時評
保険者機能の向上
昨年の12月17日、参議院本会議で可決、成立した令和6年度補正予算において、「医療DXを活用した保健事業の取組等に対する財政支援」が措置された。15億円と計上されたこの補助金は、7年度予算への繰り越しが想定されており、ICTを活用した保健事業が補助対象となる。また、6年度にも実施されている女性の健康づくり、出産や子育て支援のための保健事業も、周知広報事業を除いて補助対象になる予定である。
女性の健康や出産、子育て支援については、事業主とのコラボヘルスなど、健保組合も力を入れ始めている事業であるため、引き続いて補助対象になったことは大きい。ただし、比較的取り組みが容易と思われる周知広報事業が基本的に補助対象外になることには注意が必要である。なお、補助割合の設定については、現行基準を参考に、事業内容に応じて調整が行われる。
補助対象になり得る事業として、今年度申請があったものを例として示すと、
①ICTを活用した医師への医療相談(コラボヘルス):チャット相談事業による被保険者の利便性向上、夜間・休日等の子どもの発熱等への医師への相談窓口の設置
②レセプト分析に基づくセルフメディケーション啓発:セルフメディケーション啓発事業(OTC医薬品関連)を通した上手な医療のかかり方の普及啓発、および医療費の適正化
③女性・子どもの健康相談(電話・オンライン):加入者の健康に対する不安の解消
④婦人科検診未受診者へ受診勧奨:乳がん・子宮がん検診受診率向上、早期発見・早期治療を目指す
その他、女性特有の健康課題に対するオンライン健康教育、女性のやせ・更年期等に関する健康リスク理解促進セミナーの実施などが挙げられる。
少子高齢化が進むなか、今後、ますます保険者としての健保組合の役割は大きくなる。保険者機能の向上に向けて、この機会に医療DXや女性の健康や出産、子育て支援などを充実させることで、健保組合の存在意義をさらにアピールしていきたい。
(M・S)