時評
災害級の猛暑 来年もきっと
今年は数えきれないほど見聞きした「残暑」を、改めて辞書にあたってみる。「立秋から秋分までの間に、おさまらない暑さ」とあった。
9月21日から22日にかけて、石川県の能登半島を豪雨が襲った。海水温が真夏のように高く、太平洋高気圧の縁に沿って流れ込んだ暖かく湿った南風と、大陸側からの北風がぶつかって積乱雲が次々と発生したためだ。
今年の秋分は22日だったから、何とも皮肉で酷な巡り合わせだろう。正月の地震で甚大な被害を受け、復興の道半ばだった能登の人たちが、今度は豪雨に苦しめられた。被災者の「心が折れました」との言葉が重く響く。
それにしても、暑くて長い夏だった。気象庁によると、6月から8月の全国の平均気温は昨年と並んで、統計が残る中で最も高かった。9月も暑い日が続いた。深刻な地球温暖化に加え、偏西風が蛇行して列島が高気圧に覆われる日が続いたためのようだ。
最高気温が35度を上回る猛暑日は、福岡県太宰府市で国内の年間最多を大幅に上回る62日に達した。大阪市も9月末までに、過去最多の41日を数えた。昭和のころ、猛暑日との気象用語はまだなく、35度超えはニュースだった。それが、令和のいまでは、夏の日常となった。
熱中症による救急搬送(速報値)は、全国で9万7千件を超えた。大阪府は、全国最多だった東京都に次いで多く、7000件を超えた。
猛暑による健康リスクは熱中症だけではない。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書は、感染症の拡大、メンタルヘルス、下痢や栄養失調といった多岐にわたる影響に言及している。気温が高くなるほど、自殺のリスクが高まるとの研究もある。
加入者の健康をサポートする健康保険組合として、その役割をもう一度、考える時期ではないだろうか。保険給付に備えるのはもちろんのこと、国や自治体、報道機関とは別のチャンネルとして、健康へのリスクや予防法を伝えたい。事業で、猛暑やその影響で起こる災害から身を守る術を学んでもらう機会をつくるのも有効だろう。
数年前に「災害級の暑さ」という表現が流行した。まさに、猛暑は毎年必ずやってくる災害となった。暑さは過ぎ去り、秋が深まってきたが、来年もきっと、あの猛暑がやってくることを忘れずにいたい。
(K・T)