広報誌「かけはし」

■2019年12月 No.579
 令和元年度健康保険組合全国大会が11月22日(金)12時から、東京・丸の内の東京国際フォーラム・ホールAで開催された。
 「迫る2022年危機! 今こそ改革断行を!―現役世代を守りたい! 国民皆保険を支えるために―」をテーマに掲げた全国大会には、4100人もの健保組合関係者が集まった。大阪からの参加者は200人を超えた。
 開会の辞、議長あいさつのあと、健保連の大塚陸毅会長が基調演説を行った。
 大塚会長は、『2022年危機の到来に警鐘をならし、政策提言「必要な医療保険の重点施策」を公表し、世論に訴えた。また、若者世代を主な対象とし、幅広い世代に対し、ツイッターによる広報を行った。そして、被用者保険関係5団体と共同で、厚生労働大臣に文書を取りまとめた。
 急激な少子高齢化のもと、現在の給付と負担のバランスは崩れ、2022年以降は団塊の世代が75歳に到達し始める。これにより高齢者医療費は大幅に増加し、制度全体の財政危機が懸念される。国民皆保険制度を将来に向けて持続させるため、今こそ全世代で支える医療保険制度の改革が不可欠である。
 これまで国は、取りやすい現役世代の保険料に依存した取り組みに終始してきた。これからは、こういった姿勢を改め、一歩踏み込んだ改革を実現すべきである。
 今は2022年危機を迎える前の、改革の最後のチャンスといって過言ではない。今後の取り組みによって、2022年以降の健保組合を取り巻く状況が大きく変わってくる。
 本日は、全国から健保組合や企業、労働組合の関係者の皆様にお集まりいただいた。また、各党の国会議員の方々にも多数ご出席をいただいている。健保組合加入者3000万人の思いを届け、改革を確実に進めていかなければならない』とした。
 続いて、大会のスローガン(@皆保険の維持に向けて、まずは高齢者の原則2割負担の実現A必要な公費の拡充。現役世代の負担増に歯止めB保険給付範囲の見直しによる医療費の適正化C人生100年時代。健康寿命延伸に資する保健事業の推進)を基にした大会決議案を、岡山県自動車販売健保組合の田中章夫常務理事が力強く朗読。決議を出席者全員の賛同で採択し、その場で土屋喜久厚生労働審議官に要請した。
全国大会次第
  開会の辞 (大会運営委員長)
    日立健康保険組合 内田好宣常務理事
  議長あいさつ 鹿児島県信用金庫健康保険組合
下窪洋一常務理事
  会長基調演説 健保連 大塚陸毅会長
  決議 岡山県自動車販売健康保険組合
田中章夫常務理事
  厚生労働大臣への決議の手交
  厚生労働大臣あいさつ
  政党代表あいさつ 自由民主党・公明党・立憲民主党
国民民主党・日本維新の会
  関係団体あいさつ
日本経済団体連合会
    日本労働組合総連合会
    日本商工会議所
    経済同友会
    全国健康保険協会
  特別企画 シンポジウム
  テーマ:人生100年時代に向けた保険者の役割
  シンポジスト
   江崎禎英
   経済産業省 商務・サービスグループ 政策統括調整官
   (兼)厚生労働省 医政局 統括調整官
   (兼)内閣官房 健康・医療戦略室 次長
   尾形裕也(九州大学名誉教授)
   長谷川貴彦(ワコール健康保険組合理事長)
  コーディネーター
   西沢和彦(鞄本総合研究所 調査部 主席研究員)
  閉会の辞 (大会運営副委員長)
    クボタ健康保険組合  片桐均常務理事

 世界に類のない優れた制度と評価される我が国の皆保険制度は、半世紀を超えて受け継がれ、国民の健康増進と長寿社会の実現に大きく貢献してきた。一方で、急速な高齢化や医療の高度化等により医療費は増加の一途をたどり、また支え手の現役世代の減少とともに、財政的に制度の存続が危ぶまれる状況に陥っている。特に、団塊の世代が75歳に到達しはじめる2022年以降、高齢者医療費の増加に伴い制度全体の財政悪化が更に急速に進むと見込まれる。今のまま放置すれば、皆保険制度を支えてきた健康保険組合は更なる負担増に耐え切れず解散を余儀なくされ、支え手を失い皆保険が極めて危機的状況に陥ることは明白である。
 この窮状を乗り超え、現役世代を守り、皆保険制度を将来世代へつなぐためには、「高齢者医療費の負担構造改革」を中心とした医療保険制度の抜本的な改革が不可欠である。
 現役世代に過度に依存することなく、公平な負担による「全世代型社会保障制度」を目指すべく、まずは高齢者の患者負担を75歳到達者から順次原則2割とし、高齢者にも応分の負担を求めるとともに、後期高齢者の現役並み所得者への公費5割投入、拠出金負担割合に50%の上限を設定し上限を超える部分は国庫負担とする―など、現役世代の拠出金負担に一定の歯止めをかけるべきである。
 また、制度の持続性を確保するためには、あらゆる方策を通じて医療費全体の伸びを抑制することが欠かせない。具体的には、個人が負担しきれない大きなリスクの保障を重視しつつ、「保険給付範囲の見直し」や「薬剤処方の適正化」を行うなど、医療費適正化対策を果断かつ着実に実行すべきである。同時に、我々健康保険組合をはじめ保険者も加入者一人ひとりが適切な受診行動を心掛け、医療費を大切に使う意識を持つよう啓発活動に一層取り組んでいかなければならない。
 健康保険組合は、これまで労使と一体となって加入者の実態に沿ったきめ細やかな保健事業を効果的に展開し、健康づくり・疾病予防等に取り組んできた。「人生100年時代」といわれる今、加入者の健康増進を通じて、健康寿命の延伸につながり健康な高齢者が元気に働き続ける「支える側」を増やす取り組みにも貢献できる健康保険組合の役割はより一層高まっている。これからも我々は保険者の先頭に立ち、国民の安心と健康の基盤である皆保険制度を中核となって支え続けていく決意である。
 目前に迫る“2022年危機”を乗り切るため、改革の断行を求め、我々健康保険組合は次の事項について組織の総意をもってここに決議する。
一、皆保険の維持に向けて、まずは高齢者の原則2割負担の実現
一、必要な公費の拡充。現役世代の負担増に歯止め
一、保険給付範囲の見直しによる医療費の適正化
一、人生100年時代。健康寿命延伸に資する保健事業の推進
令和元年11月22日
令和元年度健康保険組合全国大会
迫る2022年危機!今こそ改革断行を!
― 現役世代を守りたい!国民皆保険を支えるために ―

各界からメッセージ
 大会では、次の各界代表者から健保連・健保組合に対する協力や激励のあいさつ、メッセージを受けた。丸川珠代自由民主党社会保障制度調査会副会長、桝屋敬悟公明党政務調査会長代理、海江田万里立憲民主党最高顧問、羽田雄一郎国民民主党政策懇談会代表世話人、梅村聡日本維新の会厚生労働部会長、藤原弘之日本経済団体連合会社会保障委員会医療・介護改革部会長、神津里季生日本労働組合総連合会会長、安藤伸樹全国健康保険協会理事長、三村明夫日本商工会議所会頭、橋本圭一郎経済同友会副代表幹事・専務理事。
シンポジウム
 大会の後半では、「人生100年時代に向けた保険者の役割」と題してシンポジウムが行われた。シンポジストは、経済産業省 商務・サービスグループ 政策統括調整官 兼 厚生労働省 医政局 統括調整官 兼 内閣官房 健康・医療戦略室 次長の江崎禎英氏、九州大学 名誉教授の尾形裕也氏、ワコール健保組合 理事長の長谷川貴彦氏の3名。コーディネーターには、日本総合研究所 調査部 主席研究員の西沢和彦氏を迎えた。
 西沢氏が、シンポジスト3名のプレゼンテーションを基に意見を求める形で進められた。江崎氏は、「人生100年時代の社会保障について、日本の人口構造の変化や、時代や社会環境の変化による疾患の性質が変わっていること。疾患に見合った対応が必要で、医療行為を行う前にやるべきことがある。65歳以上の高齢者人口が年金制度をベースとしつつ、経済活動への緩やかな参加を維持することで自立を促し、生産年齢人口が競争力を有する経済活動を継続することを可能とするハイブリッド型社会を構築することが重要」と解説した。尾形氏は、「人生100年時代に向けた保険者の役割として、保険者機能のなかで、医療政策決定への関与が重要となる。地域医療構想への関与においても、保険者は医療法上に明記されており、期待の大きさが伺える。また、保険者の持つデータに基づいた説得力のある意見を表明することが必要で、データヘルスの理解やスキルの養成により、データに基づく課題等の具体的把握が重要となる」と説いた。長谷川氏は、「健保組合が健康経営に取り組む必要性として、働き手の減少や労働力の高齢化が進むなか、健康は重要な経営課題である。ワコール健康宣言やワコールGENKI計画2020を策定し、生活習慣病、がん、メンタルヘルスの対策を講じた。ただし、高齢者医療制度への拠出金などにより現状の活動が継続できるのか、健保財政の今後が最大の課題となっている」とまとめた。
 そして全国大会は、片桐均クボタ健保組合常務理事(大会運営副委員長)の閉会の辞で幕を閉じた。
国会議員へ大会決議の実現を強く要請
伊佐 進一 衆・公明
(大阪6区)
武田薬品 米澤 常務理事
大阪府電設工業 谷 常務理事
大阪連合会 長井 参与
大阪連合会 本田 主任
とかしき なおみ 衆・自民
(大阪7区)
武田薬品 米澤 常務理事
大阪府電設工業 谷 常務理事
大阪連合会 川隅 専務理事
大阪連合会 長井 参与
長尾 敬 衆・自民
(大阪14区)
クボタ 片桐 常務理事
ダイダン 佐伯 常務理事
大阪鉄商 石田 常務理事
大阪連合会 川隅 専務理事
大阪連合会 長井 参与
太田 房江 参・自民
(大阪府)
日本生命 島本 常務理事
塩野義 森口 常務理事
住商連合 福田 常務理事
大阪連合会 川隅 専務理事
大阪連合会 長井 参与
松川 るい 参・自民
(大阪府)
大阪自動車整備 藤原 常務理事
近畿日本鉄道 赤阪 常務理事
シャープ 松本 常務理事
大阪連合会 坂根 主事
大阪連合会 栗本 職員
矢田わか子 参・国民民主
(比例)
関西電力 松枝 常務理事
ヤンマー 石本 常務理事
サントリー 後藤 常務理事
大阪連合会 西本 事務局長
大阪連合会 事務局長補佐