時評
安心・安全で効率的な医療の実現に向けて
ー 「かかりつけ医」の推進 ー
昨今の新型コロナウイルス感染症の拡大により、国民の「かかりつけ医」に対する関心・期待が高まっている。かかりつけ医とは、健康について何でも相談できて、必要なときには専門医を紹介してくれる身近で頼りになる医師である。
健保連は、全国民が信頼できるかかりつけ医を持ち、外来医療の機能分化・連携を強化することで、安全・安心で効率的・効果的な医療の実現を目標としている。そのために、かかりつけ医を起点とした医療の流れをつくるための環境を整備する必要があると考える。
当面の課題として、かかりつけ医の目的や要件、機能を法令等で明確化し、要件を満たす医師の情報を提供・開示することが挙げられる。そうすることで、かかりつけ医の必要性や機能が周知される。患者は、自分のニーズに合ったかかりつけ医を選択できる。医師は、かかりつけ医に選ばれるための努力をし、専門医との機能分化を進めることができる。国は、今後の制度化を進めやすくなり、地域医療体制の構築や、機能分化・連携、強化のベースにする。そして、我々保険者も、かかりつけ医を持つことを加入者に推奨する取り組みの理由付けを得られる。
診療報酬における「かかりつけ医機能の評価」を再構築し、国民がかかりつけ医による継続管理を受ける大きな流れを作る足掛かりとする必要もある。現状では、かかりつけ医のない患者の7割が、1年間に3施設以上を受診。かかりつけ医に関連する加算等が外来患者の1%しか算定されていない。来年に控える診療報酬改定に向けて、現行の診療報酬の問題点を解消することが重要になってくる。
例えば、「慢性疾患の患者を想定し、既存のかかりつけ医関連の診療報酬について、同意の必要性や評価の重複等に留意し、算定要件等を見直して計画的な医学管理を徹底する」「原則1人の患者には1人の医師または1カ所の医療機関が担当し、患者の同意に基づき、病状や療養上の注意点等を丁寧に説明し、患者の不安を解消する」。また、「かかりつけ医には幅広い疾患に対応し、必要に応じて専門医を紹介できる」「計画的な医学管理や基本的な診療行為等を含む包括報酬とする」など、新たな評価の新設が考えられる。
健康や医療全般のコーディネーター・ゲートキーパーを担うかかりつけ医には、地域の保健や福祉、介護、職域との連携なども期待できる。患者をよく知っていて、患者の多様なニーズに対応できるかかりつけ医は、これからの社会になくてはならない存在になるはずだ。
(M・S)