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広報誌「かけはし」

健康セミナー(オンデマンド配信)

10月3日~11月4日、健康セミナーについてオンデマンドにて講演動画を配信。大阪公立大学大学院医学研究科 代謝内分泌病態内科学 講師 藏城雅文氏が「高尿酸血症・痛風と生活習慣」をテーマに講演されました。(以下に講演要旨)

高尿酸血症・痛風と生活習慣

藏城 雅文 氏

血液中の尿酸値(血清尿酸値)が7.0mg/dlを超える状態を高尿酸血症といいます。高尿酸血症患者数は年々増加し、成人男性の約30%に認められています。痛風患者数も年々増加し、国民生活基礎調査(2016年)からは100万人以上が痛風に罹病していると推定されています。

痛風は、尿酸値が7.0mg/dlを超える状態(高尿酸血症)が長期間続くと、尿酸の結晶が体内にたまっていく(沈着)することで起こります。痛風発作の起こりやすい部位は、温度が低く、また運動による負荷がかかりやすい下肢の関節に起こりやすいことが知られています。血清尿酸値が低くなると、たまっていた尿酸の結晶が溶解(溶ける)することで、痛風の発症も低下することから、痛風患者における血清尿酸値の治療目標値は6.0mg/dl以下を目指すことになっています。なお、最近の研究により、高尿酸血症は、痛風だけでなく、糖尿病、高血圧、腎不全、心血管病との関連が明らかになってきています。

高尿酸血症が増加している一因に肥満患者の増加が挙げられます。肥満を合併していると腎臓から尿酸が排泄されにくく(出ていきにくい)なるからです。そのため、肥満を合併している高尿酸血症患者では、3%以上の減量(肥満の是正)が推奨されています。有酸素運動は尿酸値を低下させるのに対して、激しい運動は尿酸値を増加させてしまうので、歩行・ジョギング、サイクリング、社交ダンス、水泳などの有酸素運動がお勧めです。

食事内容と尿酸値あるいは痛風の関係では、肉類や魚介類をたくさん摂取すると痛風の発症が多いことがわかっています。アルコールと尿酸との関係も古くから知られており、アルコールを過剰に摂取すると、ATPと呼ばれるエネルギー物質を消費することで尿酸の産生が増え、またアルコールにはプリン体を含む(特にビールが多いことが知られています)ことから尿酸値を上昇させることになります。清涼飲料や菓子類に含まれる果糖を摂取するときも、ATPを消費することで尿酸値を増加させることになります。

乳製品(牛乳・ヨーグルト)をたくさん摂取される方は、痛風の発症が少ないことが知られています。我々の研究からは、牛乳は尿酸を腎臓から排泄させることで尿酸値を低下させると考えられています。また、ヨーグルト(ヨーグルトに含まれる乳酸菌)は、食事に含まれているプリン体の吸収を低下させることで尿酸値を低下させると考えられています。肥満を改善し、肉類・魚介類・糖質(果糖)・アルコールを控えることが重要な生活改善となりますが、これらを実際に行うことは難しい面があるのに対して、乳製品(牛乳・ヨーグルト)の摂取は、尿酸値に良い影響を与えると考えられており、取り組みやすい生活改善といえるのではないでしょうか。