健康講座
9月3日、健康教室を開催。同志社大学 生命医科学部 アンチエイジングリサーチセンター 教授 米井 嘉一氏が「アンチエイジングは習慣が9割」をテーマに講演されました。
アンチエイジングは習慣が9割

米井 嘉一 氏
身体は様々な臓器・器官より構成される。老化の仕方は人それぞれ異なり、また老化を助長する危険因子もそれぞれ異なる。30歳代から身体のどこかに機能低下が生じ、老化の弱点となり、疾病発症につながり、さらには他の健常部にも悪影響を及ぼす。これが病的老化である。アンチエイジングは身体機能の老化予防/若返りを目指している。
人の寿命はすべてが遺伝により決まるわけではない。たとえ親や祖父母が長寿であっても、当人が放蕩生活を送れば、寿命は短くなる。10年前までは、寿命が遺伝で決まるのは3割、残りは生活習慣と環境で決まると、説明してきた。最近は、9割が生活習慣と力説している。何故なら、生活習慣によって遺伝子の働きのオンオフのスイッチが変わるからである。これはエピジェネティックス(後天的な遺伝子発現の変化)と呼ばれている。うかうかして悪しき生活習慣を送っていると、老化スイッチが押されてしまうだろう。

近年、糖尿病、肥満、脂質異常症といった生活習慣病が増えつつある。これらは皆、糖化ストレスが強い状態、すなわち体内のアルデヒド過剰が原因である。アルデヒドは体内の蛋白質を、糖化反応(glycation)により、終末糖化産物(AGEs)に変化させる。その結果、「糖尿病は万病のもと」の如く、様々な加齢関連疾患(認知症、動脈硬化、皮膚老化、糖尿病性腎症、骨粗鬆症)を引き起こす。今回の講義では、生活習慣によってアルデヒドの影響を防ぐ方法を伝授する。
アルデヒドには、糖質由来、脂質由来、飲酒由来、喫煙由来がある。糖質由来は食後高血糖(血糖スパイク)により生じる。食育では「よく噛む、ゆっくり食べる」に加えて、蛋白質不足に注意して血中アミノ酸濃度を高めることが大切である。アミノ酸には、血糖スパイクを契機に生じるアルデヒドを消去する働きがある。また、近年注目されている脂質由来アルデヒドは、認知症や脂肪肝炎の進展に関与する。脂肪酸からアルデヒドが生じる原因は、高脂肪食、酸化、他のアルデヒド(飲酒や喫煙)による攻撃、紫外線・放射線暴露である。睡眠中に分泌されるメラトニンは、脂肪酸の酸化を防ぎ、AGEsの分解排泄を助けるので、認知症に大切な役割を果たす。睡眠の質を高めることが大切である。腸内細菌叢の相利共生菌(善玉菌)は酢酸、酪酸、乳酸を生成し、AGEs生成を防ぐ働きがある。食育により善玉菌を大切に育てよう。アルデヒドは反応性が高く、細胞膜を通過して遺伝子DNAさえも糖化させ、病的なエピジェネティックス変化を引き起こす。糖化ストレスの仕組みを知り、対策を練ることは極めて重要である。
(社)糖化ストレス研究会では、糖化ストレス(GS)ケアのために生活習慣を学び、皆の健康増進に貢献できるようにGSケアアドバイザー/プロフェッショナルの養成を目的とした資格制度を開設した。医療資格・国家資格等を持たない方にはGSケアナースエイドの資格を用意した。多くの方にGSケアを学んで欲しい。