時評
新計画策定
― 整合的でより良い予防・健康づくりを ―
2024年度から次期特定健康診査等実施計画が始まる。同時に「医療計画」「介護保険事業計画」「医療費適正化計画」「健康増進計画」がスタートし、さらに「診療報酬・介護報酬同時改定」も実施される。昨年12月には「第4期特定健診・特定保健指導の見直しに関する検討会」が立ち上げられた。このような機会に、関係者の連携と総合力で諸計画が全体としてより整合的、有効かつ効率的となることを期待する。
これまで、保険者として加入者の声やICTを活用しながら、特定保健指導の改善や実施率の向上に取り組んできた。しかし、実施による健康増進や医療費の適正化・抑制といった事業効果を検証することは難しく、保険者と加入者の双方が特定保健指導に対して意義や納得感を十分に持って実施できているのか自問することが多い。
最近、有識者の見解を読んだ際に、特定健診・特定保健指導の医療費適正化効果に疑問符が投げかけられているということを目にした。現行計画の在り方が限界にきているのではないか、との見解も掲載されていた。
特定健診・特定保健指導は2008年度に第1期が始まり、10年以上の実績がある。次期計画の設計にあたり、予防・健康づくりへの有効性や、医療費適正化との関係性が、実績データを基に整理されることを期待する。
また、13年度に実施率を改善する方策の一つとして、加算・減算制度が後期高齢者支援金を対象に実施された。この制度は実施率の改善に、真に有効かつ効率的な打ち手であるのか検証もお願いしたい。特定保健指導に関して、残念ながら、加入者から形骸化・マンネリ化しているとの意見もある。エビデンスに基づく説明は、関係者から納得感を得るために大切ではないだろうか。
健康保険組合の財政面に目を向けると、22年度の経常収支予算は全体として2770億円の赤字である。全国およそ1400組合の7割にあたる963の組合が赤字である。23年度以降は高齢化が一層進展する。拠出金は受診控えの反動もあり、再び増加する可能性がある。
急激な財政悪化が懸念され、健康保険組合には予防・健康づくりを試行錯誤できる財政的な余裕はあまりない。保険者がより有効かつ効率的な予防・健康づくりを推進できるよう、新計画を通してサポートを期待する。効果的な取り組みの共有もさらに進めて、社会コストの削減につなげてほしい。
(D・K)