広報誌「かけはし」

■2018年11月 No.566
 平成30年度健康保険組合全国大会が10月23日(火)12時から、東京・丸の内の東京国際フォーラム・ホールAで開催された。
 「STOP 現役世代の負担増! 改革の先送りは許さない ―事業主・加入者と連携し『健康』『安心』そして皆保険を守り抜く ―」をテーマに掲げた全国大会には、約4000人を超える健保組合関係者が集まった。大阪からの参加者は200人を超えた。
 開会の辞、議長あいさつのあと、健保連の大塚陸毅会長が基調演説を行った。大塚会長は、高齢者医療制度への拠出金の増加により、多くの加入者を抱える健保組合の解散など、将来の展望が見通せないという現行制度の問題がある。健保組合が解散することで、協会けんぽへの国庫補助が増加し、国民負担が数百億円も増えることが想定されることに、強い危機感を感じている。
 こうした厳しい状況のもと、我々は「高齢者医療費の負担構造改革」を最重要課題として、さまざまな活動を展開している。なかでも、高齢者の就労機会を増やし、社会保障の支える側になっていただくため、健康寿命を延ばし、働き方改革をはじめとした高齢者の就労環境の整備などを後押しする施策を求めている。
 国民皆保険は国民の安心の礎である。支える側が倒れ、制度が崩壊しては取り返しがつかない。国会議員の先生方やマスコミにも我々の主張や要求を理解していただける方々が徐々に増えている。しかし、まだまだ力不足な感は否めず、さらに現行制度の不合理を自らの問題として理解し、本日ご参集の健保組合関係者のみなさまの引き続きのご尽力・ご協力をお願いしたい、とした。
 続いて、健保連の佐野雅宏副会長が、大会決議と、スローガン(@拠出金負担に50%の上限、現役世代の負担に歯止めをA高齢者の2割負担など負担構造改革の早期実現B実効ある医療費適正化対策の確実な実施C保健事業の推進による健康寿命延伸と社会保障の支え手の確保を)の趣旨を説明した。
 このあと、北海道電力健保組合の武田伸一常務理事が大会決議案を力強く朗読。決議を出席者全員の賛同で採択し、その場で鈴木康裕厚生労働医務技監に要請した。
全国大会次第
  開会の辞 (大会運営委員長)
    日立健康保険組合 内田好宣常務理事
  議長あいさつ 三菱健康保険組合 瀬川雅晶理事長
  会長基調演説 健保連 大塚陸毅会長
  決議の趣旨説明 健保連 佐野雅宏副会長
  決議 北海道電力健康保険組合 武田伸一常務理事
  厚生労働副大臣への決議の手交
  厚生労働副大臣あいさつ
  政党代表あいさつ 自由民主党・公明党・立憲民主党・国民民主党
  関係団体あいさつ 日本経済団体連合会
    日本労働組合総連合会
    全国健康保険協会
    日本商工会議所
  講演
   江崎禎英
   経済産業省 商務・サービスグループ 政策統括調整官
   (兼)厚生労働省 医政局 統括調整官
   (兼)内閣官房 健康・医療戦略室 次長
  閉会の辞 (大会運営副委員長)
    クボタ健康保険組合  片桐均常務理事

 わが国の国民医療費は、急速な高齢化や医療の高度化等により増加の一途を辿っている。特に高齢者の医療費は全体の約6割を占め、これを支える現役世代の負担は際限無く増えている状況にある。健保連の推計では、全ての団塊の世代が後期高齢者となる2025年度には、国民医療費は58兆円に増加し、支える側も生産年齢人口の減少により被保険者1人当たりの年間保険料は2017年度に比べ約17万円も増加する。現状、すでに現役世代の負担は限界に達しており、今後、これをさらに大きく超えることが確実である。
 これまで、国民皆保険制度の中核を担ってきた我々健康保険組合は、高齢者医療制度への過重な費用負担により、長年に渡り厳しい財政運営を強いられてきた。その重すぎる負担に止むなく解散を選択せざるを得ないなど、今まさに自らの存立さえ危うい存亡の危機にある。このままでは支える側と支えられる側が共に倒れ、国民生活の安心の基盤である「皆保険制度」の崩壊が現実のものとなる。
 制度の持続性を高め、国民の安心を確保するためには、来年10月の消費税率引き上げ等により財源を確保し、現役世代に偏った負担の不均衡を是正する「高齢者医療費の負担構造改革」を断行しなければならない。少なくとも、拠出金負担に50%の上限を設け、50%を超える部分は国庫負担として、現役世代の負担に一定の歯止めをかけるべきである。
 同時に、高齢者の患者負担を2割とするなど、高齢者にも応分の負担を求めるとともに、「生涯現役」「高齢者の就労機会の増」等、社会保障という御輿の担ぎ手である支える側を増やすことによって、公平な負担による「全世代型の社会保障制度」の実現を目指すことが必要である。
 もはや一刻の猶予もない。国はこうした現状と皆保険制度の価値を十二分に認識し、改革に向けて早急に踏み出すべきである。
 我々健康保険組合は、これまで自主・自立の精神のもと、労使と一体となって、加入者の実態に沿ったきめ細かい健康保持・増進、疾病予防などの効果的・効率的な保健事業を展開してきた。これからも優れた保険者機能を発揮して、データヘルスや健康経営などに取り組み、従業員とその家族3000万人の健康と安心を守るとともに、健康寿命の延伸にも貢献して健康な高齢者を増やし、支えられる側から支える側への転換を図ること等、持続性ある制度の確立に向けて取り組み、わが国の宝である皆保険制度を守り抜く決意である。
 改革の先送りは許さない。ここに我々健康保険組合の決意と覚悟を示し、次の事項の実現を期し組織の総意をもって決議する。
一、拠出金負担に50%の上限、現役世代の負担に歯止めを
一、高齢者の2割負担など負担構造改革の早期実現
一、実効ある医療費適正化対策の確実な実施
一、保健事業の推進による健康寿命延伸と社会保障の支え手の確保を
平成30年10月23日
STOP 現役世代の負担増! 改革の先送りは許さない
事業主・加入者と連携し「健康」「安心」そして皆保険を守り抜く
平成30年度 健康保険組合全国大会

各界からメッセージ
 大会では、次の各界代表者から健保連・健保組合に対する協力や激励のあいさつ、メッセージを受けた。小泉進次郎自由民主党厚生労働部会長、桝屋敬悟公明党政調会長代理、海江田万里立憲民主党最高顧問、羽田雄一郎国民民主党政策懇談小委員会代表世話人、井上隆経団連常務理事、神津里季生連合会長、安藤伸樹協会けんぽ理事長、三村明夫日本商工会議所会頭。
講演
 大会の後半では、「超高齢社会への対応―社会保障制度改革の視点―」と題して、経済産業省 商務・サービスグループ 政策統括調整官 兼 厚生労働省 医政局 統括調整官 兼 内閣官房 健康・医療戦略室 次長の江崎禎英氏による講演が行われた。
 江崎氏は、これからは「人生100年時代」に突入する。誰もが健康で長生きすることを望み、それが可能になれば、社会は必然的に高齢化することから、高齢化は対策すべき課題ではない。取り組むべき課題は、@与えられた時間を如何に楽しく、健康に生きるかA折り返した人生における「幸せの形」を見つけること―である。
 また、時代や社会環境の変化に伴い、疾患の性質が変化しており、疾患の変化に見合った対応が必要であり、医療行為を行う前にやるべきことがある。
 そして、わが国においては、生産年齢人口(15〜64歳)と高齢者(65歳〜)人口が同程度となり期間が比較的長期間継続することが予想される。こうした人口構造を前提としつつ、活力ある安定した社会を形成することが求められる。このためには、65歳以上の高齢者人口が年金制度をベースとしつつ、経済活動への緩やかな参加を維持することで自立型の経済プレーヤーとなり、生産年齢人口が競争力を有する経済活動を継続することを可能にするハイブリッド型の社会を構築することが重要、とした。
 全国大会は、片桐均クボタ健保組合常務理事(大会運営副委員長)の閉会の辞で幕を閉じた。
全国紙に意見広告
 健保連は、全国大会をピークにした要求実現活動の一環として、全国紙ならびにWEB広告により次のような意見広告を掲載した。
 大会当日の23日(火)、日本経済新聞朝刊に、タイトル「健康保険の2025年問題」として、すべての団塊の世代が75歳以上となる2025年には高齢者医療費が著しく増加し、それを支える現役世代の負担のさらなる増大が見込まれるなか、世界に誇る国民皆保険を守るための制度改革が早急に必要であること等を訴えた。
国会議員へ大会決議の実現を強く要請
伊佐 進一 衆・公明
(大阪6区)
武田薬品 竹内 常務理事
大阪府電設工業 谷 常務理事
パナソニック 小寺 主事
大阪連合会 川隅 専務理事
とかしき なおみ 衆・自民
(大阪7区)
武田薬品 竹内 常務理事
大阪府電設工業 谷 常務理事
パナソニック 小寺 主事
大阪連合会 川隅 専務理事
長尾 敬 衆・自民
(大阪14区)
クボタ 片桐 常務理事
大阪鉄商 石田 常務理事
ダイダン 平井 常務理事
大阪連合会 西本 医療対策室長
大阪連合会 主事
大阪連合会 本田 職員
松川 るい 参・自民
(大阪府)
大阪自動車整備 藤原 常務理事
近畿日本鉄道 赤阪 常務理事
シャープ 松本 常務理事
大阪連合会 長井 参与
太田 房江 参・自民
(比例)
塩野義 森口 常務理事
住商連合 賀屋 常務理事
大阪連合会 山田 事務局長
大阪連合会 坂根 主任
大阪連合会 栗本 職員
矢田わか子 参・国民民主
(比例)
関西電力 松枝 常務理事
ヤンマー 朝倉 常務理事
サントリー 伊藤 常務理事
大阪連合会 川隅 専務理事
大阪連合会 長井 参与