広報誌「かけはし」

■2019年1月 No.568


職場のメンタルヘルス
〜理解と対応のポイント〜

 11月30日、大阪商工会議所で心の健康講座を開催。大阪市立大学大学院 医学研究科 神経精神医学 准教授 岩ア 進一氏が「職場のメンタルヘルス〜理解と対応のポイント〜」をテーマに講演されました。参加数は、40組合・52人。(以下に講演要旨)
岩ア 進一 氏
 現在の企業で一般的になされているメンタルヘルス対策は、古典的な内因性うつ病に対して作られています。内因性うつ病の患者は真面目で熱心で、病識がなく、治療を受けたがらず、会社のサポートを拒否し、対応者からは理解困難な場合が多かったように思います。
 しかし、現在のメンタル疾患は内因性うつ病のような精神病圏以外の、適応障害、抑うつ状態、新型うつ病などの、辛いことがあって病気になる、辛いことはできなくなるという、理解しやすいものが増えてきています。これらは従来の対応では上手くいかず、オーダーメイドの対応が必要になります。これらの対応困難な事例と対応について5つ紹介させていただきました。
 病識がなく、言うことを聞かない症例では、病識のない就労者の対応として、最終目標は病院の受診と薬物療法継続であり、治療にのせる働きかけを続けること、家族への働きかけ、受診命令を上手く利用することについてお話させていただきました。
 困った診断書を持ってくる症例では、主治医との面談を利用し、情報提供しながら条件のすりあわせをすること、限界設定を確認する、会社側に改善すべきところがある場合は改善すること、休職へ差し戻しもやむを得ないことをお話させていただきました。
 会社を責める症例では、医療問題なのか労務問題なのかをもう一度よく考えること、きちんと労働者と話し合いをして、容易に医療の問題にすることの危険性をお話させていただきました。
 仕事ができない症例では、発達障害の症例を元に、発達障害は治療するという概念ではとらえきれないため、これまでの対応方法では難しいこと、注意、叱責などは効果が乏しく、かつ二次障害の原因になるため、できない部分を改善するより、できる部分を伸ばす方向で考えること、障害への周囲の理解が必要であることをお話させていただきました。
 何度も休職復職を繰り返す症例では、適応障害の症例を元に、環境に問題があることを疑い、環境の問題を解決することを優先すること、会社と労働者お互いに時間、人生の時間を無駄にしないことを目指すことをお話させていただきました。
 すべてを通しては、メンタルヘルス対応はどんなことでも放置はせず、対応をしようとする努力が必要であることが重要だと思います。その姿を見せることは、きっと治療的効果を持つことと思います。

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