心の健康講座
8月8日、心の健康講座を開催。大阪公立大学大学院 医学研究科 神経精神医学教室 准教授 岩﨑 進一氏が「復職後の職員に対して会社ができること」をテーマに講演されました。(以下に講演要旨)
復職後の職員に対して会社ができること

岩﨑 進一 氏
精神疾患による休職は、他の身体疾患に比べて圧倒的に多く、そのため復職の機会も多くなります。しかし、復職してもすぐに再び休職する頻度が高いことがよく知られています。その主な理由は、復職が可能な状態でないにもかかわらず復職が許可されたり、復職後の環境調整が不十分であったりすることにあります。厚生労働省が推奨する職場復帰支援の5つのステップに沿って、復職後の職員に対する対応についてお話しさせていただきました。
復職後のサポートに関しては、復職前(第3ステップ)から準備することが重要です。主治医から復職可能の診断書が出た時点で、労働者、主治医、職場から情報収集を始めます。復職可能な状態に達していない自覚があっても、分限免職を避けるため、疾患の症状(妄想など)やお金の問題などで無理に復職しようとする場合もあります。また、休職中の総合的な状態の把握には、生活記録表を活用することをお勧めします。就労者自身ができることとして、通勤訓練やリワーク、軽作業やPC作業、自己学習などを通じて、自身が職場に復帰可能であることを証明してもらうようにします。
復職後のプランとしては、段階的復職が一般的ですが、それが適切に遂行されているかどうかを含めて、定期的な面談でサポートしていきます。しかし、最も身近にいる管理監督者が良好な関係を築きながら、再度の体調悪化に気をつけ、治療が継続されているかどうかを確認し、環境改善に努めることが必要です。それには非常に大きな努力が求められるため、産業保健スタッフが管理監督者をサポートする姿勢が重要となります。

後半には、発達障がいを持つ就労者への対応についてお話をさせていただきました。発達障がいを持ち就労に至る人は、これまでに様々な困難を乗り越えており、就職可能な程度の能力を持っています。しかし、労働環境や他者との関わりの中で、私たちが気づかないうちに持続的なストレスを受け、それが二次障害と呼ばれる一般的な精神障害の症状を引き起こします。診断書には発達障がいの病名よりも、二次障害である抑うつ状態や適応障害といった病名が記載されることが多いです。発達障がいが職場で広く知られるようになりましたが、従来の対応ではうまくいきません。それは本人を治療に結び付けるという考えでは問題は解決しないからです。本人を変えるのではなく、管理監督者や職場が変化し、彼らの就労をサポートする必要があります。そのためには、合理的配慮や他の就労者からの理解を促進する啓蒙活動が必要です。
以上についてお話しさせていただきました。この講演が、皆様の職場におけるメンタルヘルス対応の一助となれば幸いです。