮迫組合を支援する制度があります。
 いま、健保連本部では、この規模を拡大して、連帯の輪を広げることができないか、成案を求めて検討を進めています。いずれ皆様にお諮りすることになると思います。
 第二点は、医療費の適正化によって総額を抑制する手綱を決して緩めてはならないということです。
 ご承知のように、2006年骨太方針で決まった、2007年から2011年まで社会保障費の自然増分を年2200億円ずつ減らすという案は実質棚上げされました。この方針から、我々を苦しめた、健保組合による旧政管健保への国庫負担肩代わりのような奇策が出てきたわけであり、これが棚上げされたことは評価できます。ただ、選挙前の大衆迎合主義とでもいうのでしょうか、景気対策に名を借りたばら撒きの風潮の中で決まったことを私は懸念します。
 高齢化が進むなかで医療費は年々高騰しています。確かに医療現場ではさまざまな問題が発生していますが、合理化、効率化と資源の適正配分の努力をいささかでも怠ってはならないと思います。
 日本の高齢者医療費を若年者の医療費と比較すると、OECD平均に比べて増え方が著しいといわれています。また過剰受診というのでしょうか、人口1人当たりの受診件数は、やはり、OECD平均の倍以上になっています。その結果、本当に必要な急性期病院の医師の不足が深刻化しているともいわれています。
 来年は2年ごとに行われる診療報酬の改定の年です。ムダを排除すること、IT化を進めること、一番問題の急性期入院医療、産科・小児科・救急医療に資源を重点配分することを強く要求する必要があると思います。さもないと「医療崩壊」以前に我々の財布が崩壊することになりかねません。
 第三点は、こういった厳しい情勢下でも我々の保険者機能を高める努力が必要であるということです。昨年から始まった特定健診・特定保健指導は当初かなり混乱がありましたが、皆様の努力によって、徐々に軌道に乗りつつあります。いずれ始まるレセプトのオンライン化で集まってくるデータとの突合をはかることにより、組合員の健康増進をいま以上に推進することができれば、まさにこれこそ保険者機能の発揮です。
 支払基金の機関誌「月刊基金」6月号に、愛知のデンソー健保が蓄積した健診データを解析して医療費の適正化に取り組んでおられる事例が紹介されています。参考になるのではないでしょうか。
 さて、いよいよ総選挙は8月30日に決まりました。
 民主党の優勢が伝えられていますが、各党のマニフェストをよく見て、財源の裏打ちのない、耳障りのよい無責任な提案に惑わされないことが必要だと思います。
 7月17日に健保連本部の総会があり、来賓として厚生労働省の江利川事務次官(当時)が挨拶をされ、そのなかで、社会保障制度は政争の具になってはいけない、超党派の仕組みで持続可能な安心社会の構築をはからなくてはならない、と話されました。
 この指摘は的を射ていると思いますし、年金記録問題や高齢者医療制度問題など政治に振り回された厚生労働省の悲哀のようなものが滲み出ていて印象深いコメントでした。
 どこが政権をとっても、じっくり腰を据えて、目先にとらわれず、国の将来のためにはあえて国民に苦い薬を呑むことを説得できる政権であって欲しいと思います。
 本日の総会の議題は、平成20年度大阪連合会の事業報告と収支決算です。十分ご審議いただきますようお願い申し上げますとともに、会員組合の皆様には、引き続き本会事業にご支援ご協力賜りますようお願いいたしまして、私の挨拶とさせていただきます。


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