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2020年度の診療報酬改定について、大枠が固った。
厚生労働省は関係者との議論のなかで「改定の基本的視点」として、@医療従事者の負担を軽減し、医師等の働き方改革を推進(重点課題)A患者・国民にとって身近であるとともに、安心・安全で質の高い医療を実現B医療機能の分化・強化、連携と地域包括ケアシステムの推進C効率化・適正化を通じた制度の安定性・持続可能性の向上――の4点を示した。
確かに、命を救う医師等の働き方改革は必要だが、それだけが重点課題に据えられたのは残念だった。色々な立場で色々な考え方があり、意見が分かれるところではあるが、医療保険者としては、制度の安定化・持続可能性の向上も、同じように重要な検討課題だと思うのである。なぜなら、団塊の世代が後期高齢者になり始める2022年が迫っており、その対策が急務だと考えるからだ。
健保組合の2020年度予算編成に直結する診療報酬改定について、財務省は財政制度分科会において、「診療報酬のマイナス改定は不可欠」との姿勢を明らかにした。その理由として、医科・歯科・調剤の技術料に対し、各科を取り巻く状況にかかわらず同じ改定率が設けられ、調剤医療費の伸びが大きい問題の解消や、国民医療費が年平均2.4%のペースで増加しているなか、国民負担を抑える必要がある、などがあげられた。
我々健保組合としては、高齢者医療への拠出金等で現役世代の負担が限界に達している現状において、マイナス改定となるのは評価できる。しかし、マイナス改定でも、現在の給付と負担のアンバランスな状況や、拠出金負担の内容が変わらなければ、根本的な解決にならないことは言うまでもない。国民皆保険制度の安定性・持続可能性を向上させるという視点を示すのであれば、より踏み込んだ改革が求められる。
後発医薬品の使用促進にかかる目標実現の推進、特に高齢者に多く見られる多剤投与(ポリファーマシー)への対応、医薬品や医療機器の費用対効果や、市場実勢価格を踏まえた適正な評価など、すでに俎上(そじょう)に載っている取り組みを確実に実施していくことが、改革の第一歩であると言えるのではないか。 |
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(M・S) |
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