広報誌「かけはし」

■2019年7月 No.574
 
投稿 言わしてんか!聞いてんか!

●時代に即した給付とは
 

 白血病薬「キムリア」の保険適用が承認された。これだけでは健保財政に与える影響は限定的とのことだが、今後も高額新薬の保険適用が増加することが見込まれるなか、「保険給付の範囲を見直す」ことが喫緊の課題との意見書を健保連と協会けんぽが共同で出した。もはや保険料収入を増やして対応するには限界に来ており、いよいよ給付に手を付けざるを得ない状況になったということなのだろう。ただし、当面議論となるのは、一部の市販品類似薬の適用除外にとどまる。
 もちろん軽症薬に対する改革は必要だが、超高額医薬品のみが問題なのではなく、年間でみれば1人でキムリア以上の金額となる医療はざらにあるし、また増えてもいる。特定の患者をターゲットとするのではなく、皆等しく一律に負担を負う枠組みも必要に思える。
 死守すべきは高額療養費制度であって、通常負担割合の医療については、一律に給付を落としても仕方ないだろう。個人が負担しきれないリスクに重点化する方向へ舵取りするのが意見書の趣旨でもある。
 保険料での負担増も、給付における負担増も等しく負担増である。どちらがよいかは一概には言えないし、時代状況によっても変わるだろう。給付の割合について7割を維持すると法律で決まってから状況は大きく変わっている。時代に即した給付の範囲を見つけることが必要だ。

(第4地区 K・Y)

   
●のしかかる社会保険料
 

 令和になり数カ月。改元前の4月末には各メディアで平成を振り返る記事や特番が数多く組まれ、30年の時の流れを再確認する機会となりました。
 日経平均が史上最高値を付けたのも消費税が導入されたのも平成元年。日本経済の絶頂期から始まった平成もバブルの崩壊後の長い低迷期や数々の大きな災害・人災などがありました。
 メディアでは株価や雇用統計などを基に経済の復調を強調し、今後の見通しが明るいかのようにお祝い気分を盛り上げていましたが、平成年間も記録を更新し続けた「国の負債」「医療費を含む社会保障費」「少子高齢化」が気になります。これらには関連があり、高齢化で医療費を含む社会保障費が増え、負債を増やしているといわれますが、家計も苦しくなるばかりです。
 社会保険料は伸び悩む給与を尻目に増えていきます。消費税の増税も控えていますので、景気回復の恩恵を実感できない身には、収入に占める社会保険料の増加が大きな負担です。せめて病気で支出を増やさないよう体調管理に努め、自己防衛するしかないと思う今日この頃。価値観や働き方の多様化、外国人労働者の増加など複雑になる社会に適応した制度への転換を期待します。

(第5地区 M・K)

 
●高額薬剤と保険財政
 

 世間的(患者)には喜ばしいことで、保険者の立場からも医学的には喜ぶべきことですが、一方保険財政面では大変苦しいことでもあります。
 それは“超”高額薬剤の承認です。現在は引き下げられましたが、当初は患者1人当たり年間3500万円かかるといわれた抗悪性腫瘍剤「オプジーボ」。初めの対象者は皮膚がんの一種「悪性黒色腫(メラノーマ)」で、少数と予想されていたものが、▽非小細胞肺がん▽腎細胞がん▽胃がんなどにも使用が承認され、適用範囲拡大による対象患者増の費用予測は年間1兆7500億円ともいわれ、薬価引き下げとなりました。
 また、この5月には対象患者が限定されるとはいえ、1回約3350万円の白血病薬「キムリア」が承認されました。
 アメリカでは、リンパ腫治療薬「イエスカルタ」(約4200万円)、網膜症疾患治療薬「ラクスターナ」(両目で約9500万円)等の高額薬が承認されていて、世界最高額となるのは、FDA(米国食品医薬品局)が承認したスイス製薬会社「ノバルティス」の脊髄性筋萎縮症(2歳未満幼児用)遺伝子治療薬「ゾルゲンスマ」(1回約2億3200万円)とのこと。これらは近い将来、日本での保険適用も予想されるかも?
 厚労省関係部会は「保険適用を経済性で判断できない」とするのに対し、財務省の財政分科会は「費用対効果評価の活用」と厚労省を牽制。医師会は「費用対効果を用いるべきではない」とする立場など、“命の値段”をめぐって関係機関の思惑が錯綜しているらしい。
 患者さんにとっては、いくら高額でも“こんなときのための保険”でしょうけど、保険者としては、ますます財政が心配です。

(第6地区 K・Y)
 

 
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