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睡眠と健康や病気との関係
―よりよい睡眠が取れるための工夫、睡眠とメンタルヘルス― |
11月29日、新梅田研修センターで心の健康講座を開催。滋賀医科大学 睡眠行動医学講座 特任教授 角谷 寛氏が「睡眠と健康や病気との関係―よりよい睡眠が取れるための工夫、睡眠とメンタルヘルス―」をテーマに講演されました。参加数は、42組合・53人。(以下に講演要旨) |
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角谷 寛 氏 |
睡眠は非常に身近なものですが、問題を感じている方も多くおられます。日本人の睡眠で最も多い問題は睡眠不足です。睡眠不足はパフォーマンスの低下や集中力の低下、さらには問題行動のリスクにもなります。日本は先進国のなかで、最も睡眠時間が短い国の1つで、“睡眠負債”による経済損失の割合が世界で最も高いことが知られています。

年齢と睡眠
睡眠は年齢によって変わっていきます。年齢とともに睡眠時間は短くなり、なかでも深い眠りの時間が短くなり、中途覚醒の時間が増えてくるのが普通です。そのために、高齢者は若い頃のような睡眠を取ることはできません。その一方で、退職後は就床時間が年齢とともに長くなる傾向にあります。そのために、床についていても実際には眠れていない時間が長くなり、かえって不眠感を増強させてしまっている方もおられます。その際には、就床時間の80〜85%程度が睡眠時間となるように就床時間を制限することで、睡眠を改善できることがあります。

不眠症とその治療
中途覚醒・早期覚醒や入眠困難があり、さらに眠気などの昼間に問題があるときには、治療が必要な不眠症が疑われます。寝室環境を整えたり、就寝前のカフェインや飲酒、喫煙を控えたりといった睡眠衛生に気をつけても不眠が続くときには、睡眠薬による治療の対象となります。そのときにも、必要最小限の量や期間にするなどの注意が必要です。以前からある睡眠薬(ベンゾジアゼピン系、あるいは非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬)は、長期間服用していると急にやめることが難しいことがありますが、その場合でも数カ月かけて徐々に減量していくことができます。
いびきがあり、寝ているときに息が止まる「睡眠時無呼吸」、夢に伴った体の動きがある「レム睡眠行動障害」、非常に強い眠気がある「ナルコレプシー」といった睡眠中の検査が診断に必要な睡眠障害もあります。そういった睡眠障害が疑われる際には、われわれのところのような睡眠専門の医療機関を受診することをお勧めします。よりよい睡眠を通して、健康長寿につながることを期待しています。 |
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