広報誌「かけはし」

■2020年4月 No.583


令和2年度事業計画・予算を了承

 健保連大阪連合会は、新型コロナウイルスの拡散リスクを回避するため、3月25日の開催を中止した第2回定時総会について、同17日から書面による審議を行い、同25日付で、令和2年度の事業計画・収支予算の議案を議決、了承した。

 T健康保険組合をめぐる諸情勢
 
(1)医療・介護保険制度を取り巻く諸情勢
   政府は2019年6月に「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太方針2019)、「成長戦略実行計画」、「規制改革実施計画」を閣議決定した。骨太方針では、成長戦略実行計画に基づく全世代型社会保障への改革などを主要政策としている。社会保障分野の改革の取り組みの基本的考え方は、「新経済・財政再建計画改革工程表2018」に基づき、基盤強化期間内から改革を順次実行に移し、団塊の世代が75歳以上に入り始める、2022年までに社会保障制度の基盤強化を進め、経済成長と財政を維持可能にするための基盤固めにつなげるとしている。なお、給付と負担の在り方を含め社会保障の総合的かつ重点的に取り組むべき政策は「骨太方針2020」でとりまとめるとし、介護保険については、必要な法改正も視野に、2019年末までに結論を得るとした。
 その後9月には、少子高齢化と同時にライフスタイルが多様化するなかで、誰もが安心できる社会保障制度に関わる検討を行うため、「全世代型社会保障検討会議」を設置した。12月の中間報告では、後期高齢者(現役並み所得者除く)の自己負担割合については、一定所得以上の者は2割とすることや、大病院への患者集中を防ぎ、かかりつけ医の機能強化を図るため定額負担の拡大を示した。同会議では、2020年夏に予定されるとりまとめに向けて検討が進められる。
 10月には、消費税率が8%から10%に引き上げられ、「社会保障・税一体改革」が一区切りを迎え、低所得者の介護保険料軽減、介護職員の処遇改善が実施された。
 12月に経済財政諮問会議で、2020年度から2022年度の3カ年を期間とする社会保障分野などの「新経済・財政再生計画改革工程表2019」を決定し、上記の後期高齢者の窓口負担の見直し等については、関係審議会での審議を経て、2020年夏までに成案を得て必要な法制上の措置を講ずるとされた。
 また、同月には、2020年度政府予算案が閣議決定された。予算案には、高齢化による医療費の年間自然増の伸び5300億円を4111億円程度に抑えるなど、政府方針による社会保障関係費に対する抑制措置が盛り込まれている。具体的には、診療報酬の薬価のマイナス改定や介護納付金の全面総報酬割等により、自然増から1100億円を削減し対応しようとするものである。2018年5月に成立した改正介護保険法による介護納付金の総報酬割が導入されたことに伴い実施された負担軽減策は2019年度で終了したが、全面総報酬割に伴い、被用者保険への財政支援が単年度に限り盛り込まれた。
 2020年4月からの診療報酬改定は、診療報酬の改定率が0.55%の引き上げとなった。一方、薬価改定はマイナス0.99%、医療材料価格改定はマイナス0.02%となり、合わせるとマイナス1.01%となった。健保連が求めた薬価のマイナス部分を診療報酬に充当せず、国民への還元という方向性は示されなかった。
(2)健保組合(大阪)の財政状況
   健保組合の財政状況は、2018年度決算では、保険料率の引き上げ等により全体では経常収支で5年連続の黒字となった。しかし、保険料収入に対する拠出金の割合は40.96%で、依然として組合財政にとっては過重な負担が続き、25%の組合が経常収支赤字となっている。また、保険料率の平均は92.61‰となり、前年度より0.67ポイント上昇し、協会けんぽの平均である100‰以上の組合は、前年度から2組合増加し44組合で、全体の27%となっている。引き続き、「現役世代の負担は限界に達している」と、高齢者医療費の負担構造改革等の必要性を広く国民に示しながら、増大する医療費の適正化対策として、事業所とのコラボヘルスの実施によって第2期データヘルス計画を推進するとともに、レセプト点検の強化、療養費の適正化、後発医薬品の使用促進など、きめ細かく取り組んでいく必要がある。
(3)大阪連合会の事業等
   大阪連合会では、各健保組合・各地区会をはじめ、理事会・各委員会において、常に真摯な議論を重ねて、当面する課題に取り組んでいる。
 本年度は、引き続き各関係団体と連携しながら、皆保険制度を守り抜くため広く国民に理解していただくよう積極的に活動を展開していくこととし、主張の実現に向けた活動も含め、次の事業計画に基づき、所期の目的を達成すべく、事業活動を実施する。


事 業 計 画
 
〔基本方針・活動〕
(1)重点事業活動
   医療保険制度の改革に向けた対応および保険者機能の強化に向け、会員組合の協力を得ながら健保連本部との連携を密にして、下記事項について取り組む
  @理事会・委員会・地区会活動を積極的に推進する。
A健保組合・健保連の主張実現に向け、政党・国会議員への効果的な要請活動を展開する。
B機関誌「かけはし」やホームページなどを通じての広報活動により、健保組合・健保連の主張や活動の周知を図り、理解度を高める。
C第2期データヘルス計画・コラボヘルスの推進に向けて、保険者機能強化への支援を行うとともに、健康経営・健康宣言の普及促進を図る。
D健保組合のICT化推進に向けて支援を行う。
E健保組合全国大会への積極的な参加を推進する。
F健保組合の円滑な運営のため、行政機関と密接な連携を保つ。
G関経連、連合大阪、協会けんぽ大阪支部との連携を図る。
H医師会等医療関係団体とは意見交換を通じて相互理解を深める。
I大阪府保険者協議会では、医療費の適正化・有効な保健事業・地域医療構想の取り組みについて、健保組合・健保連の意向を反映させる。
J国保運営協議会へは、被用者保険サイドの意向を反映させるよう積極的に参加する。
K近畿地区各連合会と密接な連携を図る。
L他府県の健保組合も加えた保健事業等に取り組み、連帯感を醸成する。
M組合運営サポート事業など、時宜に応じた諸対策を実施する。
(2)組織活動
   組織活動の強化を図り、下記事項を実施する。
  @理事会および総会を開催する。
A地区会長会議、各種委員会等を開催する。
B地区会を中心とした諸活動を支援する。
C主張実現に向けたシンポジウム等を開催する。
(3)組合運営に対する支援活動
   会員組合の円滑な業務推進に資するため、下記事項を実施する。
@会員組合専用サイトを活用し、円滑な情報提供・充実を図る。
A組合予算編成等事務説明会を開催する等、行政機関および健保連本部と連携を密にして支援する。
B永年勤続者表彰式を挙行する。
C会員組合の保健事業、医療費適正化対策の推進を支援する。
D会員組合に有効な健保事務、法律、レセプト・保険給付、特定健診・特定保健指導等の相談事業を充実する。
〔事業活動〕
1.広報活動の推進
 広報活動の充実を図るため、次の事業を実施する。
(1)機関誌「かけはし」の発行
@誌面の充実を図り、月1回発行する。
A次の項目を重点的に掲載する。
・医療保険制度改革関連(高齢者医療費の負担構造改革、健保組合の運営安定化に向けた国の財政支援の拡充等)。
・医療費適正化関連と健康づくり関連。
・大阪連合会の事業活動。
・会員組合の財政状況と地区会の事業活動。
・政党、国会議員への要請活動。
・主張実現に向けたシンポジウム等。
(2)広報活動の強化
@会員組合の事業活動の推進に役立つようホームページの充実を図る。
A会員組合が行う広報活動に役立つ研修会を開催する。
B会員組合の広報活動に具体的に役立つ広報資料を提供する。
(3)関係団体等に対する対外広報の強化
   次の関係団体等への機関誌配布を通じ、健保組合・健保連の主張と事業活動への理解の浸透を図る。
・国会議員(大阪府選出および社会保障関係)。
・経営者団体、労働団体および医療関係団体。
・その他必要な関係者。

2.会員組合役職員の資質向上と組合業務の改善・効率化の推進
 会員組合の円滑な事業運営を支援するため、次の事業を実施する。
(1)会員組合役職員の資質向上
@事務長・中堅職員等研修会を開催する。
A組合業務別実務講習会(適用・給付・庶務会計)を開催する。
B初任者実務講習会を開催する。
C個人情報保護研修会を開催する。
D後発医薬品に関する講習会を開催する。
E健保事務相談を実施する。
(2)組合業務の改善・効率化の推進
    @情報セキュリティ講習会を開催する。
Aパソコン研修会を開催する。
(3)保険者機能の強化
    データヘルス・コラボヘルスに関する研修会等を開催する。

3.医療費適正化対策の推進
 医療費の適正化対策を推進するため、次の事業を実施する。
(1)行政機関・医療関係諸団体との連携強化
@近畿厚生局・医療関係団体との連携を図る。
A大阪府保険者協議会医療費調査部会との連携を図る。
B国保運営協議会委員の活動強化を図る。
(2)審査支払機関との連絡・調整の緊密化
事務連絡協議会を開催し、審査結果事例等について審査委員との意見交換を行い、結果資料を提供する。
(3)医療費適正化に関する情報の収集と活用
@関係各方面からの情報収集および情報提供の促進を図る。
A柔道整復等療養費に関する情報の収集を行い、適正化の促進を図る。
B後発医薬品の使用促進を図る。
(4)レセプト点検等に関する研修会の実施
@改定診療報酬説明会を開催する。
Aレセプト点検事務に関する研修会を開催する。
B柔道整復等療養費に関する研修会を開催する。
C求償事務に関する研修会を開催する。
(5)医療対策室の活動強化
レセプト・保険給付相談および法律相談を実施する。

4.保健共同事業の推進
 会員組合における保健事業の円滑な実施が図れるよう支援する。
(1)健康教育の実施
生活習慣病対策に加えて、がん予防・メンタルヘルス等をテーマに研修会を開催する。
(2)保健師活動の実施
@保健師による特定健診・特定保健指導の円滑な実施を支援する等、相談事業を実施する。
A保健師の資質向上を図るため、研修会等への参加を支援する。
B保健師連絡協議会活動を支援する。
(3)大阪府保険者協議会との連携
保健活動部会との連携を図る。
(4)感染症対策
    インフルエンザ等感染症対策の普及啓発に努める。
(5)共同利用施設の契約
    ・保養施設の共同利用の契約。
・プール、アイススケート施設等利用券の斡旋。
(6)健康づくり活動の推進
    @生活習慣や生活環境が健康に及ぼす影響などの啓発活動に努める。
A健康経営・健康宣言の普及促進を図る。
B健康ウオーキング等、各種健康づくり活動を後援する。

5.総合組合の運営推進
 総合組合の運営に資するため、次の調査・研究事業を実施する。
    @総合組合の実態に関する調査資料を作成するとともに、財政状況を分析し検討する。
A第2期データヘルス計画の効果的な実施について検討する。
B医療費適正化対策について検討する。
C協会けんぽと財政状況等について比較し検討する。

令和2年度 収入支出予算概要
(単位 千円)