時評
次元の異なる少子化対策
―骨太の方針2023が閣議決定―
6月16日、「経済財政運営と改革の基本方針2023」、いわゆる「骨太の方針2023」が閣議決定された。
世代を問わず、能力に応じた負担によって制度を支え、必要な方が必要な社会保障を受けることができる。そんな全世代型社会保障改革の実現に向けた議論が進むものと思われる。
さて、骨太の方針に示されたなかで、我々が特に注目することは、新たな負担増が生じるか否か。また、負担が増えた場合、どの程度の負担になるのか、というところだろう。
方針に示された「次元の異なる少子化対策」では、2024年から26年を集中取り組み期間と位置付け、児童手当の拡充や出産等の経済的負担の軽減を「加速化プラン」として、可能な限り早い段階で実施するとしている。実施にかかる費用は3兆円半ばを見込んでいるが、この財源の確保はどうするのか。そこで政府が示したのは、「増税は行わず、28年までに徹底した歳出改革などで得られた公費・社会保険負担軽減の効果を活用しながら、実質的に追加負担が生じないことを目指す」というもの。
早々に「増税は行わない」と表明したからには、税に代わる財源にある程度の目途が立っているのかと思いきや、この安定財源を確保する方法の詳細は、年末の予算編成まで先送りされた。報道等では、社会保険料に上乗せする案が再び浮上しているという。ただし、社会保険料に負担を求める場合は、制度的にも様々な問題が生じることが明らかになっていることを前提とすべきである。
少子化対策の重要性は、重々承知している。岸田首相も「若年人口が減少する30年代に入るまでが、少子化傾向を反転できるかどうかのラストチャンス」と述べている。スピード感を出していくことは大切だろう。しかし、健保組合の現状は、健保連が公表したように23年度予算早期集計において、過去最大の5623億円の赤字を見込んでいる。新型コロナウイルス感染症による保険給付費や、団塊の世代が後期高齢者に達し始めたことによる後期高齢者医療への拠出金が急増したことによる。まさに今、現役世代が非常に厳しい状況にあることも事実である。
22年の合計特殊出生率が、過去最低の1.26だったことからも、「次元の異なる」と銘打った今回の取り組み。今後の施策の方向性は決まったが、これまでのいわゆる「バラマキ」と言われるようなやり方のくり返しでは、現在の少子化傾向を改善することは難しいように思う。ご承知のとおり、子どもを産みたいと思える仕組みづくりと、産んでからの子育てへの不安までも
さあ、年末に向けて、財源についてはどうするのか。その名のとおり、これまでとは次元の異なる発想が不可欠である。現状、マイナ保険証への対応も大変だと思う。しかし、なによりもこの財源議論に、関係者のすべてが納得できることを目指し、十分な時間を費やしてほしい。
(M・S)