広報誌「かけはし」
 

■2018年10月 No.565



 健保連は9月25日、全国1394健保組合の2017年度決算見込みを発表した。経常収支は1346億円の黒字で、4年連続の黒字決算となったが、黒字額は前年度と比べると1030億円減少(43.4%)した。これは、健康保険の適用拡大による被保険者数や賞与の増加、保険料率の引き上げにより収入は増加したが、後期高齢者支援金が全面総報酬割に拡大されるなど拠出金の大幅な増加により、支出が収入を上回ったため。全組合の14.6%にあたる204組合が料率を引き上げ、その結果、平均保険料率は9.167%に上昇した。赤字の組合も580組合(41.61%)あり、健保組合財政はいぜん厳しい状況が続いている。

204組合が料率引き上げ 580組合が赤字
 2017年度健保組合決算見込みは、全国1394健保組合の決算状況を集計したもの。それによると、経常収支は1346億円の黒字。2016年度(黒字額=2376億円)に続き、4年連続の黒字決算となったが、黒字額は対前年度比1030億円(43.4%)減少した。
 経常収入は8兆1999億円。このうち大半を占める保険料収入は、2368億円増(3.02%増)の8兆843億円だった。
 健保連では、保険料収入増加の要因を、次のように分析している。被保険者数の増加1606億円(増額の67.8%)、保険料率の引き上げ666億円(増額の28.1%)、賞与額の増加168億円(増額の7.1%)、標準報酬月額の減少72億円(△3.0%)。
 また、保険料率を引き上げた健保組合は204組合あり、引き上げざるを得ない一番の要因は、高齢者医療への多額な拠出金。法定給付費と高齢者医療への拠出金を合わせた義務的経費に占める拠出金割合は47.35%に達している。
 保険料率引き上げの結果、全国の健保組合の平均保険料率(調整保険料率含む)は、前年度より0.057ポイント増加して9.167%となった。
 平均保険料率は、2008年の高齢者医療制度創設以降、毎年上昇し、協会けんぽの保険料率(10.0%)にさらに近づいた。個別にみると、すでに協会けんぽの料率以上の組合が314組合(22.5%)である。
 健保組合全体の経常収支は黒字だったが、個別組合の状況をみると、1394組合中、580組合(41.61%)は赤字となっている。
 2018年4月以降に解散した12組合の平均保険料率は10.403%(最高12.089%、最低9.000%)であった(2017年4月1日付解散3組合・同年10月1日付解散3組合・2018年4月1日付解散6組合)。そのうち、10%以上の組合は10組合であった。
 おもな適用状況は、被保険者数が対前年度比約33万人増(2.06%増)の約1651万人で過去最多を更新した。被扶養者数は約9万人減(0.68%減)の約1313万人で、こちらも過去最少を更新した。被保険者数と被扶養者数を合わせた総加入者数は約2964万人で約24万人増(0.83%増)となった。平均標準報酬月額が421円減(0.11%減)の37万509円、賞与額が1万1819円増(1.06%増)の112万9677円だった。
 
表1.過去5年間の推移
1年間の拠出金 3兆5000億円超す
 おもな経常支出科目をみると、法定給付費が対前年度比826億円増(2.15%増)の3兆9218億円となっている。被保険者1人当たり額は207円増(0.09%増)の23万7501円、加入者1人当たり額では1711円増(1.31%増)の13万2296円となった。
 拠出金総額は2446億円増(前年度比7.45%増)の3兆5265億円。内訳は、後期高齢者支援金が1兆8324億円(同9.10%増)、前期高齢者納付金が1兆5942億円(同6.34%増)、退職者給付拠出金が999億円(同3.20%減)。
 後期高齢者支援金は、総報酬割部分が3分の2から全面的に拡大された影響で、また、前期高齢者納付金は、団塊世代の人員増や2015年度精算分が追徴となったことで大幅に増加した。一方、退職者給付拠出金は、2014年度末までで退職被保険者の新規適用が終了しており減少となった。
 1年間の拠出金総額はゆうに3兆円を超え、義務的経費に占める拠出金負担割合は47.35%となり、拠出金が義務的経費の5割を超える組合は490組合(全組合の35.2%)である。
 一方、財政指標をみると、義務的経費の保険料収入に対する割合は92.1%となっている。なかには、保険料収入では義務的経費すら賄えない100%超の組合が240組合(全組合の17.2%)あった。
 保健事業費は、「データヘルス計画」などが実施されているにもかかわらず、対前年度比109億円増(3.33%増)の3385億円にとどまった。
 これらにより、経常支出は前年度に比べて3405億円増(4.41%増)の8兆653億円となった。経常収入から経常支出を差し引いた1346億円が2017年度の黒字額となっている。
介護納付金の大幅な増加
 総報酬割の導入により介護納付金は前年度比861億円増(11.70%増)の8218億円と大幅に増加した。1人当たり額は9万2808円で、前年度比7291円増(8.53%増)となった。これには、介護保険料率の引き上げや準備金の取り崩しで対応せざるを得なかった。
 平均介護保険料率は1.465%で、前年度比0.044ポイント増加し、料率を引き上げた組合は428組合(全組合の30.7%)だった。
 
表2.おもな適用状況
表3.おもな経常収支状況                 (単位:億円)
※単位未満の数は四捨五入しているため、各項目の計と合計が一致しないことがある。