健康教室(オンデマンド配信)
8月31日~10月3日、健康教室についてオンデマンドにて講演動画を配信。立命館大学 スポーツ健康科学部 スポーツ健康科学研究科 教授 真田 樹義氏が「ロコモと腰痛予防~人生100年時代に備えよう~」をテーマに講演されました。(以下に講演要旨)
ロコモと腰痛予防~人生100年時代に備えよう~

真田 樹義 氏
今般、エイジングに関わる用語として、フレイル、サルコペニア、ロコモティブシンドロームなどがあります。
フレイルは、高齢者の虚弱を示す総合的な概念で、身体的、精神的、社会的フレイルに分類されています。身体の虚弱だけではなく閉じこもりなど社会性、認知症などの精神疾患も関連する幅広い概念です。フレイルは早期に介入して対策を行えば、元の健常な状態に戻る可能性を含んでいて、介護予防においてはとても重要です。判断基準としては、1.意図しない体重減少(年間4.5kgまたは5%以上の体重減少)、2.疲労(何をするのも面倒だと週に3~4日以上感じる)、3.歩行速度の低下(秒速1.0m未満)、4.握力の低下(利き手の測定で男性26kg、女性18kg未満)、5.身体活動量の低下―の5つの項目のうち、3項目以上該当した場合をフレイル、1~2項目該当した場合をプレフレイル、該当項目が0の場合は健常に分類されます。
サルコペニアは、加齢による筋量の減少とそれに伴う筋機能低下と定義されています。サルコペニアの診断基準としては、握力が男性28kg、女性が18kg未満、歩行速度が男女とも1.0m/sec未満となっています。10mを10秒以内で歩けるかどうかが判断基準となります。また、ロコモティブシンドローム(ロコモ)は、骨や筋肉、関節などの運動器の障害による要介護の状態や、要介護リスクの高い状態を表す言葉で、2007年に日本整形外科学会から提唱されました。和名は、運動器症候群といい、世界随一の長寿国である日本発祥の用語です。ロコモは、進行すると関節疾患や歩行障害を引き起こします。判断基準は色々ですが、40cmの椅子から片足で立ち上がれるかどうかで容易に判断することができます。平均年齢が64歳の日本人高齢男女を対象とした大規模調査では、ロコモ対象者は70%にもおよび、より重症度の高いロコモは70歳代から急激に増加します。特にロコモは、痛みを伴うことが多く、早いうちから膝痛や腰痛の対策が重要となります。
腰痛予防のための運動としては、下肢と体幹部の筋力強化が有効です。スクワットや腹筋運動、また足腰のストレッチングを行いましょう。椅子から立ち上がれなくなると車いすの生活になります。そのため、スクワット(ひざの屈伸)は最優先のトレーニングです。ひざとつま先は同じ方向にし、腕が上がらない方は手を腰に添えましょう。背中は45度くらいで丸めず、体を前に倒しすぎないで、ひざや股関節が痛い場合は無理しないようにしましょう。下肢のしびれなどの神経症状がある場合や新鮮な骨折、急性の腰痛、骨折による腰痛などは運動適応外となります。主治医の先生と十分に相談してください。運動では順番にこだわらず、苦痛を感じない内容で毎日進めてください。1セット20回、1日3セットを目標にしましょう。
老化は脚からといいます。40歳代から筋量は減ってきますので、若年から自身の筋肉量が他の人と比べて少ないのかどうかを、体組成計などで調べておくことも大切です。