心の健康講座
8月5日、健康教室を開催。大阪大学大学院 医学系研究科 感染制御学講座 教授
最新の感染症トレンドと職場・家庭でできる対策

忽那 賢志 氏
感染症は、昔から人類とともに存在してきました。ペストや天然痘の流行は社会に大きな影響を与え、現代に至るまで新たな感染症が繰り返し登場しています。最近の例では、新型コロナウイルス感染症が世界中に広がり、私たちの生活や働き方を一変させました。医学の進歩によりワクチンや治療薬が開発され、重症化率や死亡率は大幅に下がりましたが、高齢者を中心にリスクは依然として残っています。
また、インフルエンザやノロウイルス、溶連菌感染症、手足口病、百日咳、マイコプラズマ肺炎など、日常生活の中で身近に流行する感染症も数多くあります。これらは子どもから大人まで幅広い世代に影響を及ぼし、ときには重症化することもあります。特に高齢者や基礎疾患のある方、小さな子どもでは注意が必要です。感染症は「人から人へうつる」という特徴をもち、接触感染、飛沫感染、空気感染などさまざまな経路で広がります。したがって、職場や家庭でできる基本的な対策がとても重要です。具体的には、石けんを使った丁寧な手洗い、アルコールによる手指消毒、マスクの着用、咳エチケットの実践などが挙げられます。トイレの使用後には便座のふたを閉めて流す、調理器具はしっかり洗浄・加熱するなど、身近な工夫も大切です。

さらに、感染症を防ぐうえでワクチンは大きな役割を果たします。定期接種として子どもが受けるワクチンだけでなく、高齢者に推奨されるインフルエンザや新型コロナワクチンも重症化を防ぐために重要です。感染症は時代や社会の変化とともに姿を変えて現れますが、私たち一人ひとりの基本的な習慣と社会全体での備えが、流行を防ぎ健康を守る力になります。
このレクチャーでは、感染症の歴史から最新の動向までを振り返りつつ、私たちが日常生活で実践できる対策を紹介しました。体調が悪いときは無理をせず休む、手洗いや咳エチケットを続けるといった当たり前の行動が、次の感染症の拡大を防ぐ鍵となります。今後も新しい感染症が現れる可能性はありますが、基本を大切にし、社会全体で支え合いながら備えていくことが求められています。


