広報誌「かけはし」

■2019年4月 No.571


31年度事業計画・予算を決定

 健保連大阪連合会は3月27日、大阪市北区のホテルモントレ大阪で、平成30年度第2回総会を開催した。総会には大阪連合会の全173組合が参加(当日出席:143組合、委任出席:30組合)。大阪連合会の平成31年度事業計画案、同予算案などを審議、承認した。
 総会では、はじめに大阪連合会の小笹定典会長があいさつに立った。小笹会長は、これからの健保組合を取り巻く厳しい状況を「31年度政府予算は、我々が強く求めた被用者保険の拠出金負担軽減措置の増額が認められず、改革工程表2018においては、後期高齢者の窓口負担の見直しが先送りされたことは誠に遺憾」と述べた。
 そのうえで、団塊の世代が75歳に入り始める2022年から医療・介護費の増加が見込まれ、以後、急速に深刻化することは明らかであるとし、「日本が誇る国民会保険制度を存続させるため、抜本的な見直しを早急に行い、公平な負担を基本にした制度の再構築が必要」と強調した。
 そして、「健保組合の存在価値を高めるため、コラボヘルスによる特定健診・特定保健指導、データヘルス計画を積極的に推進し、保険者機能を発揮することが大切」とし、最後に、健保連本部、都道府県連合会、各関係団体とも連携を密にし、目的達成に向けて取り組んでいきたいとまとめた。
 続いて、来賓として出席された近畿厚生局の久保西美代子保険課長があいさつした。
 久保西課長はこのなかで、平成31年度健保組合予算編成を踏まえた一般保険料率の状況を報告した。
 それによると、近畿厚生局管内で保険料率変更を申請したのは30組合。内訳は、引き上げ18組合、引き下げ12組合となっている。保険料率が100‰以上の組合は86組合に達し、管内269組合に対し3割を超えている。保険料率を引き下げた組合の多くは、数年前の大幅増による財政黒字化・健全化を経て、適正に見直されたというべきで、一概に財政黒字のために引き下げたとはいえない状況である。
 また、増大する高齢者医療費に対する過重な負担の問題や、医療の高度化に伴う高額医薬品等の保険適用も、健保組合財政に直結する問題となる。健保組合には、これまで培った豊富な知識と経験を活かし、さらなる保険者機能の発揮・強化に取り組んでほしいと説明があった。
 この後、議事に入り小笹会長が議長となって、象印マホービン健保組合、大阪婦人子供既製服健保組合の2組合を議事録署名者に指名した後、議案の審議を行った。
 総会終了後には、来賓として出席された健保連本部の佐野雅宏副会長から、中央情勢報告(こちらに要旨掲載)があった。

 ●総会の経過
 議案第1号
 平成31年度事業計画(案)
 議案第2号
 平成31年度収入支出予算(案)
 議案第3号
 平成31年度支出予算の款内各項間の流用を理事会に委任すること
  以上の3議案を一括上程し、いずれも原案どおり承認された。
 議案第4号
 平成30年度被用者保険運営円滑化推進事業会計収入支出予算および同説明(案)
  以上、原案どおり承認された。

 ●健康保険組合をめぐる諸情勢
 
(1)医療・介護保険制度を取り巻く諸情勢
   政府は2018年6月に「経済財政運営と改革の基本方針2018」(骨太方針)、「未来投資戦略2018」を閣議決定した。骨太方針では、2019年10月に予定している消費税10%への引き上げを実施する方針を明記したうえで、全ての団塊の世代が75歳以上になる2025年度のプライマリーバランスの黒字化を目指し、財政健全化を進める方針が示された。また、2022年には団塊の世代が75歳になり始めるため、2019〜2021年度を「基盤強化期間」と位置づけ、経済成長と財政を持続可能にすべく、現在の改革工程表を改定し、年末に新たな改革工程表を策定するとした。2018年12月に経済財政諮問会議で取りまとめられた「新経済・財政再建計画の改革工程表2018」における社会保障分野では、データヘルスの促進など61項目が決定されたが、後期高齢者の自己負担のあり方など「給付と負担の見直し」に関する事項については、引き続き検討課題とし、2020年に策定される骨太方針2020で対応することとなった。未来投資戦略では、重点分野の1つに、「次世代ヘルスケア・システムの構築」を掲げており、個人・患者本位の新しい「健康・医療・介護システム」を2020年度から本格稼動を目指して構築することとなった。新たに講ずべき具体的施策の1つとして、データヘルス改革の基盤となる被保険者番号の個人単位化、オンライン資格確認システムについても2020年度から開始する方針が示された。
 2018年12月、2019年度政府予算案が閣議決定された。予算案は、2019年10月からの消費税増収を見込み、全世代型社会保障の基盤の強化を目指すものの、高齢化による自然増の伸び6000億円を年間4800億円程度に抑えるなど、社会保障関係費に対する抑制措置が盛り込まれている。
 なお、健保連が増額を要請していた被用者保険の拠出金支援及び介護納付金の総報酬割導入に伴う負担軽減措置は、昨年度と同様の予算が計上され、新たに措置された保険者機能強化支援事業については概算要求時から減額されており、健保組合にとっては、引き続き厳しい状況が続く内容となっている。
 健保連では昨年10月に健保組合全国大会で決議した「STOP現役世代の負担増!改革の先送りは許さない―事業主・加入者と連携し「健康」「安心」そして皆保険を守り抜く―」をめざして、@拠出金負担に50%の上限、現役世代の負担に歯止めを A高齢者の2割負担など負担構造改革の早期実現 B実効ある医療費適正化対策の確実な実施 C保健事業の推進による健康寿命延伸と社会保障の支え手の確保を、のスローガンを掲げ、健康寿命の延伸にも貢献して健康な高齢者を増やし、支えられる側から支える側への転換を図る等、持続性のある国民皆保険制度の確立に向けて積極的に取り組んでいくこととしている。
(2)健保組合(大阪)の財政状況
   健保組合の財政状況は、平成29年度決算では、保険料率の引き上げ等により全体では経常収支で4年連続の黒字となった。しかし、保険料収入に対する拠出金の割合は43.05%で、組合財政にとっては過重な負担が続き、42%の組合が経常収支赤字となっている。また、保険料率の平均は92.49‰となり、前年度より0.67ポイント上昇し、協会けんぽの平均である100‰以上の組合は、前年度から2組合増加し44組合で、全体の26.99%となっている。引き続き、「現役世代の負担は限界に達している」と、高齢者医療費の負担構造改革等の必要性を広く国民に示しながら、増大する医療費の適正化対策として、事業所とのコラボヘルスの実施によって第2期データヘルス計画を推進するとともに、レセプト点検の強化、療養費の適正化、後発医薬品の使用促進など、きめ細かく取り組んでいく必要がある。
(3)大阪連合会の事業等
   大阪連合会では、各健保組合・各地区会をはじめ、理事会・各委員会において、常に真摯な議論を重ねて、当面する課題に取り組んでいる。
 本年度は、引き続き各関係団体と連携しながら、皆保険制度を守り抜くため広く国民に理解していただくよう積極的に活動を展開していくこととし、主張の実現に向けた活動も含め、次の事業計画に基づき、所期の目的を達成すべく、事業活動を実施する。


事 業 計 画
 
〔基本方針・活動〕
(1)重点事業活動
   医療保険制度の改革に向けた対応および保険者機能の強化に向け、会員組合の協力を得ながら健保連本部との連携を密にして、次の事項について取り組む。
  @理事会・委員会・地区会活動を積極的に推進する。
A健保組合・健保連の主張実現に向け、政党・国会議員への効果的な要請活動を展開する。
B機関誌「かけはし」やホームページなどを通じての広報活動により、健保組合・健保連の主張や活動の周知を図り、理解度を高める。
C第2期データヘルス計画・コラボヘルスの推進に向けて、保険者機能強化への支援を行うとともに、健康経営・健康宣言の普及促進を図る。
D健保組合のICT化推進に向けて支援を行う。
E健保組合全国大会への積極的な参加を推進する。
F健保組合の円滑な運営のため、行政機関と密接な連携を保つ。
G関経連、連合大阪、協会けんぽ大阪支部との連携を図る。
H医師会等医療関係団体とは意見交換を通じて相互理解を深める。
I大阪府保険者協議会では、医療費の適正化・有効な保健事業・地域医療構想の取り組みについて、健保組合・健保連の意向を反映させる。
J国保運営協議会へは、被用者保険サイドの意向を反映させるよう積極的に参加する。
K近畿地区各連合会と密接な連携を図る。
L他府県の健保組合も加えた保健事業等に取り組み、連帯感を醸成する。
M組合運営サポート事業など、時宜に応じた諸対策を実施する。
(2)組織活動
   組織活動の強化を図り、次の事項を実施する。
  @理事会および総会を開催する。
A地区会長会議、各種委員会等を開催する。
B地区会を中心とした諸活動を支援する。
C主張実現に向けたシンポジウム等を開催する。
(3)組合運営に対する支援活動
   会員組合の円滑な業務推進に資するため、次の事項を実施する。
@会員組合専用サイトを活用し、円滑な情報提供・充実を図る。
A組合予算編成等事務説明会を開催する等、行政機関および健保連本部と連携を密にして支援する。
B永年勤続者表彰式を挙行する。
C会員組合の保健事業、医療費適正化対策の推進を支援する。
D会員組合に有効な健保事務、法律、レセプト・保険給付、特定健診・特定保健指導等の相談事業を充実する。
〔事業活動〕
1.広報活動の推進
 広報活動の充実を図るため、次の事業を実施する。
(1)機関誌「かけはし」の発行
@誌面の充実を図り、月1回発行する。
A次の項目を重点的に掲載する。
・医療保険制度改革関連(高齢者医療費の負担構造改革、健保組合の運営安定化に向けた国の財政支援の拡充等)。
・医療費適正化関連と健康づくり関連。
・大阪連合会の事業活動。
・会員組合の財政状況と地区会の事業活動。
・政党、国会議員への要請活動。
・主張実現に向けたシンポジウム等。
(2)広報活動の強化
@会員組合の事業活動の推進に役立つようホームページの充実を図る。
A会員組合が行う広報活動に役立つ研修会を開催する。
B会員組合の広報活動に具体的に役立つ広報資料を提供する。
(3)関係団体等に対する対外広報の強化
   次の関係団体等への機関誌配布を通じ、健保組合・健保連の主張と事業活動への理解の浸透を図る。
・国会議員(大阪府選出および社会保障関係)。
・経営者団体、労働団体および医療関係団体。
・その他 必要な関係者。

2.会員組合役職員の資質向上と組合業務の改善・効率化の推進
 会員組合の円滑な事業運営を支援するため、次の事業を実施する。
(1)会員組合役職員の資質向上
@事務長・中堅職員等研修会を開催する。
A組合業務別実務講習会(適用・給付・庶務会計)を開催する。
B初任者実務講習会を開催する。
C個人情報保護研修会を開催する。
D後発医薬品に関する講習会を開催する。
E健保事務相談を実施する。
(2)組合業務の改善・効率化の推進
    @情報セキュリティ講習会を開催する。
Aパソコン研修会を開催する。
(3)保険者機能の強化
    データヘルス・コラボヘルスに関する研修会等を開催する。

3.医療費適正化対策の推進
 医療費の適正化対策を推進するため、次の事業を実施する。
(1)行政機関・医療関係諸団体との連携強化
@近畿厚生局・医療関係団体との連携を図る。
A大阪府保険者協議会医療費調査部会との連携を図る。
B国保運営協議会委員の活動強化を図る。
(2)審査支払機関との連絡・調整の緊密化
事務連絡協議会を開催し、審査結果事例等について審査委員との意見交換を行い、結果資料を提供する。
(3)医療費適正化に関する情報の収集と活用
@関係各方面からの情報収集および情報提供の促進を図る。
A柔道整復等療養費に関する情報の収集を行い、適正化を促進する。
B後発医薬品の使用促進を図る。
(4)レセプト点検等に関する研修会の実施
@レセプト点検事務に関する研修会を開催する。
A柔道整復等療養費に関する研修会を開催する。
B求償事務に関する研修会を開催する。
(5)医療対策室の活動強化
レセプト・保険給付相談および法律相談を実施する。

4.保健共同事業の推進
 会員組合における保健事業の円滑な実施が図れるよう支援する。
(1)健康教育の実施
生活習慣病対策に加えて、がん予防・メンタルヘルス等をテーマに研修会を開催する。
(2)保健師活動の実施
@保健師による特定健診・特定保健指導の円滑な実施を支援する等、相談事業を実施する。
A保健師の資質向上を図るため、研修会等への参加を支援する。
B保健師連絡協議会活動を支援する。
(3)大阪府保険者協議会との連携
保健活動部会との連携を図る。
(4)感染症対策
    インフルエンザ等感染症対策の普及啓発に努める。
(5)共同利用施設の契約
    ・保養施設の共同利用の契約。
・プール、アイススケート施設等利用券の斡旋。
(6)健康づくり活動の推進
    @生活習慣や生活環境が健康に及ぼす影響などの啓発活動に努める。
A健康経営・健康宣言の普及促進を図る。
B健康ウオーキング等、各種健康づくり活動を後援する。

5.総合組合の運営推進
 総合組合の運営に資するため、次の調査・研究事業を実施する。
    @総合組合の実態に関する調査資料を作成するとともに、財政状況を分析し検討する。
A第2期データヘルス計画の効果的な実施について検討する。
B医療費適正化対策について検討する。
C協会けんぽと財政状況等について比較し検討する。

平成31年度 収入支出予算概要
(単位 千円)