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広報誌「かけはし」

時評

100年後にバトンをつなぐ

医療費は医療技術の発展や少子化・高齢化などを背景に増加を続け、健康保険組合の財政は今後も厳しい状況が続く見通しである。これからの100年も加入者の健康と安心を支え、誰もが安心・安全な医療が受けられる国民皆保険制度を堅持するため、あらゆる面での改革が求められている。

国が進めている社会保障制度の改革に大いに期待する一方で、保険者として100年後のために、今、何ができるだろうか。現在、医療や医療保険制度のDXが急速に進められようとしている。デジタル技術を活用して情報を標準化することで、医療情報の共有・交換が可能となる。これにより、医療制度全体の効率化や運営コストの削減が期待される。

健康保険組合の業務についてもDXを最大限に活用することで労働生産性の飛躍的な改善や事業コストの削減が期待される。DXは労働人口が急速に減少していく見通しのなか、職員の多様な働き方も可能にし、労働力を確保するためにも不可欠な技術である。

例えば、健康保険組合の基盤業務の一つである給付事業は、法定の業務が多く、DXでプロセスを最大限標準化させることで生産性をさらに上げる余地があろう。また、プロセスの標準化の先には、集中化により業務を飛躍的に効率化してコスト削減をできるような改革も見えてこないだろうか。

社会情勢の変化に伴い、健康保険組合に期待される機能は変化する。医療保険者には健康寿命の延伸や、結果として医療費抑制が期待できる保健事業の推進が従来以上に求められている。標準化可能な業務を集中化する一方で、各保険者が加入者の高齢化の進展、疾病構造の変化、ならびに家族や年齢構成の違いや変化をデータ解析し、付加給付や保健事業の最適化を図ることが重要となろう。  

健康保険組合は、加入者情報やレセプトならびに健診結果の客観的なデータを蓄積しており、DXが事業の最適化を助けてくれる。この3年間は、残念ながら、新型コロナ感染が拡大するなか、基盤業務の維持に追われ、DXを駆使してデータヘルスを推進することが難しい状況もあった。  

一方、データヘルスポータルサイトには保健事業の効果に寄与した方法・体制に関するノウハウが全国規模で蓄積されてきている。加入者に近い存在である健康保険組合が、事業主と連携して蓄積されたノウハウのなかから加入者の最適なものを選択して、より効果的な保健事業を効率的に推進するための基盤が整いつつある。

ノウハウの蓄積は、加入者数や財政規模などの制約から保健事業の推進が難しい健康保険組合にとっても、暗黙知や経験知の活用を可能とし保健事業の推進に役立つだろう。さらに、蓄積されたノウハウは保健事業人材の育成にも役立つ。また、加入者のヘルスリテラシーを高め、内発的な行動変容につながることも期待される。  

(D・K)