時評
社会情勢の変化に応じた保険者機能の推進
昨年12月22日に「こども未来戦略」と「全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)」が閣議決定された。
「こども未来戦略」には、6月13日に閣議決定された「こども未来戦略方針」の「基本的考え方」に、「個人の幸福追求を支援することで、結果として少子化のトレンドを反転させること」が盛り込まれた。この間に開催された「こども未来戦略会議」では、既存の結婚制度に限定しないこどもの持ち方についても言及された。社会制度にまでおよぶ多様な意見を踏まえての追加と推察する。
「改革工程」では時間軸を考慮して、
①2024年度に実施する取組
②「こども・子育て支援加速化プラン」の実施が完了する2028年度までに検討する取組
③2040年頃を見据えた中長期的な課題に対して必要となる取組
――の3つの段階に分けて取り組みが示された。
こどもたちの元気な姿は一番のビタミン剤。時間軸のなかで社会制度の改革も含め対策が幅広く議論・実施され、今度こそ少子化が反転することを願う。
健康保険組合連合会は昨年10月25日に開催された全国大会で、「保険者機能の推進による健保組合の価値向上」を決議した。「国の重要課題である少子化対策や就業者の高齢化・女性の社会進出等の社会情勢の変化に対応した健康課題対策にも注力し、誰もが健康で働き続けられる社会の創出に努めていく」ことをスローガンとした。
健康保険組合としても、来年度から始まる第3期データヘルス計画で、これらを踏まえた計画策定が期待されている。
まずは、これまでの取り組みを振り返ってみた。からだの健康、例えば生活習慣病やがんについては、レセプトや健診結果の分析による課題の特定や、打ち手となる予防策は整備されてきた。
一方、こころの健康に対しては対応策を模索するも、現状は啓発によるリテラシーの改善程度に限られている。過去7年の間にメンタルに関連した傷病手当金の給付は大きく増加しており、特に女性の伸び率が気になるところである。こころの健康についても保険者機能をさらに発揮できれば、少子化対策にもつながるのではと思う。事業所と、各々の情報を多面的・統合的に分析・議論することでこころの健康へのコラボもさらに進めていきたい。
また、健康日本21(第二次)での「次世代の健康」に関する最終評価では、肥満傾向にあるこどもの割合が悪化している。食生活にも改善が見られない。少子化が進むなか、こどもの健康推進もいっそう大切になろう。
保険者機能を考え抜く1年としたい。
(D・K)