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広報誌「かけはし」

健康セミナー

9月28日、健康セミナーを開催。奈良県立医科大学 疫学・予防医学講座 特任准教授 大林おおばやし 賢史けんじ氏が「光環境と生活習慣病~最新の医学知見~」をテーマに講演されました。(以下に講演要旨)

※本講演の動画は10月5日~12月28日までオンデマンドにて配信

光環境と生活習慣病 ~最新の医学知見~

藏城 雅文 氏

多くの生物は、夜間に月明かり程度の明るさで活動していたため、夜間は暗い光環境に適応するように進化してきたと考えられる。そして生物は、外部環境の変化に適応するために、進化の過程で体内時計による生体リズム調節機構を獲得した。

外部環境因子には様々なものがあるが、「光」が生体リズムに最も強く影響を与える情報であることが分かっている。しかし、1879年の白熱電球発明を契機に光の消費量は増加の一途を辿っており、現代人はこれまでに人類が経験したことのない大量の夜間の人工光を浴びている。このような夜間の光曝露により体内時計が乱れ、睡眠障害をはじめ多種多様な疾病を引き起こしている可能性がある。実際に、生体リズム障害と関連が強い夜間交替勤務者で、肥満症・睡眠障害・高血圧・脂質異常症・糖尿病・うつ・脳卒中・虚血性心疾患・がんのリスクが高いことが報告されている。

一方、これまでの光環境に関する知見では、「私たちはどのような光環境で寝ているのか」「日中にどの程度の光を浴びているのか」という単純な疑問にすら答えることができなかった。私たちが実施する平城京スタディは、「リアルワールドの光曝露」を実測した、世界ではじめての疫学研究である。奈良県在住の40歳以上の男女3012人について全対象者の寝室に照度計を設置し、夜間(入床~離床)の寝室照度を持続測定した。

平城京スタディの横断分析の結果から、夜間光曝露の増加が肥満症・糖尿病・脂質異常症・高血圧・睡眠障害・うつ症状・動脈硬化と関連すること、日中光曝露の減少がメラトニン分泌量の減少と関連すること、メラトニン分泌量の減少が糖尿病、高血圧、全身性炎症、夜間頻尿、筋力低下、うつ症状、認知機能低下と関連することを明らかにした。さらに追跡調査の縦断分析の結果から、就寝前から夜間就寝中の光曝露量は多いほど、その後の肥満指標である腹囲身長比や、体重身長比が有意に増加することを報告した。一方、起床後の光曝露量が少ないほど、その後の腹囲身長比の増加と有意に関連していた。また、夜間光曝露量が多いほど、頸動脈内膜中膜複合体が有意に厚くなり、動脈硬化が進行することを報告した。

現代社会で健康的に生活するためには、光環境について照度・波長・タイミングの3要素を考慮した照明設計や、生活習慣の改善が必要であると考えられる。就寝前や就寝中に強い照度や短波長の光を浴びないようにして、起床後から日中は太陽光など強い光を浴びることが望ましいと考えられる。