令和6年度 健康保険組合全国大会を開催
現役世代を守るための改革断行を!
―2025年を乗り越え、未来につながる皆保険制度に―

全国大会次第
- 開会の辞
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(大会議長)
北海道農業団体健康保険組合
宇野克彦理事長
- 会長基調演説
- 健保連 宮永俊一会長
- 決議
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(企画委員会委員)
東芝健康保険組合
二宮史明常務理事
- 厚生労働大臣への決議の手交
- 厚生労働大臣あいさつ
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福岡資麿厚生労働大臣
- 特別企画
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一般社団法人 未来研究所臥龍
代表理事 兼
兵庫県立大学大学院 特任教授
香取照幸氏
- 閉会の辞
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(企画委員会委員長)
日本製鉄健康保険組合
栗坂禎一常務理事
令和6年度健康保険組合全国大会が10月24日(木)12時30分から、東京・丸の内の東京国際フォーラム・ホールB7で開催された。
今年度は、従来のホールAではなく、規模の小さい会場での開催となり、来場参加者数の制限を余儀なくされた。しかしながら、WEBでの参加も可能であったため、多くの方にご参加いただいた。
「現役世代を守るための改革断行を!―2025年を乗り越え、未来につながる皆保険制度に―」をテーマに掲げた今年の大会は、全国から約1200人の方にご出席いただき、WEBでも2000人以上の方にご視聴いただいた。大会議長である北海道連合会会長である北海道農業団体健康保険組合の宇野克彦理事長による開会あいさつのあと、健保連の宮永俊一会長が基調演説を行った。
基調演説が終わると、大会のスローガン
①皆保険を全世代で支える持続可能な制度の実現
②医療の効率化に資する医療DXの推進
③安全・安心で効果的・効率的な医療提供体制の構築
④健康寿命の延伸につなげる健保組合の役割強化
―を基にした大会決議案を、本大会の所管委員会である企画委員会委員の東芝健康保険組合 二宮史明常務理事が力強く朗読。決議を出席者全員の賛同で採択し、その場でご臨席いただいていた福岡資麿厚生労働大臣に要請した。
そして、福岡厚生労働大臣があいさつを行った。
大会の後半では特別企画として、「安心・安全な医療と全世代型社会保障制度への改革~2040年を見据えた医療・介護提供体制改革~」と題して、一般社団法人未来研究所 臥龍 代表理事・兵庫県立大学大学院社会科学研究科特任教授の香取照幸氏による講演が行われた。
講演終了後、企画委員会委員長の日本製鉄健康保険組合 栗坂禎一常務理事の閉会あいさつにより、本大会は幕を閉じた。

宮永俊一
健保連会長
宮永健保連会長基調演説
健保組合、そして医療・社会保障を取り巻く環境は、年々、厳しさを増している。少子化の影響はとりわけ顕著で、昨年の出生数は72.7万人、合計特殊出生率は1.20と、いずれも過去最低となった。今年は70万人を下回る可能性も指摘され、少子化と人口減少に歯止めがかかる兆しが見えない。
一方、いわゆる「団塊の世代」がすべて後期高齢者入りし、高齢者医療費のさらなる増大と、現役世代数の減少が重なる「2025年問題」への対応は、焦眉の急であることは間違いない。
先ごろ公表した令和5年度の健保組合全体の決算見込みでは、経常収支は1367億円の赤字となった。赤字組合は全体の5割を超える726組合にのぼる。保険料収入は、昨年の賃上げの影響から2.7%増加したが、保険給付費は5.3%、高齢者医療への拠出金は7.3%と大きく増加した。特に、後期高齢者支援金は10%近く増加している。高齢化のピークを迎える2040年ごろにかけ、この傾向はさらに強まるとみられ、高齢者医療制度の見直しや高額医療費への対応が必要である。拠出金は健保組合の支出のおよそ半分を占め、我々の財政を圧迫する大きな要因となっている。負担に耐え切れず、解散に追い込まれる事態は何としても避けねばならない。
政府は、これまでも全ての世代が負担能力に応じて支え合う「全世代型社会保障制度の構築」に向けた改革を進めてきたが、まだまだ十分ではない。医療体制やサービス面においても課題が残されている。AIやデジタルツールを駆使して展開している他国のプラットフォームや、他の産業分野の知見等を参考にしつつ、医療・介護分野のDXを一層、前に進めていく必要がある。
国民の安心の礎である国民皆保険制度は、世界に類を見ない素晴らしい制度である。未来につなげ、将来世代に確実に引き継いでいかなければならない。そのためにも、制度の支え手である現役世代の負担を軽減し、全世代が納得して負担し合える、持続可能な制度に向けた改革の断行を訴えたい。

こうした強い決意のもと、本日の全国大会では4つのスローガンを掲げている。
1つ目は「皆保険を全世代で支える持続可能な制度の実現」。世界に誇る国民皆保険制度を持続させるためにも、今こそ「現役世代の負担軽減」「世代間の給付と負担のアンバランス解消」などの課題に道筋をつけ、全世代で支える仕組みに改革しなければならない。
2つ目は「医療の効率化に資する医療DXの推進」。医療DXは、国民がより良質かつ効率的なサービスを埋められる体制を構築するものであり、持続可能な社会保障制度を築くためには不可欠な施策である。12月2日には、いよいよマイナ保険証を基本とする仕組みに移行する。国民がそのメリットを実感していくため、国が責任を持って取り組みを進めていく必要がある。
3つ目は「安全・安心で効果的・効率的な医療提供体制の構築」。医療ニーズの質・量の変化、医療・介護従事者の人材不足などを背景に、国民一人ひとりが必要なときに必要な医療を受けられる医療提供体制をいかに構築し、維持していくかが極めて重要である。
4つ目は「健康寿命の延伸につなげる健保組合の役割強化」。今年度からは、第3次の「健康日本21」が始まり、健康への取り組みは新たなステージに入る。健保組合としても、医療DXを活用しながら、これまで以上に保険者としての役割を強化し、先駆的な取り組みを実践していく。
長い歴史を有する我が国の社会保障制度は、その時代に合った形に見直され、国民の暮らしを支え続けてきた。急速に変化するこの令和においても、より良い制度の実現に向けた不断の努力は、今を生きる我々の責務である。
我々の主張を浸透させ、改革の実現につなげるために、国政に様々な要請を行う必要があり、私も先頭に立って取り組んでいく。引き続き、皆様の絶大なご支援・ご協力を賜りますことをお願い申し上げる。

福岡資麿
厚生労働大臣
福岡資麿厚生労働大臣あいさつ
本日お集まりの健康保険組合および健康保険組合連合会の皆さんにおかれては、平素より健康保険事業の円滑な運営を通じて、医療保険制度の健全な発展に格別のご尽力をいただき、厚くお礼申し上げる。
本日の大会では、「現役世代を守るための改革断行を!」をテーマとし、「皆保険を全世代で支える持続可能な制度の実現」、「医療の効率化に資する医療DXの推進」といったスローガンが掲げられている。私は、これまで自由民主党の厚生労働部会長を2度経験するなど、ライフワークとして厚生労働行政に取り組んできたが、今大会のスローガンはいずれも大変重要であり、誠に時宜にかなったものであると実感している。
今後も高齢者人口が増加し、現役世代は大きく減少していくことが見込まれるなかで、現役世代の負担軽減を図りつつ、世界に冠たるわが国の皆保険制度を未来に引き継いでいかなければならない。
先日公表された健保組合の令和5年度決算においても、全体の5割を超える組合で赤字となるなど、その財政状況は大変厳しいものとなっている。厚労省としても引き続き組合の財政状況を注視しつつ、現役世代の負担軽減を含め負担能力に応じて全世代で増加する医療費を公平に支え合う、「全世代型社会保障制度」の構築に向けて全力で取り組んでいく。

司会を行った
大阪連合会の
北吉舞
また、高齢化と人口減少が進む社会にあり、限りある資源を有効に活用しながら、質の高い医療を実現していくためには、医療DXを通じたサービスの効率化、質の向上が不可欠だ。この医療DXのパスポートであるマイナ保険証について、本年12月2日からはマイナ保険証を基本とする仕組みに移行する。健保組合の皆さんにおかれては、この間、マイナ保険証の周知啓発に多大なるご協力をいただいており、この場を借りて改めてお礼申し上げる。
マイナ保険証で医療機関を受診することで、国民の皆さんには自身の健康・医療に関するデータにもとづいた、より適切な医療を受けていただくことが可能となる。こうしたメリットを多くの国民の皆さんに実感していただくため、引き続き、健保組合の皆さんをはじめとする関係団体とも連携し、普及啓発を図っていくので、マイナ保険証を基本とする仕組みへの円滑な移行に向け、引き続きのご協力をいただけるよう、何卒お願い申し上げる。
最後になるが、健保組合および健保連の今後の益々のご発展と本日お集りの皆さんのご健勝をお祈り申し上げ、私のあいさつとする。
決議
本年は、「団塊の世代」がすべて後期高齢者となる「2025年」が目前に迫った極めて重要な年であり、我々健保組合は、高齢者医療費のさらなる増大と現役世代の減少が重なる「2025年問題」という重大な危機に直面する。これまでも厳しい財政運営を強いられてきたなかで、高齢者医療への拠出金負担が一層増加していくことを踏まえれば、支え手である現役世代の負担は限界を超え、医療保険制度の中核を担う健保組合の存続が危ぶまれる事態に陥る。
国民の安心の礎である「国民皆保険制度」を次世代に残していくためには、国と保険者、医療提供者などの関係者をはじめとする国民全員がこの難局を乗り越える覚悟を決め、未来につながる改革への歩みを進めなければならない。
特に、「現役世代の負担軽減」と「世代間の給付と負担のアンバランス解消」が不可欠であり、これらの実現は健保組合の安定した運営の確保につながるものである。これまでの「負担は現役世代、給付は高齢者」という仕組みを改め、全世代が納得して負担し合う持続可能な制度とするためにも、改革を断行していかなければならない。喫緊の課題である少子化対策についても、その財源を含め、国民の十分な理解のもと進めるべきである。
また、適切な医療サービスを確保し質を向上させていくためには、医療機能の分化・連携の強化は必須であり、「かかりつけ医制度」の構築など、国民にとって安全・安心で、効果的・効率的な医療提供体制を構築していかなければならない。
なかでも、医療DXは、高齢者の増加や医療技術の高度化などにより、医療費が増大するとともに、医療に関わる人材不足が懸念されるわが国において不可欠な施策である。医療DXの重要な基盤となるマイナ保険証を基本とする仕組みへの移行を12月に控えるなか、国民がそのメリットを実感していくためには、「全国医療情報プラットフォーム」の構築を進め、「電子処方箋の普及」、「電子カルテ情報の標準化」などを推進し、社会生活に浸透させていく必要がある。
我々健保組合は、これまでも事業主と連携を図り、加入者の特性にあわせた保健事業を実施し、健康寿命の延伸に貢献してきた。本年度からスタートした、「第3期データヘルス計画」や「第4期特定健診・特定保健指導」などを着実に進めながら、保険者としての役割をより一層強化し、人生100年時代にふさわしい先駆的な取り組みを進めていく。
未曽有の超高齢社会にあって、存続の分水嶺ともいうべき2025年を乗り越え、国民皆保険制度を未来につなげていくため、現役世代を守る改革の断行を求め、我々は組織の総意をもってここに決議する。
一.皆保険を全世代で支える持続可能な制度の実現
一.医療の効率化に資する医療DXの推進
一.安全・安心で効果的・効率的な医療提供体制の構築
一.健康寿命の延伸につなげる健保組合の役割強化
令和6年10月24日
令和6年度 健康保険組合全国大会
現役世代を守るための改革断行を!
― 2025年を乗り越え、未来につながる皆保険制度に ―
国会議員へ大会決議の実現を強く要請
梅村 聡 衆・維新(大阪5区)
大阪連合会 長井 参与
池下 卓 衆・維新(大阪10区)
健保連 木下 職員
大阪連合会 川隅 専務理事
大阪連合会 長井 参与
松川 るい 参・自民(大阪府)
健保連 木下 職員
大阪連合会 川隅 専務理事
大阪連合会 長井 参与