時評
新型コロナのトンネルを抜ければ
約3年もの間、とても長かった。近年まれにみる世界的な感染症の大流行により、我々の生活は一変した。しかし、新型コロナウイルス感染症に右往左往した長いトンネルを、ようやく抜けようとする兆しが見える。
政府は3月13日以降のマスク着用の考え方として、「個人の主体的な選択を尊重し、着用は個人の判断に委ねる」との方針を決定した。加えて、5月8日には、新型コロナウイルス感染症を、現在の感染症法上の2類から季節性インフルエンザと同じ5類に引き下げることも決定した。これにより、コロナ禍中に行われてきた、感染者や濃厚接触者の外出制限、感染者の把握、医療機関への補助など、2類だったからこその措置が変わる。日本での生活が、徐々にではあるが「ウィズコロナ」としての状態に
コロナ禍においては、健保組合も苦難の連続だった。
一時は、給与・賞与の減少や保険料の納付猶予策なども相まった保険料収入の激減、高齢者医療への拠出金などにより、健保組合全体で5000億円を超える赤字を計上したこともあった。職場への出社を控え、テレワークを主とした勤務体制を確立させたり、WEBによる会議や保健事業を行ったりするための対応なども一朝一夕ではできなかった。しかも、健保組合の業務は基幹システムを利用するものが多く、すべての職員が完全なテレワークにすることができない。そのため、感染の恐怖に震えながら出社を余儀なくされた方も少なくなかった。
新型コロナによる休業で、著しく報酬が下がった方への標準報酬月額の特例改定や、それに伴う傷病手当金の支給決定などのイレギュラーな事務の増加もあった。書き出せばキリがないほどの苦労をなんとか乗り越え、今に至った。
今後しばらくは、少しだけ軽くなった新型コロナという厄介者と共に、健保組合としての使命を果たすべく、加入者の健康や疾病予防に取り組んでいきたい。
そのためには、2月10日に閣議決定された「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案」の動向には注視していく。現役世代の負担軽減を主な目的とした改正のため、健保組合にとっては非常に重要な内容となっているからである。
新型コロナのトンネルを抜ければ、どんな景色が見えるのか。願わくば、健保組合にとって、明るいものであることを祈る。
(M・S)