広報誌「かけはし」

■2020年1月 No.580

健保連大阪連合会 会長  小笹 定典

 新年あけましておめでとうございます。皆様にはご健勝にて新年をお迎えのこととお慶び申し上げます。
 昨年を顧みますと、政治・社会面では、夏の参議院議員選挙で、与党は改選議席の過半数を獲得して勝利しました。安倍首相は2012年9月に自民党総裁に復帰してから、国政選挙で6連勝したことになります。ここ数年安倍政権が取り組んできた労働政策と分配政策、「働き方改革」による残業時間への規制、「人づくり革命」による就学前教育の無償化、低所得者層への高等教育無償化などがそうした政策の柱であり、10月の消費税増税と就学前教育無償化でほぼ完了しました。
 また、スポーツ関係では、アジア初開催となったラグビーワールドカップは9月20日から始まり、44日間で45試合の熱戦が全国12会場で繰り広げられました。8強入りを果たした日本代表の活躍とともにラグビー熱が広がり、多くの感動と余韻を残し祭典は幕を閉じました。国際統括団体であるワールドラグビーのビル・ボーモント会長から「最も偉大なワールドカップとして記憶に残る。日本は開催国として最高だった」と高い評価を受け、ツイッターにも世界のラグビーファンから「日本ありがとう」のメッセージが寄せられたとの報道がありました。このことは今年の東京オリンピック・パラリンピックにも繋げていきたいものです。
 一方、医療保険の関係に目を移しますと、国民皆保険は、医学等の技術の進歩発展と高齢者人口の増により医療費が年々増加し、また、支え手である現役世代の減少とともに、財政的に制度の存続が危ぶまれる状況です。
 団塊の世代が後期高齢者に入り始める2022年度から医療費が急増することは明白であり、給付と負担の面で今の構造が崩れて新たな財政問題に直面します。現役世代や企業の保険料負担は限界に達しており、更なる負担増は、健保組合の解散に繋がります。
 給付と負担の見直しを含む制度改革は待ったなし、確実に実行することが必要ですが、給付と負担の見直しだけでは、この難局を乗り越えることは難しく、医療費の伸びを中長期的にどう抑制するか、医療費の適正化、保険者機能の強化も必要となります。
 昨年の11月には、被用者保険関係5団体で、医療保険制度改革に向けた共同の意見書を加藤厚生労働大臣あてに提出しました。意見書のなかでは、後期高齢者の窓口負担を原則2割とする方向での見直しや、拠出金負担は公費負担の拡充などにより現役世代の負担の軽減、保険者機能の強化など5項目を掲げ、これらの項目を政府の全世代型社会保障検討会議の取りまとめや、今年の「骨太方針2020」に反映させることを求めています。
 12月の全世代型社会保障検討会議がまとめた中間報告では、後期高齢者の窓口負担について「一定所得以上は2割」と明記し、団塊の世代が後期高齢者になり始めることを踏まえ、2022年度初めまでに実施すると示されています。
 しかしながら、「原則2割」にすることに対し、長期にわたり受診が必要な患者の生活に与える影響などから見送られており、2割枠を新設し、1割、2割、3割の3区分とされています。「応能負担」の考え方に基づく制度設計は、夏の最終報告に向けて社会保障審議会で議論するとされました。
 引き続き、健保組合、健保連としては、従来にも増して過重な拠出金負担の軽減、負担構造改革の早期実現、持続可能な社会保障制度を確立するという観点から、医療保険制度改革を実行することを積極的に訴えていく必要があります。また、健保組合の財政危機を打開し、国民皆保険制度を維持発展していけるよう健保組合の実情や改革のための具体案を、多くの人々に対して、わかりやすく説明し、改革実現に向けて取り組んでいかねばなりません。
 そのためにも、健保組合と健保連が、より一層連帯を強め、全力を挙げてこの難局に立ち向かっていかなければならないと考えております。
 大阪連合会は、健保連本部・各都道府県連合会・各関係団体とも十分に連携をとり、成果ある年にしたいと思います。皆様のこれまで以上のご指導、ご支援を心からお願い申し上げます。
 最後に、本年も皆様がご健勝・ご多幸で活躍されることを祈念して、新年のあいさつとさせていただきます。