広報誌「かけはし」
 

■2020年2月 No.581



 厚労省は、平成30年度の「保険医療機関等の指導・監査等の実施状況」をまとめた。30年度に保険医療機関、保険薬局の指定取り消し処分を受けたのは、取り消し相当を含めて全国で24件、対前年度比4件減。保険医等の登録取り消し、取り消し相当は全国で19人、対前年度比1人増。指導・監査等の実施による返還金額は87億3840万円にのぼった。

 日本の医療は、そのほとんどが保険診療である。医療機関や薬局は、厚労省の地方厚生(支)局長に保険医療機関等の申請をして、指定を受ける。医師、歯科医師、薬剤師も、登録の手続きにより、保険医等として保険診療に従事できる。
 行政当局は、保険診療が常時適正に実施されているか指導・監査等を行う。極端で悪質な不正の場合には、保険医療機関等や保険医等を取り消す。処分を受けた医療機関等、医師等は処分期間中、保険診療ができない。処分前すでに廃止、登録抹消をしていても、「取り消し相当」として同様の取り扱いを受ける。
 平成30年度の保険医療機関等の指導・監査等の実施状況をみると、保険医療機関等と保険医等、合わせて次のとおりとなっている。▽個別指導4724件 ▽新規個別指導5962件 ▽適時調査3636件 ▽監査52件。
 監査の結果、取り消し・取り消し相当の処分を受けたのは、全国で保険医療機関等が24件、保険医等が19人だった。保険医療機関等取り消し24件のうち、不正発覚のきっかけとなったのは、保険者等からの情報提供によるものが17件で多数を占めた。保険者、医療機関従事者や、医療費通知を受けた被保険者からの訴えによる。
 診療報酬・調剤報酬請求のうち、詐欺や不法行為にあたるのが不正請求。不正のおもな形態は次のとおり。
 ▽架空請求=実際に診療していない者に対し、診療したように請求 ▽付け増し請求=診療行為の回数・日数、数量、内容等を実際に行ったものより多く請求 ▽振替請求=実際に行った診療内容を、保険点数の高い他の診療内容に振り替えて請求 ▽二重請求=自費診療を行って患者から費用を受領しているにもかかわらず、保険でも診療報酬を請求 ▽その他の請求=医師数、看護師数等が医療法の標準数を満たしていないにもかかわらず、入院基本料を減額せずに請求―など。
 指導・監査の結果、不正または不当請求が確認され、返還された金額は、87億3840万円にのぼった。内訳は、指導で32億7869万円、適時調査で49億3272万円、監査で5億2699万円となっている。
 
保険医療機関等の指導・監査の状況
指導・監査による返還金額