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広報誌「かけはし」

時評

九仞きゅうじんこう一簣いっき

ジェネリック医薬品とは、新薬の特許期間満了後に販売される医薬品で、新薬との差異がないことを国が認めた薬だ。開発に費用も少なく済むため、薬の価格も安いことから、医療費適正化の切り札として、政府を挙げてその普及、使用促進に取り組んでいる。

社会保障費の抑制策として、財政健全化の『骨太の方針』において、2020年9月までに使用割合を80%とする数値目標まで掲げて邁進し、約78.3%とほぼ達成に近づいた。

健保組合にも、厚労省からその目標達成に向けて、ジェネリック医薬品の使用促進を強く求められ、医療費適正化の観点から加入者への啓発活動に力を入れている。しかし、「新薬の特許が切れた、同じ成分の価格が安い薬」とのイメージから、有効性や安全性を疑う見方もあり、安くても使用したくないと考える人も少なくない。

現に、あるアンケート結果では、いくつかの使用したくない理由のトップは、「効き目や副作用に不安がある」との回答であった。医療関係者のなかにも、ジェネリック医薬品を敬遠し、先発医薬品頼みとする考え方も根強い。今後、ジェネリック医薬品の使用目標数値を上積みできるかどうかは、微妙なところとなっていた。

そんななか、一部のジェネリック医薬品企業の不祥事が明るみになった。爪水虫の薬に睡眠導入剤が混入し、死者が出ていた。また、最大手のジェネリック医薬品メーカーが、長期間にわたって不適切な品質管理をしていたのだ。ジェネリック医薬品に対する国民の信頼が崩れ去りかねない事態といっても過言ではない。  

中国の古い言葉に「九仞きゅうじんこう一簣いっきく」というのがある。事の成功に近づいて、わずかな失敗で遂に成功しない例えに使われることが多い。まさにこのたびの一件を思わせる。国民の生命を委ねる医薬品メーカーが引き起こした、まさかの出来事であるが、この影響は計り知れない。  

日本ジェネリック製薬協会は、信頼回復に向け、品質と安定の確保やコンプライアンス・ガバナンス体制の強化などに取り組むという。

こうした事態にあって、加入者に対してどのようにアプローチし、説明責任を果たすのか…。我々、保険者は考え続けなければならない。

(H・K)