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広報誌「かけはし」

時評

出産費用の保険適用

政府が昨年12月に閣議決定した「こども未来戦略」において、2026年度を目途に、出産費用(正常分娩)の保険適用の導入を含めた出産に関する支援の強化が明記された。

そして、厚生労働省における「妊娠・出産・産後における妊産婦等の支援策等に関する検討会」の初会合が6月26日に開催された。

この検討会には健保連の佐野会長代理が出席し、「現在は賛成とも反対とも言えない」「内容次第」と発言。また、

①出産費用の保険適用の目的を明確にすべき

②データのさらなる見える化

③給付と負担の関係・バランスの整理

④産科医・分娩機関の維持との関係

――の4点を、今後の検討にあたっての論点とすることを提言した。

現状、出産費用の増加に合わせて出産育児一時金を引き上げるなど、出産に関する支援は行われている。しかし、自由診療の下、一時金の増加にあわせたかのように出産費用も増加するなど、思ったほどの負担軽減の効果は見られない。加えて、出産費用の地域差が顕著になっていることも問題である。このような状況に対して、分娩費用の明確化・見える化に伴い、診療報酬を設定することで、透明性・公平性が担保される。さらに、技術や薬剤の承認等により、質の担保や標準化につながるなどのメリットも期待できる。

ただし、現行の出産育児一時金と比べて、自己負担や分娩の範囲などの取り扱い、選定療養など、負担増となる懸念がある。他にも、出産育児一時金の取り扱いや異常分娩、産科医療補償制度への対応など、課題は多い。

検討会における他の構成員からも、「提供体制や費用の地域差などの分析も不可欠」「保険適用のイメージが見えてこないと、良いのか悪いのか分からない。赤字経営ではもたないため、事業継続できる施策を考えてほしい」「出産件数が減っても、安全・安心に出産できる環境・体制の確保が重要」などの意見がある。

健保連は、引き続き「透明性・公平性の担保」「適切な保険適用範囲の設定」を基本に検討・主張していく。また、保険適用の財源規模については、

①現行の出産育児一時金を超えない範囲で検討していくこと

②保険適用の議論とは別に、周産期医療の提供体制の整備・確保については、国・都道府県等が責任をもって検討・支援していくこと

――などを主張していく。

とにかく、出産費用の保険適用についての議論は始まったばかりである。妊産婦、医療機関、保険者それぞれの意見を尊重しながら、誰もが望む方向性でしっかり議論してほしい。

この動向からは、しばらく目が離せそうにない。

(M・S)