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「骨太の方針」と「予算概算要求」を見て
〜高齢者医療費の負担構造改革を望む〜 |
政府は「経済財政運営と改革の基本方針2018」(いわゆる骨太の方針)を6月に閣議決定し、8月30日には厚生労働省の2019年度の予算概算要求関係資料が公表された。
「骨太の方針」では、社会保障関係費の実質的増加を高齢化による増加分に相当する伸びにおさめることを2021年度まで継続するとしており、国民負担の増加を抑制していく方向性が示されている。また、健康な高齢者を増やすための施策が盛り込まれており、それらの点では評価できる。
しかし、来年10月に実施される予定の消費増税分の使い道のひとつとして、健保連が要求してきた、高齢者医療への追加財源とすることは触れられていない。使い道として、幼児教育の無償化など子育て支援策が中心になっている。
さらに、後期高齢者の窓口負担の見直しについて具体化されておらず、先送りされかねない内容となっている。また、勤労世代の負担軽減策は盛り込まれていない。
この方針を受けて、健保連本部より、政府に高齢者医療の再考を求める次のようなコメントが発表された。「・・・・・・すでに現役世代の負担は限界に達しており、国民皆保険の持続性を確保するために、高齢者医療費の負担構造改革の早期実現を強く求める。本会としては、引き続き国民の議論を喚起しつつ、関係団体とも連携しながら、関係審議会等で要求実現に向けて必要な主張をしていく。・・・・・・政府においても、早急に改革論議に取り組むことを強く望む。」(「6月18日付佐野副会長コメント」より)
次に、予算概算要求は「骨太の方針」に基づき作成されており、医療保険の関連では以下のような内容が盛り込まれている。
番号制度の活用推進として、保険のオンライン資格確認等の2020年度の本格運用に向けたシステム開発費用。医療保険者による第2期データヘルス計画に基づく予防健康づくりの取り組みの推進、加入者への意識づけや予防・健康づくりへのインセンティブの取り組み、生活習慣病の重症化予防等を推進、それとともに、保険者による先進的な実施を支援し、全国展開を図る。
さらに被用者保険への財政支援として、拠出金等の負担軽減への支援に加えて、新規に、財政基盤の強化が必要と考えられる健保組合に対し、新たな相談助言体制を構築するとともに、財政健全化に向けた取り組みを支援する。
こうした概算要求の内容は、ほとんどが前年度から継続したものとなっているが、新規に健保組合の財政基盤強化が盛り込まれており、健保組合の危機的な財政状況についての健保連の訴えが少しは厚労省に届いたのではないかと思える。
しかし、残念ながら高齢者医療制度の見直しは概算要求に盛り込まれていない。見直しが先送りされることは、健保組合が財政面で立ち行かなくなるだけでなく、現役世代が将来高齢者になったときに給付削減される可能性が出てくるなど、世代間不公平につながるのではないかとみられる。その点からも、政府が高齢者医療費の負担構造改革に早急に取り組むことを望む。 |
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(S・K) |
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