広報誌「かけはし」

■2019年11月 No.578
栄養・食生活の改善から取り組む
働く人の生活習慣病予防対策

 9月19日、大阪商工会議所で健康セミナーを開催。大阪市立大学大学院 生活科学研究科 食・健康科学講座 公衆栄養学 教授 由田 克士氏が「栄養・食生活の改善から取り組む働く人の生活習慣病予防対策」をテーマに講演されました。参加数は、44組合・50人。(以下に講演要旨)

 
由田 克士 氏
特定健康診査・特定保健指導と連動する食環境整備のすすめ
 平成20年度から開始された特定健康診査において、動機付け支援もしくは積極的支援と判定され、特定保健指導によって減量を達成なさる方々は、決して少なくありません。
 その一方で、同じ事業所の従業員食堂において、揚げ物満載でお腹まんぷくの4桁メニュー(1食で1000kcal以上の定食)が提供され続けていたり、売店や自販機に甘い誘惑が多数取りそろえられていたりすると、減量の効果は長続きしません。「はやい、うまい、やすい、腹いっぱい」を売りにする従業員食堂や、健康的な商品を取り扱わない職域の売店や自販機の存在は、今の時代、生活習慣病のリスクのひとつとして位置づけられます。健康的なメニューや商品には負のイメージがつきまとうという方もおられますが、最近では、調理・加工技術の向上等により、他者から指摘されなければ気がつかないほど、おいしく、身体にもやさしい食事や飲食物が、職域でも数多く提供され始めています。このように、どこでも実施される特定健康診査・特定保健指導を軸に、これらと連動する形で、職域における食環境整備のさらなるレベルアップが求められています。

健康的な食事・食環境(スマートミール)認証制度
 この認証制度は、日本栄養改善学会、日本給食経営管理学会が中心となり、平成30年度に、健康な食環境整備をめざした「健康な食事・食環境」推進事業の一環として創設された制度です。事業所給食・外食・中食において、一定の基準を満たす「スマートミール」を継続的に提供し、そのうえで、健康的な空間(栄養情報の提供や受動喫煙防止等に取り組んでいる環境)を提供している事業所や店舗を認証します。
 この事業でいう「健康な食事」とは、健康に資する可能性のある栄養バランスのとれた食事のことを指し、具体的には主食、主菜、副菜のそろう食事のことです。複数の学協会からなる「健康な食事・食環境」コンソーシアムが審査を行い、一定の基準を満たせば認証となります。認証を受けた施設は、「健康な食事・食環境」のマークを使ってメニューやテーブルPOP等で「スマートミール」を提供している店舗であることをアピールすることができます。すでに全国の200弱の従業員食堂が認証を受けています。
 近い将来、いずれの職域においても、この種の認証を得ることが、栄養・食生活の改善から取り組む働く人の生活習慣病予防対策として、ごく当たり前のことになるものと期待されます。
 なお、この認証制度の詳細については、関連のホームページをご参照ください(各種検索サイトより「スマートミール」)。

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