心の健康講座
11月7日、心の健康講座を開催。大阪公立大学大学院医学研究科 神経精神医学教室 准教授 岩﨑 進一氏が「職場のメンタルヘルス―困った時の対応について―」をテーマに講演されました。(以下に講演要旨)
※本講演の動画は11月16日~12月16日までオンデマンドにて配信
職場のメンタルヘルス ―困った時の対応について―

岩﨑 進一 氏
近年、企業でのメンタルヘルス対応は、かなり一般的なものになったように思います。しかし、企業の規模によっては産業保健スタッフが少なかったり、余力がなく労力が割けなかったりして対応から目を逸らしたり、典型的なうつ病などへの対応はできても、イレギュラーなケースや、問題行動が目立つケースなどは、やはり対応に苦慮するのが現状だと思います。
そこで、困った時の対応のポイントについて、次のようにお話しさせていただきました。
①メンタルヘルスの基礎
②休職復職のシステムを整える
③外部機関の利用
④主治医に会いに行くことを活用
⑤合理的配慮と障碍者雇用の利用
⑥病名とその有無にとらわれない
――です。
特に中小規模の企業では、基本的なメンタルヘルス対応のパターンが作られておらず、厚生労働省が推奨する基本の対応ができていないことがあります。まずここを基本としていないと、応用的な事例には対応ができません。制度の整備が必要になります。もし、自社内で対応に苦慮する事例の場合は、無料で外部機関へ相談することも可能です。
困った診断書を持ってくる事例や、困った条件の要求などでは、主治医と面談し、情報提供しながら条件のすり合わせをし、意見の利用を活用することが重要です。

近年のトピックスである合理的配慮(主に発達障害事例)では、本人がどのような条件なら最大限の能力を発揮でき、会社のできる配慮とのすり合わせ、そして周囲との調整をすることが重要です。
精神疾患という病名に過剰に反応してしまうと、他の社員と同様に扱えなくなってしまうことがよくあります。トラブルや病状の悪化を恐れて腫れ物に触るような対応になり、勝手に配慮したり、放置されたりして、コミュニケーション不足に陥りがちです。そのため、本人の孤独感を増し、病状悪化や問題行動につながることもあります。職場の思いや困っていることをオープンにして、本人と話し合って決めていく方がうまくいくことが多いです。
最後に、困った時のチェックリストをお示しします。
□ 本人と職場で本当にコミュニケーションが取れているか
□ 他の社員と区別していないか
□ 本人・上司・人事労務・健康管理室・主治医と連携が取れているか
□ 本人・上司・人事労務・健康管理室・主治医の負担のバランスがよいか
□ 勝手に病名をつけていないか
□ 就業規定から外れていないか
□ 合理的でない配慮をしていないか
□ 事例性より疾病性に偏っていないか
この講演が、皆様のメンタルヘルス対応の一助になれば幸いです。