広報誌「かけはし」

■2009年8月 No.455

事 業 報 告 の 概 要

1.健康保険組合をめぐる情勢
 平成20年度健保連の事業運営基本方針については、新たな高齢者医療制度の施行、政管健保の公法人化(協会けんぽ)等、わが国の医療保険制度の枠組みが大きく変化する節目の年であり、健保組合の財政は、新たな高齢者医療制度に伴う負担増に加え、特定健診・特定保健指導という新たな事業支出等により厳しい財政運営を余儀なくされた。また、政管健保への国庫負担の肩代わりという安易な財政調整論、ひいては医療保険制度の一元化に繋がるような構想には引き続き厳しく対峙していかねばならないとして、@医療・医療保険制度等への対応、A特定健診・特定保健指導の円滑実施への対応、BIT化等に向けた諸活動への対応、C診療報酬体系の簡素化、合理化と医療費の適正化など10項目の重点事項をメリハリをつけて各事業の遂行に努めていくことにした。

 (1) 高齢者医療制度など20年度改革がスタート

 18年の医療改革関連法に基づき、新たな高齢者医療制度の創設や保険者の特定健診・特定保健指導の義務化などの改革が4月1日に施行された。医療・医療保険制度の抜本的改革の中核として、医療費適正化を実現するための手段とされるが、改革内容の変更や準備不足に加え、予測を大きく上回る健保組合の負担増など、多くの課題を抱えてのスタートとなった。

 (2) 平井克彦氏が会長に就任

 健保連は4月15日開催の第176回臨時総会で、第11代会長に平井克彦氏を選任した。平井会長は、保険者機能の発揮を通じた健保組合制度の維持発展に取り組む決意を表明するとともに、納付金等の過大な負担を懸念、組合財政を圧迫させる負担増の施策に強く反対していく姿勢を示した。

 (3) 平成20年度健保組合予算は過去最大の赤字

 健保連は4月21日、平成20年度健保組合予算の早期集計を発表した。新たな高齢者医療制度創設に伴う負担増を要因に、経常収支は過去最大の6322億円の赤字を予測。後期高齢者支援金や前期高齢者納付金など拠出金額は前年度に比べて5094億円と大幅に増加し、約9割の1334組合が赤字財政という異常事態となった。

 (4) 後期高齢者医療制度で混乱

 被保険者証の未着や保険料に対する不満が政治の場で大きく取りあげられ、野党は制度廃止を主張、与党からも批判の声があがり、政府は混乱解消のための諸施策に取り組んだ。その後、与党プロジェクトチームでは、保険料軽減措置や保険料徴収の見直しなど、制度の骨格を維持したまま運用面の改善に取り組んだ。

 (5) 社会保障予算等に関する健保連の考え方

 健保連は6月12日の常任理事会で、財政調整阻止、前期高齢者医療制度への公費投入など当面の活動方針を決め、次のとおり展開していくこととした。
@ 社会保障予算の削減は社会保障の機能と国民生活の安定を損なう。
A 制度間の財政調整には断固反対。
B 社会保障の財源は、国保組合への国庫補助の見直し、政管健保の経営努力などのほか、医療費の審査、支払いの適正化や消費税・タバコ税等の税制改正で確保。
C 高齢者にかかる支援金・納付金の激変緩和措置の継続・拡大と前期高齢者に対する公費の投入による健保組合運営の安定化。

 (6) 社会保障の安定財源確保を提案

 7月18日の健保連定時総会において、平井会長は、後期高齢者医療制度の基本的理念を評価したうえで、65歳以上の高齢者を対象に制度を構築すべきとする健保連の主張を引き続き展開する考えを表明するとともに、社会保障制度を支える安定財源の確保に向けて、税制改革を視野に入れたグランドデザインの確立を提案した。

 (7) 平成19年度健保組合決算見込

 平成19年度の健保組合の経常収支差引額は、599億円の黒字決算となったが、黒字額は前年度に比べ1773億円減少した。平成14年の健保法改正等の効果がほぼ消滅し、平成15年度以降小康状態が続いた健保財政は著しく悪化した。

 (8) 社会保障審議会・医療保険部会で健保組合の財政をテーマに議論

 9月12日、社会保障審議会・医療保険部会は、健保組合の最近の財政状況をテーマに議論した。
 厚労省は、高齢者医療制度の創設に伴う支援金等のうち、特に財政調整方式の前期高齢者納付金の負担増が影響したと説明。健保連の対馬専務理事は、若年者に過大な負担を課す「前期」の問題が極めて深刻だと強調、早急な改善策を強く要望した。

 (9) 麻生内閣発足、舛添厚労相は再任

 9月24日、麻生内閣が発足し、所信表明演説で着実な経済成長や暮らしの安心を喫緊の課題とした。舛添厚労相は、後期高齢者医療制度の見直しについて約1年をかけて結論をまとめ、国民不満の解消を最重視するとした。

 (10) 平成20年度健保組合全国大会を開催

 11月17日に開催された健保組合全国大会では「健保組合存亡の危機突破総決起大会」を副呼称として、@前期高齢者医療制度に対する公費投入の実現、A制度間の財政調整・一元化構想の断固阻止、B税・財政改革による安定した社会保障財源の確保、の3項目を全健保組合の総意として決議した。

 (11) 財政調整・一元化阻止へ理論構築

 健保連は12月5日、医療保険制度の「財政調整・一元化に対する健保連の考え方」について発表した。医療保険は加入者の連帯感にもとづき、自主的・民主的な運営を重視した多元的な制度体系が望ましく、健保組合や皆保険体制の破綻につながる財政調整は行うべきではないと結論づけた。
 また、@健保組合方式の推進、A 65歳以上を対象に統合する高齢者医療制度、B国保・協会けんぽの改革、C消費税やタバコ税の引き上げ等による社会保障の安定財源の確保など、健保連が主張する医療保険制度の改革の方向性も改めて提起した。

 (12) 平成21年度の健保組合予算編成方針

 厚労省は12月25日、平成21年度の健保組合予算編成方針を通知した。重点事項の1つである保険給付適正化対策は、医療費通知、レセプトの点検業務、傷病手当金の適正支給、被保険者証の検認等の従来のものに新たに「後発医薬品の使用促進」を追加し、積極的に取り組むよう指示した。

 (13) 平成21年度健保連事業計画

 健保連は2月20日に総会を開催し、予算計画等を決定した。事業計画は健保連が取り組む重要課題を医療保険制度、健保組合財政、特定健診・特定保健指導、診療報酬体系・医療提供体制、IT化の5項目として、「制度間の財政調整・一元化」の阻止や「健保組合の解散問題」などの難局に対し、健保組合・健保連が一体となって乗り越えていく活動の展開を「基本方針」に掲げた。この中で医療保険制度では、前期高齢者医療制度への公費投入や65歳以上を対象とする高齢者医療制度の実施を主張するとともに、財政調整・一元化阻止活動を展開する。また、健保組合財政では、平成21年度も高齢者医療費の伸びは必至であり、健保財政は極めて厳しい状況にあることを訴え、消費税・タバコ税の引き上げなどによる安定した社会保障財源の確保を強く要請していくこととした。さらに、厳しい健保組合運営を踏まえてセーフティネットを強化し、解散組合を極力生じさせないことを目指すこととしている。

  (14) 自民党医療委員会で前期高齢者医療制度への公費投入を要望

 健保連は3月4日の自民党社会保障制度調査会医療委員会で、高齢者医療制度への納付金などの過重な負担により「組合財政は限界に達している」として、「負担方法の見直し」を強く要望。当面は前期高齢者医療制度に公費を投入し、これを前提に保険者の能力に応じた負担に見直すよう、健保組合の窮状に対して理解を求めた。また、3月24日には公明党の医療制度委員会でも健保連として同趣旨の説明を行い、厳しい健保組合財政に対する理解を求めた。その結果、与党プロジェクトチームの高齢者医療制度の見直し基本方針に「健保組合等の財政支援の拡充」として健保連の意見が反映されることとなった。

2.大阪連合会の事業活動概要
 大阪連合会では、理事会や各委員会で時宜に応じた活発な論議を展開したが、特に政管健保への「国庫負担肩代わり案」については、関係各方面に理解と支援を強く要請するなど、全健保組合が一丸となって取り組んだ結果、12月25日に閉会した臨時国会では審議未了・廃案となった。また、20年4月にスタートした特定健診・特定保健指導については、健診体制や事務処理システムの整備が不十分ななか、講習会などを開催し、円滑な事業運営に資するための事業を実施した。

 (1) 役員改選

 4月1日大阪連合会では、改選された新理事による第1回理事会を開催し、会長に加藤幹雄氏を選出、副会長に松下電器・兼松連合の両健保組合、専務理事に置田榮克氏を選出した。併せて、本部役員組合および関係団体委員の推薦と顧問の委嘱が承認された。

 (2) 政管健保への「国庫負担肩代わり案」の恒久化に断固反対など

 ―地元国会議員へ要請活動―
 理事組合を中心に8月9日から8月30日にかけて13名の国会議員を地元事務所に訪ね、前期高齢者医療制度への公費投入と、政管健保への「国庫負担肩代わり案」の恒久化に断固反対の趣旨を説明し、協力を強く要請した。また11月17日の健保組合全国大会終了後は、11名の国会議員を議員会館および地元事務所に訪問して、3項目の大会決議の実現へ理解と支援を求める要請活動を実施した。

 (3) 大阪府保険者協議会における集合契約の推進活動

 平成20年度の特定健診・特定保健指導の集合契約については、大阪連合会が代表保険者として大阪府医師会との折衝にあたり、紆余曲折はあったものの最終的には大阪府医師会をはじめ6カ所の健診機関と締結することができた。

 (4) 広報活動

 機関誌「かけはし」および「ホームページ」を通じ、緊迫する健康保険組合をめぐる情勢および健保連の考え方や要請活動を掲載するとともに、大阪連合会の主要な事業活動の広報に努めたほか、会員組合の広報活動を支援するための広報研究会を開催した。

 (5) 組合業務支援活動

 健保組合役職員の資質向上と連帯感の醸成に有効な個人情報保護講習会、初任者実務講習会、組合担当者実務講習会、パソコン研修会、事務長研修会等を開催した。

 (6) 医療費適正化対策活動

 改定診療報酬点数説明会、歯科レセプト点検事務研修会、第三者行為に係る求償事務研修会、柔道整復・はり・きゅう・マッサージ療養費適正化講習会やレセプト相談・法律相談等の諸事業を実施して医療費適正化を図り、会員組合の財政健全化に努めた。また、支払基金に対して、事務連絡協議会を通じて審査など問題点の解決を要請した。

 (7) 健康開発共同事業推進活動

 保険者に義務づけられた特定健診・特定保健指導に関連して、メタボリックシンドロームに着目した健康セミナーを実施するとともに、会員組合のニーズを踏まえた健康教室や心の健康講座などを開催したほか、契約保養所・プール施設の利用促進・各種イベントの後援や協賛等、多方面からの推進を図った。
 また、保健師活動では、健保組合における特定保健指導を支援するとともに、保健師連絡協議会での保健活動を支援した。

 (8) 総合組合活動

 総合組合の実態を調査・研究し、有効活用を図った。
           
   
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