広報誌「かけはし」

■2019年8月 No.575


幸福と心の健康を増進するためのポイント
〜強みを活かすポジティブ心理学〜

 6月27日、大阪商工会議所で心の健康講座を開催。関西福祉科学大学 心理科学部 心理科学科 教授 島井 哲志氏が「幸福と心の健康を増進するためのポイント〜強みを活かすポジティブ心理学〜」をテーマに講演されました。参加数は、43組合・50人。(以下に講演要旨)
島井 哲志 氏
1)ストレスと生きがい
 私たちの生活は、ストレスに満ちているといわれています。そして実際に多くの人たちは自分の生活にはストレスがあると回答します。これを年齢別にみると、30歳から50歳代が高くなっていますが、実は、この年代が仕事でも家庭でも最も充実している年代なのです。これは、実は、人生の充実とストレスは、ひとつの人生の課題の別の側面だからです。

2)ポジティブ感情の力
 ポジティブ心理学は、人間のこころのポジティブな側面にも注目していて、それらを活かして、心身ともに健康で幸福な状態をめざしています。その基礎となっているのは、ポジティブな感情の力です。ストレスのある状況でもポジティブな気持ちであることで新しい解決につながることがあります。楽しい気持ちをもっている人は、新しい発想を思いつきやすく、友人が多く、より健康的で長生きです。そして、それは自分で実現することもできます。

3)自分のポジティブな心の資源=強みを知る
 人生の充実をもたらす心のポジティブな資源は、伝統的には人徳と呼ばれてきました。ポジティブ心理学では、現在、これを6つの人徳(24の強み)にまとめています。そのリストでは、知恵(好奇心、向学心、判断力、独創性、見通し)、精神力(勇気、勤勉、正直、熱意)、人間性(親密性、親切心、社会的知能)、超越性(審美心、感謝、希望、ユーモア、精神性)、正義(忠誠心、公平性、リーダーシップ)、節制(寛容性、謙虚、自己制御、思慮深さ)があげられています。

4)得意な強みを活かす
 だれでも、自分の得意とする強みを3〜7つ程度もっています。私たちは、普段から、それらの強みは使っていますが、チェックリストなどから、より効果的に使うことができるようになります。このような課題をしてもらった結果、数週間の練習で、幸福感が高くなる効果があることが私たちの研究からも、また、多くの研究からも示されています。

5)強みを組み合わせる
 また、その時期にかなって発揮するべき強みもあるかもしれません。さらに、複数の強みを組み合わせることで相乗効果をもつ場合があることも知られています。災害という特別に困難な(つまり、非常に大きなストレスの)場面にあっても、複数の強みを活用し続けることで、幸福感が高まっていくことも知られています。

6)まとめ
 自分の強みを活かすことは、自分の視点から、問題を捉えることにつながり、自分の望んでいる自分の生き方に向かって成長していくことです。そして、このように自分を理解することは、他の人の強みを理解し、自分と違う生き方を支援するときにも大きな力となります。

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